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40 お茶会 グロリア視点
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王様はもうパーティーでご挨拶なされるくらいお体が回復した。喜ばしい事です。
ゲームではレティシア・リノス男爵令嬢の治癒魔法の効果だったのですけれど、現実は私が用意させた漢方薬の効果が大きかったみたい。
そろそろお妃教育も始まり、週に3日午後からお城に上がることとなりました。
今までお体のご負担を考え控えていた王様との交流も深めたく、午後のお茶もご一緒しています。
今日の私の装いは濃紺で襟と袖口は白のとても清楚に見えるドレスにいたしましたわ。
アクセサリーも控えめで髪は後ろで一つに束ねたサラサラストレートです。
とても悪役令嬢には見えませんわよね。
王様の侍従や側近候補の方々も同席しておりますけど、これも未来の王妃として親睦を深めるのに必要なこと。それに、彼等はゲームの攻略対象だし。
ロレンス・カーライル・ネルソン公爵令息は王様の二つ上の12歳。赤茶の髪に金の瞳。代々騎士の家系の彼はきっと護衛候補。将来的には近衛でしょうか。
アレックス・トルソー侯爵令息は10歳。青みがかった黒髪に銀の瞳。彼の家系は魔法使いを多く輩出している。
テリオス・コルト伯爵令息は8歳。栗色の巻き毛に黒い瞳。
アーノルド・セサリス伯爵令息も8歳。金髪にアメジストの瞳。
ポール・エディアン伯爵令息も8歳。焦げ茶色の髪で濃い緑の瞳。
皆、王族派か中立の貴族から選ばれたようですわね。
私の父は貴族派ですが、対立するのは得策ではない。
王太后様はロズウェル家から嫁がれましたが、養女であったためか我が家とは確執があるようだ。
私とも叔母と姪とはいえ挨拶程度の交流しかない。
この王城では私は派閥などこだわっていないという態度をしめさなくては。
それはさておき、今日は3回目のお茶会ですが、なぜ会話が弾まないのでしょう?まさか私に遠慮して?
「あの、皆様いつもはどのようなお話をされてますの?」
年長者のロレンス様が、
「これといって決まってはおりません。テリオス達はグロリア様と同い年ですがまだ幼く、会話というより遊びに来ているのです。」
「そのわりには皆、とてもおとなしいのですね。」
「美しいレディがいらっしゃるので緊張しているのでしょう。」
受け答えがなんてスマートなのかしら。微笑みもとても上品だわ。それに比べ王様ったら。何かおっしゃって下さったらいいのに。
「まあ、嫌ですわ。わたくしも皆と同じ子供ですもの。楽しくお話していただけません?ねっ、王様も。」
「あ…うん。皆、いつものように気軽に話してくれ。」
そう言われて口を開いたテリオスが、
「ねー王様。レティはもう来ないの?グロリア様がいるから?」
あわててアーノルドが口を塞ぐ、
「バッ、バカ。」
「だって、アーノルドが言ったんじゃないか?グロリア様は身分の低い人とは仲良くしたくないんだって。だから僕達もあんまり馴れ馴れしくしちゃダメだって。」
このテリオスって子はまだまだ分別がつかない子供のようですわね。
「テリオス様。身分はとても大切ですわ。ですけど、わたくしはそれで差別などいたしておりませんわよ。」
王様?ご機嫌が悪いようですけれど、わたくしの事を誤解してらっしゃるのかしら?
「あっ、あの、王様?わたくしそんな…。」
「テリオス、レティシアは私達のように客としてここにいたわけじゃないんだよ。」
アレックス様が落ち着いた声で諭すように、
「レティシアは王様の治癒師としてお側にいたのだけれど、王様がお元気になられたからもう同席はしなくていいんだよ。」
「じゃあ、レティもうお城にいないの?」
この子、レティシアの事が好きなのね。
「いますよ。夜に熱が出るとすぐに来れるようにね。僕の治癒師ですから。」
「いいな。王様。いつもレティと手繋いでるし。夜も一緒なんて。」
なんですって?
「レティシアは…その、あんまり治癒魔法が上手に出来ないから手を繋いでいただけだよ。夜だって、別に一緒に寝ているわけじゃないからな。」
怪しいわ、どうしてそんなに焦ってらっしゃるの?これは、探らせねばなりませんわね。
「それより、なんでレティシアの事愛称で呼ぶの?」
まさかその事を怒ってらっしゃるの?
「この間遊びに来た時、レティって呼んでいい?って聞いたらいいって言ったもん。」
「なんでテリオスの家に?」
「知らない。父上とレティのお兄様がお話あったみたいだよ。」
「レティシアが遊びに行ったわけじゃないじゃないか。」
「でも、遊んだもん。二人だけで。ふふん。」
なんなの?この子供の喧嘩は。いや、子供ですけれども。王様としての威厳を保っていただきたいですわ。
「コホン、王様。ずいぶんとレティシアの事を気にかけていらっしゃるのですね。」
「あっ…。」
…。
また、沈黙が。
やっぱりわたくしは歓迎されていないのかしら?
どれだけ貞淑に振る舞っても悪役令嬢という役からは逃れられないのかしら。
「ねえ、グロリア様はどうしてメイドの服着てるの?」
は?
「バカ!テリオス!」
アーノルドが頭を叩いた。
「いたーい。うわーん。」
あわてて王様がフォローする、
「あ、えっと、とてもいいドレスだよ。グロリア。似合って…いると思う。」
…。
沈黙はやめて。
ゲームではレティシア・リノス男爵令嬢の治癒魔法の効果だったのですけれど、現実は私が用意させた漢方薬の効果が大きかったみたい。
そろそろお妃教育も始まり、週に3日午後からお城に上がることとなりました。
今までお体のご負担を考え控えていた王様との交流も深めたく、午後のお茶もご一緒しています。
今日の私の装いは濃紺で襟と袖口は白のとても清楚に見えるドレスにいたしましたわ。
アクセサリーも控えめで髪は後ろで一つに束ねたサラサラストレートです。
とても悪役令嬢には見えませんわよね。
王様の侍従や側近候補の方々も同席しておりますけど、これも未来の王妃として親睦を深めるのに必要なこと。それに、彼等はゲームの攻略対象だし。
ロレンス・カーライル・ネルソン公爵令息は王様の二つ上の12歳。赤茶の髪に金の瞳。代々騎士の家系の彼はきっと護衛候補。将来的には近衛でしょうか。
アレックス・トルソー侯爵令息は10歳。青みがかった黒髪に銀の瞳。彼の家系は魔法使いを多く輩出している。
テリオス・コルト伯爵令息は8歳。栗色の巻き毛に黒い瞳。
アーノルド・セサリス伯爵令息も8歳。金髪にアメジストの瞳。
ポール・エディアン伯爵令息も8歳。焦げ茶色の髪で濃い緑の瞳。
皆、王族派か中立の貴族から選ばれたようですわね。
私の父は貴族派ですが、対立するのは得策ではない。
王太后様はロズウェル家から嫁がれましたが、養女であったためか我が家とは確執があるようだ。
私とも叔母と姪とはいえ挨拶程度の交流しかない。
この王城では私は派閥などこだわっていないという態度をしめさなくては。
それはさておき、今日は3回目のお茶会ですが、なぜ会話が弾まないのでしょう?まさか私に遠慮して?
「あの、皆様いつもはどのようなお話をされてますの?」
年長者のロレンス様が、
「これといって決まってはおりません。テリオス達はグロリア様と同い年ですがまだ幼く、会話というより遊びに来ているのです。」
「そのわりには皆、とてもおとなしいのですね。」
「美しいレディがいらっしゃるので緊張しているのでしょう。」
受け答えがなんてスマートなのかしら。微笑みもとても上品だわ。それに比べ王様ったら。何かおっしゃって下さったらいいのに。
「まあ、嫌ですわ。わたくしも皆と同じ子供ですもの。楽しくお話していただけません?ねっ、王様も。」
「あ…うん。皆、いつものように気軽に話してくれ。」
そう言われて口を開いたテリオスが、
「ねー王様。レティはもう来ないの?グロリア様がいるから?」
あわててアーノルドが口を塞ぐ、
「バッ、バカ。」
「だって、アーノルドが言ったんじゃないか?グロリア様は身分の低い人とは仲良くしたくないんだって。だから僕達もあんまり馴れ馴れしくしちゃダメだって。」
このテリオスって子はまだまだ分別がつかない子供のようですわね。
「テリオス様。身分はとても大切ですわ。ですけど、わたくしはそれで差別などいたしておりませんわよ。」
王様?ご機嫌が悪いようですけれど、わたくしの事を誤解してらっしゃるのかしら?
「あっ、あの、王様?わたくしそんな…。」
「テリオス、レティシアは私達のように客としてここにいたわけじゃないんだよ。」
アレックス様が落ち着いた声で諭すように、
「レティシアは王様の治癒師としてお側にいたのだけれど、王様がお元気になられたからもう同席はしなくていいんだよ。」
「じゃあ、レティもうお城にいないの?」
この子、レティシアの事が好きなのね。
「いますよ。夜に熱が出るとすぐに来れるようにね。僕の治癒師ですから。」
「いいな。王様。いつもレティと手繋いでるし。夜も一緒なんて。」
なんですって?
「レティシアは…その、あんまり治癒魔法が上手に出来ないから手を繋いでいただけだよ。夜だって、別に一緒に寝ているわけじゃないからな。」
怪しいわ、どうしてそんなに焦ってらっしゃるの?これは、探らせねばなりませんわね。
「それより、なんでレティシアの事愛称で呼ぶの?」
まさかその事を怒ってらっしゃるの?
「この間遊びに来た時、レティって呼んでいい?って聞いたらいいって言ったもん。」
「なんでテリオスの家に?」
「知らない。父上とレティのお兄様がお話あったみたいだよ。」
「レティシアが遊びに行ったわけじゃないじゃないか。」
「でも、遊んだもん。二人だけで。ふふん。」
なんなの?この子供の喧嘩は。いや、子供ですけれども。王様としての威厳を保っていただきたいですわ。
「コホン、王様。ずいぶんとレティシアの事を気にかけていらっしゃるのですね。」
「あっ…。」
…。
また、沈黙が。
やっぱりわたくしは歓迎されていないのかしら?
どれだけ貞淑に振る舞っても悪役令嬢という役からは逃れられないのかしら。
「ねえ、グロリア様はどうしてメイドの服着てるの?」
は?
「バカ!テリオス!」
アーノルドが頭を叩いた。
「いたーい。うわーん。」
あわてて王様がフォローする、
「あ、えっと、とてもいいドレスだよ。グロリア。似合って…いると思う。」
…。
沈黙はやめて。
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