初恋と悪あがき

村上りく

文字の大きさ
8 / 81
第1章

悲しいことは忘れたい 3

しおりを挟む
sideアイ

「アイちゃん。サイズは大丈夫?」

「ありがとうございます!完璧です」

使用人として働く許可を貰った私は次の日から早速早起きをして仕事開始だ。
先輩使用人のお姉さんが、私のために使用人服を用意してくれた。
黒と白のエプロンドレス。
可愛い上に機能的な服だ。
下ろしていた髪はポニーテールにして邪魔にならないようにした。

「朝は庭の掃除から始まるのよ」

箒を差し出しながら言われた。





「アイ?これはどういう事だ?」

朝食を取るために1階に降りてきたノアは驚きの声を上げた。

「ノア、おはよう。実はお手伝いを本格的にさせてもらうことにしたんだ!」

「そこまではしなくても…」

「ううん!私がやりたくてしてる事だから」

実際、なんだか楽しい。
不思議と懐かしい感覚があるし、飲み込みが早いと褒められたし。

「アイちゃん、その格好って…」

同じく降りてきたルークくんにもまた同じことを言った。

「すごくにあってるよ!」

「ルークくんありがとう」


広い御屋敷は掃除が大変だ。
しみじみ思った。
私が出来るのは掃除くらいだから、時間をかけて丁寧にやる。
時々ノアにお茶を出しに行く。
ノアはずっと勉強している。

「受験勉強なんだ」

「なんの勉強してるの?」と聞いたらノアはそう言った。

「受験するの?」

「ああ、2年後だけどね。ルーシュベルト魔法学校に行きたいと思ってるんだ」

「魔法学校!すごいね」

「魔法学校の中でも1番と言っていいほど難関なんだけど、俺は将来絶対魔法省で働きたいって思ってるから通いたいんだ」

「へぇ…」

すごい、同じ歳なのにもう将来何をしたいか決めてるんだ。

「今年の学校見学会にも参加しようと思っててさ…………あ」

「ん?」

「良かったらアイも行かない?学校見学会」

「わ、私?」

「帰国したら直ぐの日程なんだよ」

帰国したら…って、そっか。
ノアたちはアン国に住んでるんだ。
私ってそんなにマクファーソン家に居させて貰えるのかな?
勢いに任せてだけど、私はマクファーソン家に雇ってもらいたいと言った。
つまり、一緒にアン国に行くのか?
いやいやいや、サン国にいる時限定使用人か?
というかいつ帰国するのか分からない。

「…アイ?もしかして嫌だった?」

「全然!嫌じゃないよ。私も魔法学校って興味あるから行きたいな」

取り敢えずそう言った。

「いつアン国に戻るの?」

「明後日だよ」

「え!近っ…」

「今日白龍町で開かれるパーティに呼ばれてるから、それが終わったら帰るんだよ」

さすがお金持ち。
短期間で何回もお呼ばれするんだね…。
そう言えば、ルークくんはパーティ嫌いなのかな。
この前、脱走したって言ってたけど。

「パーティと言えば、アイのドレスも1回着ないとだね」

「はい?」



今なんて?




٭❀*



「アイちゃんもパーティ出てもらうつもりよ?だってもうウチの子だもの~」

皆でスーツやドレスの見せ合いっこをしている最中、アリスさんは当たり前のように言った。

「アリスさん!私はただの使用人です」

「もしかしてアイちゃん、行きたくない…?」

アリスさんが子犬のような目を向けてくる。
ゔ…、そんな目で見ないでください。
そしてノアもルークくんも行くって言わざるを得なくなるような空気にしないでください。

「アイ」
「アイちゃん」

うっ…。
いやいや、行かないよ。
パーティなんて行ったことないし、私はただの居候だもん。

「絶対楽しいから行こう」
「いっしょにいきたいなぁ」




「………………行きます」

こうして私は白旗を挙げたのだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

いや、無理。 (本編完結)

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
細かいことは気にせずお読みください。 一旦完結にしましたが、他者視点を随時更新の間連載中に戻します。 もはや定番となった卒業パーティー、急に冷たくなって公の場にエスコートすらしなくなった婚約者に身に覚えのない言い掛かりをつけられ、婚約破棄を突きつけられるーーからの新しい婚約者の紹介へ移るという、公式行事の私物化も甚だしい一連の行動に、私は冷めた瞳をむけていたーー目の前の男は言い訳が終わると、 「わかってくれるだろう?ミーナ」 と手を差し伸べた。 だから私はこう答えた。 「いや、無理」 と。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中――完結!】 積み上がった伏線の回収目前!! 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...