姫の血縁

姫宮瑠璃

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アラン

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今日は学園の入寮の日だ。
今まで、ジルベルト殿下と一緒に学んできたが、同世代の貴族との交流を図る為、5年生から入学する事になっている。
嬉しい事に、私の可愛い妹も入学する事になった。
学園に入るにあたって、妹に中々会えなくなるのを残念に思っていたが、これでほぼ毎日、妹の顔を見る事が出来る。
前日に予想外の出来事があったが、それも妹の素晴らしさを知る、とても貴重な経験だった。
あのボールペンという物は、なんてすごい発明品であろうか。
手が汚れず、インク瓶を持ち歩く必要も無い。
インクが垂れたり滲んだりする事も無く、掠れる事も無いのだ。
そして、消す事まで出来たりする。
つい、楽しくなって書いたり消したりしていたら、気がついたら朝になってしまっていた。
眠ったら、昼過ぎまで寝てしまうと思い、着替えて庭を散策しようと部屋を出ると、父上の部屋から声が聞こえてきた。
部屋を訪ねると、ご機嫌で書類にペンを走らせる父上がいた。

「どうした?アラン。お前も眠れなかったのか?」
「少しは寝ましたが・・・父上は、ずっと起きてらっしゃったのですか?」
「少し書き物をして寝るつもりだったのだが、思ったよりも仕事が捗って。」
「ボールペンのおかげですか。」

少し休憩にしようと言う父上と朝食に向かうと、まだ準備が済んでないと言うので、父上とお茶を飲みながら待つ事にする。
すると、妹の部屋付きメイドがやって来た。
妹を慕って、使用人の募集に応募して、城のメイドから鞍替えしてきたメイドだ。

「失礼いたします。
アラン様、お嬢様が学園に持って行く荷物を、運んで差し上げたいとおっしゃっていらっしゃいますが、いかがでしょうか?」
「妹が?」
「ご自分の荷物を運ぶとおっしゃっておいでで、遠慮為さらずにとの事でした。」

どういう事だろう?
妹は風魔法はまだ使えない筈だし、とても重い荷物を持てるようには見えない。
私が断って、妹の荷物も使用人に運ばせるように言おうとすると、父上が私を止めた。

「まあ良いじゃないか、頼めば。」
「父上、しかし・・・。」
「きっと、空属性を使うつもりなんだよ。」

なるほど、それなら妹は負担なく運べる。
父上は、テーブルに肘を付けて手を組み、その手に顎をのせた。

「寮に荷物を運び込むのは、毎年混むからね~。
頼んだ方が良いと思うよ。」

父上がそう言うなら、じゃあ、妹に頼む事にしよう。
妹のメイドに、そう伝言を頼んでからしばらく経つと、妹が朝食に現れた。

「おはようございます。遅れてすみません。」
「いや、私達が早かっただけだ。」

すぐに食事が運ばれてきて、私と父上がボールペンの素晴らしさと、妹がこちらに来てくれた嬉しさを話した。
父上は、さっそくボールペンをこちらでも開発して、売り出そうと考えているようだ。
私も賛成だ。あれは、よく売れることだろう!
父上が、「学園まで、一緒に行こう」というので、3人一緒に馬車で学園まで向かう事になった。
馬車の中では、ボールペンをどの工房に作らせるかや、どのように売り出すかなどの話と、妹の空魔法についてを話した。
妹は、昨夜のうちに色々試してみたようだ。
分かった規則や制限などを、教えてくれた。

「お父様、お兄様、私はこの魔法の所為で、物を盗んだと勘違いされてしまうかも知れません。
ですから、他人の持ち物は取る事が出来ないと証明する為に、幾人かの方に証人になって頂きたいと思っています。」

妹は、泥棒と間違われる事を、不安に思っているようだ。
妹の不安は、早く取り除いてやりたい。

「私が証人になるよ。
試しに、このブローチを取ってみたら?」
「私のカフスボタンでも、試してみなさい。」

私と父上が証人になれば、安心だろうと思ったのだが、私達の物が取れないと証明できた後でも、妹はまだ心配だと言う。

「家族だと証人として認められないかもしれないので、他にも証人になってもらえそうな方を紹介して頂けませんか?」

一緒に召喚された2人と、ジルベルト殿下には頼もうと思っているという。
正直、ジルベルト殿下には、あまり近づいて欲しくはない。
一目惚れをしたとか、庇護欲をそそられたとかで、殿下は何かと妹にかかわろうとしていた。
父上と同じで、聖女様に対する憧れもあってか、他にも候補者がいるのに、妹を婚約者にしようと躍起になっている。
今のところ、こちらの世界に慣れようと頑張っている妹を、王太后様と王妃様、父上で阻止しているが、陛下が殿下と同意見だから油断は出来ない。
イジメや足の引っ張り合いに対抗出来る知識や力を付けてからでないと、妹が不幸になるだけだ。

「魔法の研究にもなりそうだから、魔術士長を今度紹介してあげるよ。」
「本当ですか⁈ありがとうございます、お父様。」
「私も、考えておくよ。」
「よろしくお願いします、お兄様。」

妹は、花が綻んだ様に微笑んだ。
私も、父上と一緒に、この笑顔を守らなければ!
父上と別れて、妹と学園の寮に行くと、予想通りのトラブルで、妹は男子寮の私の部屋には入れなかった。
しかし、父上の言っていた通りで、外は荷馬車や荷車、荷物を運ぶ従者などでごった返していたから、寮のロビーに運んでもらっただけでも助かった。
昼過ぎにあらかた片付けが終り、ゆったりしていると、部屋に管理人が来たという。
侍従のロイドが対応した。
何かあったのかと思っていると、どうやら妹のメイドが何かを届けに来たらしい。
受け取って見ると、可愛らしい青色の小さいクマの人形だった。
疑問に思いながら、一緒に届けられたカードを見る。

『小さなタオルでできた、クマです。
一緒に入っている丸い物は、入浴剤です。
お風呂に入れて、入浴して下さいね。
お兄様がぐっすり眠れますように。』

なんて、優しい子なのだろうか!
このクマは、タオルで出来ているのか?
何とも変わった事をするものだ。
せっかくの、妹からの贈り物だ。
ベッド傍に飾っておこう。
ところで、この固形物がその入浴剤なのだろうか?
飴のような物が2つ、透明な袋に、クマと一緒に入っていた。
さっそく試してみようと、風呂を用意させる。
入れてみると、シュワシュワと泡が出ながら溶けていく。
つい、小さくなっていくのを眺めてしまった。
溶けていく様が、何とも目が離せない。
香りもキツくないし、まるで森にいる様な爽やかさだ。
お湯の色も、心なしか緑っぽいような?
入って大丈夫だろうか?
いや、大丈夫だ、妹がせっかく贈ってくれたのだ。
試してみよう。


・・・いつもより身体が温かく、ぐっすり眠れた気がする。
これは、あの入浴剤のおかげなのだろうか。


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