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ヘンリエッタ
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ヘンリエッタは、エンダール城の裏門に続く廊下を、4人の騎士に囲まれて、歩いていた。
嫁いで来た日、公式行事、王妃や王太后とのお茶会・・・何度か訪れたこの城で、1度も訪れた事無い場所を、今歩いている。
ーーーあの日、あの少女はこの場所を通って私の元へと連れられてきたのか・・・。
たった1度、ほとんどチラリとしか見なかった少女の顔。
覚えているのは、黒い髪の毛くらい。
夫の不貞を、隠し子を疑い、亡き先代大皇妃への嫉妬から行なった犯行。
今では、夫の事、少女の事は自分の勘違いだったと分かっている。
周りから見れば、「なんて愚かな事をしたのだろう」と思われていることだろう。
ヘンリエッタは、上手くいくと確信していたわけでも、罰せられないと思っていた訳でもなかった。
それでも行動しなければ、自分が死んでいくような気がしたのだ。
ーーーあの少女には、悪い事をした。
ーーーそれに、感謝している。
あの日、ヒロミが発動した王都中にまで及ぶ巨大な治癒魔法は、ヘンリエッタの心をも癒していた。
今ヘンリエッタの心は、後悔の念はあるけれども、凪いだ水面のように静かだった。
これから、ヘンリエッタは馬車に乗り、実家のテルニア国へ戻る。
壮麗な荷車を何十台と列ねた婚礼の時とは、なんと違うことか。
飾り気の無い馬車に簡素な荷車が1台、お供は一緒に捕まった、嫁いだ時に付いてきてくれた兵士と、乳母だけ。
「お前には悪い事をしました。犯罪に加担させてしまった。
すまないと思っています。」
馬車の外で待つお供の兵士に、ヘンリエッタは頭を下げた。
故郷から、ヘンリエッタの為に無理矢理他国へ連れて来られ、今度は犯罪者として故郷の土を踏む。
ヘンリエッタは、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「ヘンリエッタ様、お顔をお上げ下さい。」
兵士はヘンリエッタの前に跪くと、ヘンリエッタの手を取った。
「国を出た時から、私はあなたの騎士です。あなたの為ならば、どこまでもお供します。」
ヘンリエッタの目は涙で霞んでいた。
ーーー知らなかった、これ程まで忠誠を持ってくれていたとは。
初めて、自分自身を見てくれる人に出会えた気がした。
ーーー私は1人ではなかった。
ーーーもっと周りを見れば良かったのだ。
馬車に乗り込もうとステップに足をかけると、後ろから声をかけられた。
間違えようもない、夫の声。
「ヘンリエッタ、あなたとは良き夫婦になりたいと思っていた。
私の力不足だ。すまない。」
ヘンリエッタが振り返ると、頭を深々と下げた夫がいた。
「私が悪いのです。あなたは何も悪くありません。」
ヘンリエッタは夫に微笑んだ。
夫もぎこちなくだが微笑んでくれた。
明日には夫婦ではなくなる。
ヘンリエッタは、夫の笑顔を心に焼き付けた。
「私が幸せにしてあげられなくて、すまない。
どうか、国では幸せに。」
「あなたも。」
ヘンリエッタが馬車に乗り込むと、すぐに発車した。
窓から見える夫の姿は、すぐに消えた。
17年を過ごしたこの国に、もう来る事は無い。
「ニコラス、愛していました・・・!」
ヘンリエッタの瞳から、涙が溢れた。
嫁いで来た日、公式行事、王妃や王太后とのお茶会・・・何度か訪れたこの城で、1度も訪れた事無い場所を、今歩いている。
ーーーあの日、あの少女はこの場所を通って私の元へと連れられてきたのか・・・。
たった1度、ほとんどチラリとしか見なかった少女の顔。
覚えているのは、黒い髪の毛くらい。
夫の不貞を、隠し子を疑い、亡き先代大皇妃への嫉妬から行なった犯行。
今では、夫の事、少女の事は自分の勘違いだったと分かっている。
周りから見れば、「なんて愚かな事をしたのだろう」と思われていることだろう。
ヘンリエッタは、上手くいくと確信していたわけでも、罰せられないと思っていた訳でもなかった。
それでも行動しなければ、自分が死んでいくような気がしたのだ。
ーーーあの少女には、悪い事をした。
ーーーそれに、感謝している。
あの日、ヒロミが発動した王都中にまで及ぶ巨大な治癒魔法は、ヘンリエッタの心をも癒していた。
今ヘンリエッタの心は、後悔の念はあるけれども、凪いだ水面のように静かだった。
これから、ヘンリエッタは馬車に乗り、実家のテルニア国へ戻る。
壮麗な荷車を何十台と列ねた婚礼の時とは、なんと違うことか。
飾り気の無い馬車に簡素な荷車が1台、お供は一緒に捕まった、嫁いだ時に付いてきてくれた兵士と、乳母だけ。
「お前には悪い事をしました。犯罪に加担させてしまった。
すまないと思っています。」
馬車の外で待つお供の兵士に、ヘンリエッタは頭を下げた。
故郷から、ヘンリエッタの為に無理矢理他国へ連れて来られ、今度は犯罪者として故郷の土を踏む。
ヘンリエッタは、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「ヘンリエッタ様、お顔をお上げ下さい。」
兵士はヘンリエッタの前に跪くと、ヘンリエッタの手を取った。
「国を出た時から、私はあなたの騎士です。あなたの為ならば、どこまでもお供します。」
ヘンリエッタの目は涙で霞んでいた。
ーーー知らなかった、これ程まで忠誠を持ってくれていたとは。
初めて、自分自身を見てくれる人に出会えた気がした。
ーーー私は1人ではなかった。
ーーーもっと周りを見れば良かったのだ。
馬車に乗り込もうとステップに足をかけると、後ろから声をかけられた。
間違えようもない、夫の声。
「ヘンリエッタ、あなたとは良き夫婦になりたいと思っていた。
私の力不足だ。すまない。」
ヘンリエッタが振り返ると、頭を深々と下げた夫がいた。
「私が悪いのです。あなたは何も悪くありません。」
ヘンリエッタは夫に微笑んだ。
夫もぎこちなくだが微笑んでくれた。
明日には夫婦ではなくなる。
ヘンリエッタは、夫の笑顔を心に焼き付けた。
「私が幸せにしてあげられなくて、すまない。
どうか、国では幸せに。」
「あなたも。」
ヘンリエッタが馬車に乗り込むと、すぐに発車した。
窓から見える夫の姿は、すぐに消えた。
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「ニコラス、愛していました・・・!」
ヘンリエッタの瞳から、涙が溢れた。
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