初恋と悪あがき

村上りく

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第1章

鈍感なあの人 1(sideノア)

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sideノア

「波紋 1」からのsideノアです!


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「ロミルダ様に会えるからと言って少々浮かれすぎだと思いますわ!アイ様に何も説明していないじゃないですか!」

使用人で同級生のベティ・ハドソンに言われて自分が浮ついてた事に初めて気付いた。
俺は確かに、舞い上がっていた。
だかしかし。
許してとは言わないが、少し、大目に見て欲しい。
人間誰しも好きな人に会える前日は、浮かれるものでは無いだろうか?


٭❀*


俺ことノア・マクファーソンはすっかり日が暮れ、誰も居なくなった中庭のベンチに座っていた。
数分間、通信用魔石とにらめっこをしていたのだ。
ロミさんに連絡するか否か。

迷っていると、魔石が点滅した。

「もしもし」

『もしもーし?ノア?』

!!!!!!!!
間違えるはずがない、ロミさんの声だった。
まさか、あっちからかかってくるなんて。
間違い電話か?

『ノア、聞こえてる?ロミルダだけどー』

女性にしては低めの、けれど心地の良い声が響いた。 

「聞こえてます!どうしたんですか?」

『明日、ルーベルに来るでしょ?』

ルーベルとは、明日俺たちが行く予定のルーシュベルト魔法学校の事だ。

「はい、もちろん行きます」

『じゃあ研究室おいでよ、明日は一日中籠るからさ。待ってるからねー』

言いたいことだけ言ってさっさと切るのがロミさんスタイルだ。
俺はそれを阻止するために会話をねじ込んだ。

「明日、アイも一緒に行きますから」

『本当に!?!?』

意外な程に食い付きが良くて驚いた。
なんか、少し悔しい。
俺には全く興味持ってくれないのに。

ロミさんにはアイのことは少し話してある。
記憶が無くなってしまったけれど魔法も上手くて賢いんだという話をした。
生物部の女子部員を増やしたいロミさんは、アイを勧誘する気満々だ。

『いやあ、楽しみだなー。生物部ゴリ押ししといてよ。あたしが卒業したら男子だらけのむさ苦しい空間になっちゃうからさ』

「分かりましたよ…って聞いてないな」

多分ヘビでもかまいながら通話してるな。
「うわっ」とか、「ちょっとどいて」とか聞こえてくる。

「ではロミさん、明日伺いますね」

『んー了解。リンリンがノアに会いたがってるからね~』

リンリンは研究室で飼っている魔猫のことだ。
あなたはどうなんですか。
そんなことは聞けるはずもなかった。

「俺も早く会いたいです」

『だってリンリン良かったね。じゃあねっ』

 ぶ つ っ。

容赦なく通話は切られた。

ロミルダ・アードルングさんは、4歳年上でルーシュベルト魔法学校の3年生。
魔法生物学専攻魔法生物部副部長の魔法生物オタクだ。
年中、ネリケ(カラスみたいな魔法動物)やリトルド(トカゲみたいな魔法生物)を可愛い可愛いと愛でている女性だ。 
先輩なので言い難いが、かなり変人。
知り合いには「残念美人」と言われている。


でも、知識や技術はトップクラスで俺がルーシュベルト魔法学校に入るきっかけを作ってくれた人だ。
そして、


俺の片思いの相手だ。



٭❀*



1年ぶりに訪れたルーシュベルト魔法学校は相変わらず広くて綺麗だった。
実習設備も充実していて、やはりとても良い。

腹が減ってきたので皆で食堂に行くことにした。

「すごぉーい!ぼくもこの学校にいきたいな」

弟のルークは、今日はやけに機嫌が良い。
アイと繋いでいる手をぶんぶん振り回している。
俺よりアイに懐いてる…別に良いんだけど、お兄ちゃんはちょっと寂しいぞ。

席を探すために当たりを見回した。

「あそこの席空いてるから……」

空席を指さしてそう言いかけたところ、入口の方に白衣を着た人が見えた。
おかしい。
学校説明会に白衣で参加する強者がいるというのか。
じっくり見てみると…………もしかして。

「ロミさん…?」

どうしてここに。
いつの間にか小走りで駆け寄っていた。
俺に気付いたロミさんは屈託のない笑顔を向けた。

「ノアーっ!!」

ロミさんは、笑うと少し幼く見える。
どうあがいても変わらない年の差が少しだけ縮んだように錯覚してしまう。
自分の笑顔ひとつで俺の気持ちがこんなに舞い上がっているなんて絶対に知らないロミさんは、手を振りながら近付いてくる。



ああ、この笑顔はずるいよなぁ…。
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