初恋と悪あがき

村上りく

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第2章

どうしてここに!? 2

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sideアイ

「今、なんて言った?」

サシャさんの声はさっきより低くなった気がする。
焦りと、怒りをはらんだ声。
何だか怖い。
いつもの穏やかな雰囲気はどこにもない、別人のようだ。

「え……と、なんか変ですよ?って言いました」

「その次」

「どうしたんですか、サシャさんって言った気がします。怒らせてたらごめんなさいもう言いません!」

100パーセント怒っている、コスプレとか言ったからかな。

「…………よ」

怒りに震えるサシャさんは何か呟いた。
聞こえないので近くに寄った、その瞬間。



「俺は『サシャさん』じゃねぇよ!!!!」



!?

突然の大声に耳がキーーンとした。
サシャさんじゃない!?
じゃあ、人違い……でも、私の事知ってるみたいだし。

「 ???? あの、どういうことですか?」

「それは俺のセリフだろ!制服着てんだから兄貴な訳ねぇだろ、って言うかお前兄貴と会ったことねぇだろうが!!!!」

サシャさんのそっくりさんは早口で言った。
兄貴?
兄貴ってことは。
この人は。


「もしかして、サシャさんの弟さんですか…?」

「弟さんですか……だと?」


私も男の子も顔を見合わせたまま硬直した。
何秒後かに、やっと口を開いた男の子は悲しげな目をした。

「本当に一華いちかなのか……?」

知らない名前。

まさかの事態。
とんでもない人違いだ。

「あの……、違います…」



٭❀*



ルーシュベルト魔法学校の本校舎3階。
第3資料室は今まさにカオス空間となっていた。
人違いが産んだ奇跡とでも言うのだろうか。

「私は10組のアイ・ラッセルと言います」

「俺は1組のリュカ・アザール」

取り敢えず自己紹介をし、お互いが思っていた人物と違うことを確認する。

「アザールって、サシャさんと同じ!」

「だから、俺の兄貴だって言ってんだろ」

サシャさんの弟さん……リュカくんはこの短時間でも分かる口の悪さと短気っぷり。
サシャさんとは全く違う性格だ。
サシャさんよりもつり目気味で、良く見たら違う人だと分かる。

「間違えてしまってすみません…」

「お前、兄貴の知り合いか?」

私の謝罪の言葉は完全にスルーされた。

「はい。私、守護者ガーディアンになるのが将来の夢で、サシャさんにはいつもお世話になってます」

そう言ってぺこりと頭を下げた。

「あー親衛隊とか言って騒いでる馬鹿どもの一員か」

リュカくんは吐き捨てるように言った。
…………何よこの人。
いくらなんでも失礼すぎる。

「違います。違いますけど、その言い方は親衛隊の方に失礼です。訂正してください」

「は?何言ってんだお前」

「こっちのセリフです。親衛隊の方に助けられることだってあるんです、サシャさんもいつも感謝してるって言ってました」

そう、親衛隊とはファンクラブのようなものでもあるが『オニ』についての情報をくれる人も大勢いる。

ダン!!

リュカくんは近くにあった机を蹴った。

「あの最低男の話すんじゃねぇ。気分が悪い」

「最低男……って、サシャさんはすごい人です!頭も良いし、人望も厚いし……」
「うるせぇ」

無理矢理遮られた。

「お前は顔に騙されてんだよ、本性知ったら多分泣くぜ?」

本当に、サシャさんの弟なのか?
高圧的で偉そうな態度。
人違いをしたのに謝らないし、嫌な人!

「それと兄貴に気に入られてぇなら、もっと出るとこ出てないと無理だな」

リュカくんはニヤリと笑って、資料室を出て行った。


はぁぁぁ!?!?

最低最低最低最低!!!!
怒りで顔が赤くなるのを感じた。
こんなに短時間で嫌いになれる人ってなかなかいない。
もう一生会いたくない!


最悪だ。
まだ、抱きしめられた感覚が残っている。
『今までどこにいたんだよ………?』
その声が優しかったのを思い出す。


懐かしい声。


サシャさんに似ているあの声を、私は昔聞いたことある気がした。

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