初恋と悪あがき

村上りく

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第2章

私のこと嫌いでしょう? 3

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sideアイ

お昼休みが終わり、午後の授業が終わり、ついに放課後がやって来た。
これからリュカくんの教室に行かなければいけないと思うと胃が痛い。
しかし、ノアが着いてきてくれるなら百人力だ。

12組の教室へ行くと、ノアは相変わらず友達に囲まれていた。
声をかけたら迷惑かもしれない。


「なぁノア、今日の昼女子と飯食ってたろ!?」


……しかも、最悪のタイミングだったみたいだ。
私は思わずドアを開けようとした手を止めた。

「俺も見た!確か…10組のラッセルさん?だっけ」

「え!うらやま!なんだよ、なんでだよ!?!?まだ入学したばっかだろぉぉおおおおお」

「諦めろ、海斗かいと。これがイケメンと凡人の差だよ」

「ずりぃよずりぃよ、俺だって彼女欲し……」
「彼女じゃないよ」

ノアは笑いながらやんわり被せて言った。

「アイは俺の遠い親戚なんだよ。入学前からの知り合いだから昼飯一緒に食べただけ」

「あんな子と親戚ぃ!?」

グサッ。
「あんな子」という言葉が痛い。
そりゃ、ノアの親戚にしては大したことない成績だけど。

「海斗、うるさいぞ」

ノアを含めて4人で話しているようで、知らない声が沢山聞える。
ツッコミ役の人のお陰で話題がそれ始めた。
声をかけるなら今かも。

「の、ノア」

なるべく小さな声で名前を呼んだ。
しかし、ノアだけに聞こえるわけは無い。
案の定ノア以外の3人とも目が合った。
その瞬間、ガタンと大きな音がして机に座っていた男の子がひっくり返った……けど、ノアはチラ見しただけで私に駆け寄って来た。

「お友達、だ、大丈夫?私が急に声掛けたから」

「海斗は石頭だから大丈夫」

ノアはそう言いながら私をドアから遠ざけた。
机から落ちた子が一瞬見えたけど、頬も赤くなっていた。
もしかしてぶつけたのかな。

「怪我とか……」
「大丈夫、大丈夫。もししてたら俺が治すし。多分怪我はしてないしな、舞い上がってるだけだ」

「舞い上がる?」

「こっちの話」

流された。
まあ、良いかな。
ノアが治癒魔法使ってくれるなら大丈夫だろう。

「じゃあ、リュカの所へ行くか」

「うん!」



ノアと2人でリュカくんのクラスがある1階へ向かう途中、10組の前に人だかりができていた。
………女の子ばかり。
黄色い声が聞える。
うちのクラスにそんなアイドル的存在の人いたかな。

「なぁ」

ノアが、集団をぽけっと見ていた私の肩を叩いた。

「あれ、リュカだ」

うわ…。

言われてみると、どうして気づかなかったのだろうと不思議になるくらいの目立ち方。
金色の髪をキラッキラさせて中心にいたのはリュカくんだ。
そして、確実にデレデレしている。
暫く遠くから眺めていると、リュカくんと目が合った……気がした。

「アイ!」

リュカくんは私とノアに気付いたらしく、大声でそう言った。
ちょっと待って、今呼ばれたら……。

悪い予感は大当たり。
女子たちは一斉にこちらを向いた。
ギロッッ。
音が聞こえた気がした。
リュカくんはさらに女の子をかき分けてこちらに近付いて来る。

「あ?なんでノアがいんだ?」

「ダメか?」

「別に良いけど。じゃ、行くか」

リュカくんはそれだけ言うと階段の方へ歩き出した。
なんの説明も無しに歩き始めちゃったよこの人!
私は慌ててリュカくんを追いかけた。

「ちょっと待って、行くってどこに?」

「親睦を深めに」

リュカくんはさらっと言った。
まるで当たり前のことを言うみたいに。


「ちょっと待ってリュカくん!」

後ろから可愛らしい声がした。
見ると集団の中から1人、代表っぽい子がリュカくんに話しかけたようだり

「その人は?もしかして彼女さん、とか…?」

友達ダチ

リュカくんの言葉に女子生徒一同は安心した雰囲気。

「カーラちゃん、だっけ?またな」

リュカくんはそう言って爽やかな笑顔を送る。


きゃあああああああああああ!!!!!!


それは、悲鳴だった。
きっとカーラちゃんという子はリュカくんに恋したんだろう。
頬がバラ色に染まっている。



………リュカくんてチャラ男なんだ。

私は寒気がした。




٭❀*



「リュカ、すごい人気だな」

「あ!?お前喧嘩売ってる?俺を差し置いて首席のくせによ」

「えぇ?関係無いだろ」

「関係あるっ。頭良い奴はモテる!」

「俺、モテないぞ……?」

ノアは昔から自分の人気に無自覚だよなぁ…。
私は2人の斜め後ろを歩きながら会話を聞いていた。
リュカくんは一体どこに向かっているのだろう。
昇降口を出て、正門とは逆の方に歩いているけれど、こちらの方面に何かあったかな。
暫く歩くと、校舎と同じ色の真っ白な建物が見えてきた。
周りには高い木々が茂っていて、白と緑のコントラストが美しい。

「ここって…」

お金持ちだけが使えるカフェテリアだ…!
私たちの通うルーシュベルト魔法学校には、先生も生徒も皆が利用出来る食堂と、学校への寄付金が一定以上の生徒だけが使用可能のカフェテリアがある。
もちろん私は権利を持っていない。
まさか、リュカくんはここの利用者なの…!?

リュカくんは当たり前のようにドアノブに手をかけ、

「 ? 何突っ立ってんだ?」

建物から溢れ出すオーラに圧倒されていた私にそう言った。
入るしかないのでカフェテリアに足を踏み入れると、キラキラした世界が広がっていた。
開放感のある吹き抜け天井に、ショーケースに並ぶスイーツ。
上級生か同級生か分からないが皆キラキラしている。
ああ、初めてパーティに参加した時と同じ感覚だ。
自分だけ場違いで体が強ばる感じ。

「ノア、私カフェテリアを使える権利を持っていないから外にいる……よ?」

こっそりノアに言ってみた。

「俺とリュカがいるから大丈夫だ」

ノアは頼もしすぎる笑顔を見せてくれた。
残念だけれど帰り道は閉ざされたようだ。

「そ、そっかぁ…」

私は顔で笑って心で泣いた。
根っからの庶民にこの空間は辛い。

「アイ、ノア、そこ座れよ」

リュカくんは当然私の気持ちなんて分かるわけもなく、窓際のとっても良い席を指さして言った。
諦めて着席すると、リュカくんは自信ありげな表情で言った。

「どうだ?」

「えーと、素敵な場所だと思う」

「だろ!これから好きな時に来て良いからな」

多分もう来ないと思うとは言えなかった。
リュカくんがあんまり笑顔だから。
今日のリュカくんは様子が変だ。
朝から変だけど……なんと言うか、初めて会った時や昨日とは別人みたい。
気持ち悪いくらい優しい。
私のこと嫌いなんじゃなかったのか。



「あれ、リュカ?」



リュカくんについて考えていると、真後ろから声がした。
しかも、知っている声。
振り向くと、ストロベリーブロンドヘアーの美少女。

紅花ホンファちゃん!?!?」

「は…!?アイ・ラッセル、なんで居るの?」

「私は……」

「あんた、サシャさんだけじゃなくて弟の方も狙ってんの!?!?」

ええええええええ!!!!!!!
とんでもない誤解が生まれてしまった。

「紅花ちゃん、違うよ!?落ち着いて…」

私は反射的に立ち上がり、紅花ちゃんと向かい合った。

「アイって紅花と知り合いなのか?」

リュカくんが目を見開いて言う。

「同じクラスの隣の席だよ!……リュカくんと紅花ちゃんは?」

私が聞くと、リュカくんは頬を掻いた。
「えーと」とか「うーん」とか言ってはっきりしない。



「婚約者だけど」

えっ。

 私の質問に答えたのは紅花ちゃんだった。

「リュカとあたしは、婚約してるの」






えっ。(2回目)


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