姫の血縁

姫宮瑠璃

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眠り姫①

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太陽が一番高い位置に上る頃、ジルベルト王子とその従者のアランは、宰相の執務室に押しかけていた。
それというのも、陛下から
「今朝ニコラスが、召喚された少女に会ったが、身体の具合は大丈夫そうだ」
と聞いたからである。

「ニコラス!俺も『聖女の姪』に会わせろ!」

仔犬が遊んで欲しいとおもちゃを持って来たような、王子のキラキラさせた目を見て、ニコラスは溜め息をつきながら、息子のアランの方を向いた。

「はぁー・・・、なんで殿下を止めなかったんです?」
「すみません、父上。
しかし、「お前も気になるだろう?」と言われたら、自分も強く言えず・・・。
なにしろ彼女はになる訳ですから!」

アランは父に軽く頭を下げると、そう意気込んだ。

「まだ公にも、本人にも伝えてないんですから、大きな声で言ってはいけません。」

ニコラスはもう1度溜め息をつき、アランはまた「すみません」と頭を下げた。

「だって気になるだろう?私の妃候補だ!」

王子がまたも意気込んで、執務机を叩いた。

「ですから、大きな声で叫ばないで下さい。防音の魔法がかかっているとはいえ、誰かが急に入って来るかもしれないんですから。」

ニコラスは呆れた顔を王子に向けて、またも溜め息をついた。

「それに、彼女は『ジルベルト王子殿下の妃候補になる可能性が女性_』です。妃候補ではありません。」
「『』というだけだろう?
もう既に貴族登録は済ませているんだ。
宣言してないだけで、もうお前の娘だ。
という事は、妃最有力候補になるではないか!」

王子は拳を握って、力説した。

「彼女の声はどんなだった?瞳は黒か、茶色か?あの艶やかな黒髪を見ただろう?
あれは正に、父上が聖女様から聞いたと話してくださった『白雪姫』に出てくる姫、いや『眠りの森の美女』に、かくやあらん。
早く会わせろ!」

興奮する王子の横で、アランも目を爛々と輝かせている。
このままでは、延々と仕事の邪魔になりかねない。
それに、朝食の後眠っていると報告を受けたが、昼食を済ませたとは聞いていない。
ニコラスのお腹が「ぐぅー」と鳴った。

「まぁ、いいでしょう。
一緒に昼食を取るのも、良いかもしれませんね。」

そう言って、ニコラスは立ち上がった。
嬉しそうに目を輝かせる王子と息子を連れて、執務室を後にする。

「さて、淑女の部屋に、あまり知らない男性だけでぞろぞろ行くのは無粋ですから、召喚した彼らも誘いましょう。
彼らはまるで、彼女の騎士の様でしたしね。」

先に藤川真也と安堂康人の元に向かう。
王子の従者にするにあたって、彼らも他の貴族の養子として登録してあった。
説明をするなら、1度で済む方が効率的だ。

「彼らは、彼女とどういった関係なんだ?」

王子は、ニコラスの「騎士」発言に少し不満気だった。

「私が異世界の女性に紹介された内容では、彼女の良きライバルと彼女の部下的な存在だと聞きました。」
「男がライバルと部下か・・・。彼女は優れた女性なのだろう。」

実際に会う前から、王子の姫小路裕美への株は鰻登りだ。
ニコラスは、またも呆れたように溜め息をつくと、藤川真也のいる部屋のドアをノックした。
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