魔法具屋の孫娘が店長代理として働くことになったが、お客様から言い寄られて困っている話

くじら

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カイは冒険者をやめた。
片目を失い、日常生活を送るためにもしばらくはリハビリが必要だった。

私がお店のドアを開けると「いらっしゃいませ~」と呑気な声が聞こえてきた。眼帯をした店員、カイだ。エモい。

「お帰り、アルール」
「た、ただいま…」

お帰りただいまの挨拶をカイと交わすことに照れがある。
気を取り直して学校のバッグをカウンター奥に置いた。

「カイ、休憩していいよ。私代わるから」
「うーん、疲れてないんだけど、じゃあ休もっかな」
なんて言いながら軽く私の唇にキスをした。

「な、何するのよ昼間っから!」
慌てて一歩下がる。顔が熱を帯びてゆく。

「夜ならいい?」
「いいわけないでしょ!」
また近づいてきたカイの顔を押し返した。

「あ、そうだ。これできたよ」
カイはニコニコしながらカウンターの下から箱を取り出した。

私は箱を開けて、中身を確認する。

細めの指輪だ。青い石がキレイにカットされてあしらわれている。

「ほら、アルール、手を出して」
カイが優しく私の左手を取った。

私の左の薬指に、そっと指輪を差し入れる。ぴったりのサイズに作られたそれは、カイが全部デザインしたものだ。

「よし、これで虫除けになるね」
「虫除け…?」
意味がわからず首を傾げる私。

カイが指輪にもキスを落とし、
「これ、オレに居場所がわかるようになってる魔法具だから」
なんて怖いことを言った。

「へ?!!!!!」

一つの瞳がニヤリと弧を描く。
「言っとくけど、作ったの店長だからね。孫娘が王子様や他の男に見染められたら大変だし、って。」
「そんなことあるわけないでしょ!」
「この前クラスの男に誘われてたじゃん」
そういわれると何も言い返せない。

大変な人を好きになったのかもしれない。
そう思いながら左手の指輪を灯りにかざす。

キラキラと輝く青い石を見ると、幸せな気持ちだ。

ふふっと笑って、また2人カウンターの中で、何度目か分からないキスを交わした。
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