初恋と悪あがき

村上りく

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第2章

本当に欲しいもの 5(sideリュカ)

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sideリュカ

俺が殺気立っていたせいか、勉強会の空気は最悪だった。
しかし、サシャあいつの事を思い出してしまった今、俺の機嫌は直らない。
窓ガラスに反射する自分の顔にイライラするレベルだった。
俺とあの野郎はそっくりだから。
俺のがイケメンだけどな!!!
ムシャクシャして大量に数式を解いた。
ルークがあいつの話しなきゃ気分よく絵を描いてられたのに。
やっぱ絵を描くとロクな事が無い。
俺は頭をガシガシ掻きながら立ち上がった。
ちょっと頭冷やすか、便所にでも行こう。
何も言わず部屋を出たのに、ルークが着いてきた。

「リュカくん、機嫌直してよ。部屋の空気最悪だよ~。アイちゃんも困ってるよ?」

誰のせいでこんなにイライラしてると思ってんだよ…………。
文句を言おうとした時、向こうから歩いて来る女性にルークが話しかけられた。
エプロンドレスの女性、侍女だろう。

「ルーク様、30分後に家庭教師の方がいらっしゃいますので、お忘れなく」

ルークに目線を合わせて腰を折り、言った。
「分かってるってば」と少し拗ねた声色でルークは言う。
女性は俺とルークに一礼してから去って行った。

「………お前家庭教師なんて付けてんのか?」

幼い頃から家庭教師付きなんて不幸な生活、親近感が湧く。

「まぁね、一応この家の跡取りだから」

「へー」




……………え?
ルークがあまりにも普通に言うので俺もさらっと返事してしまった。
こうけいしゃ、コウケイシャ、後継者?
頭の中で変換しているとルークはのほほんとした口調で続けた。

「兄さまの将来のためだからしょうがないんだけど、面倒なこと引き受けちゃったよ~」

「…………ノアの将来のため?」

「うん、兄さまの将来の夢は魔法生物学者なんだよ!」

俺が聞きたいのは、そういう事じゃない。
ルークは、

「もしかしてお前も、上のヤツに継承権を押し付けられたクチか………………」

無意識に呟いていた。
俺とほとんど同じだから驚いてしまったんだ。
優秀な兄貴が上にいるのに、後継者にされる。
身勝手な兄には心底あきれるし、嫌いになった……………俺の場合。

「兄さまはね、将来についてちゃんと考えてて。頭が良いし魔法も得意だし、しかも言うまでもなく性格が良いし……………」

ルークは違うみたいだ。
嫌うどころかノアを敬愛している。
まるで、兄貴と仲が良かった頃の自分を見ているようだ。

「羨ましい」

自分で言ったのに、驚いたのは自分自身だった。
羨ましいって………何がだ?


好きなものを素直に好きって言える、ルークが羨ましい?


ルークを見ていると、自分が可哀想な奴になったような気がしてくる。
昔から手に入れたい物は何でもねだったし、やりたい事は何でも言った。
時にはワガママすぎる願いも遠慮なくした。
だけど、好きなものや、欲しいものは、言えない。

叶わなかった時が、辛いから。

『兄ちゃん、母ちゃんに顔見せに帰って来てくれよ。もう元気が無いんだよ』
『兄ちゃん、俺は本当は絵描きになりたいんだ。絵を描くのが大好きなんだ』






『兄ちゃん、家に帰って来てよ。…………母ちゃんの最期くらい、会いに来てくれよ』






本当は兄貴に言いたかったこと。
─────怖くて、何一つ言えなかった。




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次回からsideアイに戻ります。
楽しんで読んでいただければ幸いです( ¨̮ )




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