姫の血縁

姫宮瑠璃

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宿直室①

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6限が終わりHRが済むとすぐ、私は担任にまた呼び出された。

「すみません。井上さん帰ってしまったようで・・・、お力になれず申し訳ないです。」

きっと井上浩美の話だろうと、先に謝っておいたのだが・・・。

「いや、違う違う。いや、井上さんの事ではあるんだけどね。」
「何でしょうか?」
「井上さんが、6限半ばくらいに職員室に来てね、初めて入る場所だと慣れなくて緊張するから、先に入って慣れときたいから、宿直室の鍵を貸してくれって言われてね。」
「はぁ・・・?」
「ほら、購買部の手伝いをする事に意欲を持ってくれてるみたいでね。」
「・・・はい。」
「鍵を渡しといたから、たぶん宿直室に居ると思うんだよ。」
「え・・・、たぶん?」
「うん。ちゃんと、鍵失くさないように言っといたから。あと、よろしくねー。」

ーーーって、おい!
ーーーふざけるな、担任!
ーーー居なかったら、今日の仕事出来ないじゃない!

私は急いで宿直室に向かった。
荷物をぐちゃぐちゃに引っ掻き回されてる可能性だってある。
宿直室は職員室の近くなのですぐに着いた。
宿直室の前には2人の男子生徒がいた。
購買委員ではなく、うちのクラスの副委員長と生徒会長だ。

「おい!姫小路裕美、遅いじゃないか!」

生徒会長の藤川真也が怒鳴った。
何も約束などしてないと思うのだが。

「何か私に用だった?」

私がそう言って、口に人差し指をやり首を傾げると、藤川真也は顔を真っ赤にして、また怒鳴り、ズボンのポケットから出した紙を握り潰して投げつけてきた。

「とぼけるな!井上に頼んだだろう⁈」

紙を拾って広げてみると、
   『放課後、宿直室に来て下さい。
       姫小路さんが困ってます。
       助けてあげて下さい。』
と書いてある。

「私は頼んでないけれど、手伝ってくれたら助かるのは確かだわ。・・・康人も、もしかして同じ?」

副委員長の安堂康人にも聞いてみると、同じ手紙を井上浩美に渡されたのだと言う。

「きっと裕美が鍵を取りに行ってるところだからと、藤川をなだめてた所だ。」

私は、ため息が出そうになった。
6限には居なかったのに、まだ来ていないのか・・・。
いや、もしかしたら中に居て、鍵を掛けているのかもしれない。

「鍵は、井上さんが先に持って行ってるそうなの。」

私は、宿直室のドアをノックした。

「井上さん、居る?中に居るなら、鍵を開けて欲しいんだけど。」

3秒ほど待ったところで、ドアから『カチャ』と鍵を開ける音がした。
取手に手をかけて横にずらせば、スルスルと開く。
中を覗き見るように入ると、ドアのすぐ近くにうつむいて髪で表情の見えない井上浩美が居た。

「井上さん、居るなら鍵を開けといてくれないと・・・。あなたが頼んだ2人がドアの前で待っていたのよ?」
「・・・。」

私の後ろから2人も入って来た。

「おい。井上浩美!一体お前はどういうつもりでこんな事をした!姫小路裕美は、俺達が来る事を知らなかったんだぞ!
こっちだって、生徒会の仕事があるんだ!学園祭の準備が滞るんじゃないかと心配して来てみれば、なんだコノ茶番は!大体お前は・・・!」
「まぁまぁ、まぁまぁ。井上さんは悪気があった訳じゃ無いと思うよ。誰かを助けたいって気持ちは、良い行いなんだし。
手紙を押し付けて、『お願いします』って言われた時は、ちょっと困ったけれどね。」

何だ、それは。
ラブレターでも渡されたと思うシチュエーションだ。
私に会った時、目を逸らした気持ちは分かる。
それで、中身を見てみたら、あの内容だ。
訳が分からなくて、困った事だろう。

藤川真也に怒鳴られ、私と安堂康人に軽いとはいえ責められ、少しビクビクした様子で井上浩美はドアへと後退していく。
そして、小動物が逃げていくかの様にドアを閉めて逃げて行ってしまった。

「あ、ちょっと・・・。」
「おい・・・!」
「鍵っ!」

ーーー出てくなら鍵置いてって欲しかった~!

「・・・もうっ!真也は怒鳴り過ぎよ!
今度は鍵を返してもらうまで、帰れなくなっちゃったじゃない!」
「ふんっ!どうせスペアキーくらいある。
大体あんな奴に、鍵を任せるのが悪いんだ。」
「渡したのは、私じゃないわよー!」
「まぁまぁ、そのうち戻ってくるかもだし・・・。」

私と藤川真也が言い争いを始めた時、ドアから『カチャ』と音が聞こえた。

「「「え。」」」

ドアに一番近かった安堂康人が、取手に手をかけて横に引いたが開かない。
安堂康人が、油の切れかけたロボットの様に振り返って、ポツリと言った。

「閉じ込められた?・・・」
「「・・・。」」
「・・・。」
「「えぇぇぇぇぇぇー!」」
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