姫の血縁

姫宮瑠璃

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宿直室②

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ドアを開けようとするも、確かに鍵がかかっている。

「ちょっと、おい!井上!鍵開けろっ!」
「井上さん⁈早く鍵開けて頂戴。ね?」

ドアを叩いて廊下に居るだろう井上浩美に呼び掛けるも、反応がない。
もう離れて違う場所に行ってしまったのかと思っていると、廊下から男子生徒の声がした。

『ひっ!何、幽霊⁈』

たぶん、購買委員の佐藤君だ。
これで助かると、廊下に向かって声を張り上げた。

「佐藤君!廊下の彼女から、鍵もらって!
私達、閉じ込められちゃったの!」
「そうだ!その通りだ!
そこの男子!ソイツから鍵を奪えっ!」

『えぇぇぇぇー。・・・あのぉ、鍵渡してもらえませんかぁ?』
『・・・。』
『ひっ!先輩、無理ですぅ!』

「お前、男だろ⁈しっかりしろっ!やれっ!」

『だって、目が!目がギンって!・・・ですよね⁈・・・ムリムリムリ、恐いですぅ!』

藤川真也が、「バカ」だの「ちゃんとしろ」だのと怒鳴り続けるが、は無理だ。
学園祭の為、最近は購買部の仕事が遅くなり、夕方で暗くなってきた廊下をビクつき、たまに背後を気にしながら帰る姿を思い出した。
たぶん、彼は幽霊系が苦手なのだ。
しかし、井上浩美は確かにちょっと不気味な雰囲気があるが、大変失礼である。

「佐藤君!職員室に行って、先生呼んで来て!それなら、出来るでしょう?」

『は、はい!じゃあ、行って来ます!・・・ぎゃあぁぁぁ⁈』

ーーーぎゃあ?

『せ、先輩!無理ですぅ!妖怪が抱きついて来て、「行かせない」って言ってます!』

宿直室の3人は、同時にため息を吐いた。
井上浩美は、幽霊から妖怪にランクアップした。
どちらにせよ、失礼だ。
全く、井上浩美には困ったものだ。

「あ。窓から出れば良いじゃない?ここ一階だし。」

ドアの方を向いていた私は、2人に向き直ると、何で気づかなかったのかと脱出を提案するが、安堂康人が首を横に振った。

「さっき俺もそう思って、窓を開けようとしたんだけどね。鍵やサッシが接着剤で固定されてる・・・。」
「「はぁ⁈」」
「だから、窓を割ろうかどうしようって迷ってたところ。」

廊下からは佐藤君の泣き声の様な助けを呼ぶ声が聞こえてくる。

「・・・いや、割るのは最終手段にしようか。他の委員の子達がもうすぐ来るだろうし、佐藤君の騒ぐ声で先生が来てくれるかもだし。」

学校の備品を故意に破壊して、始末書を書きたくない。
「先生が来るまで、待てば良かっただろう?」なんて、お叱りを受けるかもしれない。
まだ閉じ込められて、30分も経っていないのだから。
何より、私がどんな理由であれ、『窓ガラスを故意に割った』なんてお祖母様や皆に知られたら、どう解釈されて必要ない悪い印象を持たれるか分からない。
ずっと被ってきた良い子の仮面は、まだ外す気にはなっていないのだ。

『もっ、やっ、離しっ、うわー!』

ようやく、佐藤君は井上浩美の手を振り切れたのだろう。
脱兎の如く走り去っていく足音が、叫び声と共に小さくなっていった。
これで、佐藤君が落ち着けば、先生を呼んでくれるだろう。
外からは運動部のランニングの声が聞こえてきた。
もうすぐ佐藤君以外の購買委員の子達が来るはずだ。

『・・・させない!邪魔なんて許さない!
姫小路裕美、アンタに今までの恨みを晴らしてやるんだから!』

廊下から、井上浩美の声が聞こえてきた。
今まで聞いた事の無い大声で。

『今よ!早くやって、植物図鑑!』

ーーー植物図鑑?

『アンタには消えてもらうわ!姫になるのは私よ!』
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