初恋と悪あがき

村上りく

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第1章

小さな初恋

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sideアイ

「あ、列が空いてるね」

午前中より短くなった列の最後尾に並んだ。
どうしよう、緊張してきた。
ノアをちらりと見ると、やる気に満ち溢れた瞳で並んでいる。
もう、私がやる意味は無いのでは?
そう思ったけれど言い出せる雰囲気では無い。
それにここで失敗しても特に私には何の影響もない。
昨日の練習を思い出せば良いだけだ。

自分に暗示をかけていると、すぐに順番が回って来た。
あくまで「個別相談」なので、最初は学校のことについて聞いた。

「それでは、少し魔法を見せてもらってもよろしいですか?」

「はい」

「そうですね…この、ロウソクの火を消して頂いても良いですか?」


えっ?


何だか思っていたのと違う。
1番得意で高いランクの魔法を見せて、とか言われるのかと思っていたのに!
3メートル程先に置かれたロウソクに、火が灯された。

あれを消すだけ?

水魔法…はやめた方が良いか。
床が濡れたら掃除大変だもの。
あれ、場所を考えると大きな魔法は使えないか。
どうしよう?
何が正解なんだろう…。
困り果てた私は、取り敢えずやってみることにした。

掌に魔力を集め、ロウソクを手元に転移させる。
そこからは超簡単。
息を吹きかけるだけ。

ふう。

はい、消えた。
何だか地味な気がするけど大丈夫かな。
これってもしかして大技を決めないといけなかったのかな…!?
無表情なままの係員は何かを書き付けて「では、他に質問などありませんか?」と聞いてくる。

「ありません。ありがとうございました」

それだけ言って退出した。
………正解が分からない。



٭❀*



「「あ」」

隣から出て来たノアと声が揃った。
部屋を出るタイミングがノアと同じだったみたい。

「お疲れ、アイ」

「お疲れ様。どうだった?」

「今年は簡単すぎて驚いた」

やっぱり簡単だったのか…。

「推薦は期待出来ないな。来年はもっと派手な魔法を使えるお題だと良いけどなぁ」

「ノアなら一般でも頑張れるよ」

「ありがと」

ノアはいつもの微笑みを浮かべた。
それを見て、切なくなる。
ロミさんといる時とはやっぱり違う。
それは、ロミさんが特別だから?

さっき晴れたはずの心に、また霧がかかった気がした。

「ねぇ、ノアはどうしてこの学校に入りたいの?」

「そうだな…前にも言ったけど魔法省の魔法生物部で働くためにはこの学校が1番良いって思ったんだ」

ノアの赤茶色の瞳はいつもより赤が強く見える。

「あとは…知り合いの研究を見て俺もやってみたいなって思ったからかな」

「知り合い」ってロミさん?
聞こうと思ったけど、そうするまでもなかった。
言ってくれれば良いのに。



ロミさんのことが好きだって。



彼女に会った時からノアの様子はいつもと違った。
心の中ではそうなんじゃないかと思っていたのに認めたくなかった。
だって認めた瞬間、私の恋は終わるから。
だけど、言われなくたって見ていれば分かる。

「分かりやすすぎるよ…」

無意識に呟いていた。
良かった、こんなに早く知れて。
もっと好きになっていたら諦められなかったと思う。



私はこの日、あまりにも早い失恋をした。
恋の終わりというのはあっけないものなんだ。

1つ大人になった気がした。

٭❀*

「アイちゃん、この学校に入る気無いの!?」

ロミさんは何学部を選択するかとか、部活はどうするかとか聞いてきた。
でも、受験を考えてないことを伝えた。

「気持ちが無いと言うか、私の実力では難しいですから…」

「大丈夫!あと2年でどうにでもなるよ!」

帰る直前までロミさんは学校の良さについて語ってくれた。
気さくに話してくれたからすごく仲良くなれた。
良い意味で先輩ぽくないからかな。

「これ、あたしの番号だから。魔石で連絡してね!」

学校を出る時に教えてくれた。
仲良くなれたのは嬉しいけど、ノアの視線が痛い。



「俺は連絡先教えてもらうの半年かかったぞ…?」



ノアが拗ねていたけど、聞こえないふりをした。
2人はどうやらお付き合いはしてないみたい。
一応失恋した身なので、すぐに応援する気持ちにはなれないけど、整理が出来たら2人応援したいな。
だって、すごくお似合いだもん。


私は拗ねたノアの頭をわしわし掻き回すロミさんをみて、くすっと笑った。
きっと2人は上手くいくよ。
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