戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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   マティアス視点


 穢れを取り込むなど大丈夫なのだろうか。
「闇が身体を回復させてくれるというのは簡単に説明がつくぞ。
 皆、夜の帳に包まれて安心して眠るではないか。そういう事だ。
 私達をよく太陽と月のように例える者がいるが、あれは月などではない。
 知っているか?近ごろの学説では月は大地の裏側に沈んだ太陽の光が反射して光る惑星なのだと。
 ルシアは私に照され光るだけの月などではなく、私を包み込む闇だ。
 闇は心地よく私を癒すのだよ。」
 ルシア様を守るために光聖神教を弱体化させ国教から廃止したのか。
「わかったであろう?
 今は闇属性の存在は知られていないが万が一神殿に知られたならばルシアは排除される。
 ルシアがジュリアスを皇太子にしたくない理由もそれだ。
 ジュリアスも受け継いでいるのだ。
 いきなり闇属性の存在を公表して受け入れられるはずは無い事はわかっているが、ルシアとジュリアスが隠れて生きていくのがしのびなくてな…。」
 後宮を廃止したのもビアンカがルシア様を蔑ろにしたからという単純な理由だった。
 ビアンカ様にも情はあったからせめて後宮では好きにさせてやろうとしたが、ルシア様やジュリアスに毒を盛ろうとしたため二人を離宮に住まわせ守ったのだと。
「お前は私とは違う。
 私情をはさむこと無く皆の意見を取り入れ、慎重に事を進める。
 事なかれ主義だと揶揄されるだろうが、「事」は起こらないほうが良いのだ。
 何事もゆっくり良い方向に進むのが理想だとは思わんか?」
 気持ちが少し楽になった。
「おっしゃるとおりです。」
「あれは良かったな。
 新しく宗教を確立し識字率と道徳心を民に広げるとはな。
 政に宗教を利用する事はよくあるが、大概は利己的な理由だ。」
「…あれは、アンカレナ公爵の案でした。」
「アレクシオンか…南部で静養するとか。
 実に惜しいな。
 あれは武力だけでは無く知性も兼ね備えておった。お前の側近として欠かせない存在だったが…。」
 …。
 そうだ、欠かせないのだ。
 シオン…どうしているのだろうか。
 結婚式にも参列出来ないと返事が来た。
 少しほっとした自分が嫌だ。
 どうかしている。
 居なくなってからのほうがシオンを思い熱くなる。
 男同士の行為の描写を私とシオンに置き換えて淫らな妄想を繰り返す。
 こんなのは断じて愛では無い。
 穢らわしいただの欲情だ。
 
 
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