姫の血縁

姫宮瑠璃

文字の大きさ
65 / 150

入学①

しおりを挟む

学園の入学式。
まだ寒い季節に入学するのは、向こうの世界での常識がある私にとって、違和感がある。
おまけに、1年次から入学するとは限らず、年齢によって学年が決まっており、入学式にはその年に新しく入る生徒が全員参加するのだ。
前もって聞いていたが、実際に目の当たりにすると、ちょっと驚く。
12歳~18歳までが、全部ごちゃ混ぜに座っているのだ。
中・高・大学の入学式を一緒にしているような感じだろうか?
どうやら席は、階級順で兄弟姉妹きょうだいでまとまっている様で、私は前方真ん中辺りの席に案内された。
まあまあ近くに真也が座っていて、私が小さく手を振ると、向こうも小さく手を上げた。
座る直前にざっと後ろを見回したが、席の数からいって、入学するのは4、50人くらいだろうか。
左隣の席を1つ空けて座る。
キョロキョロするのはみっともないので、姿勢を正して前方を見る。
一段高くなっている壇上に、演説台があり、奥の両側に椅子がいくつか並べられていた。
学園長や来賓の方の席なのだろう。

「おはようございます。
ロレッティーナ=ライ=モルドヴァです。」

右隣の席に案内されてきた女の子が、私に挨拶してきた。
金髪にブラウンの瞳の、ちょっと勝気な感じの女の子だ。

「おはようございます。
はじめまして、ヒロミ=ヒメノコージ=ライ=ベルローズです。
よろしくお願いします。」

私も立ち上がって挨拶をし、軽く膝を折った。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

ロレッティーナ様も、膝を軽く曲げて会釈した。

「兄が以前、ベルローズ公爵令嬢様にお会いしたと言っておりましたわ。」

どなただろうか?
モルドヴァ公爵家の名は、聞いた事が無かったように思うが。

「モルドヴァ公爵令嬢様のお兄様ですか?
お名前を伺っても、宜しいですか?」
「私の兄は、魔法騎士団長のユーエン=ライ=モルドヴァですわ。」

ユーエン様ならば、適正検査の時にお会いしたし、城でたまに見かける事があった。
人懐っこくて笑顔の多い、副団長のエド叔父様と違って、真面目でしっかりした厳格な感じの方だ。

「ユーエン様でらっしゃいましたか。
お会いしたのが、まだこちらに来たばかりの頃でしたから、慣れない事ばかりで、失礼があったかと思います。」
「いえいえ。その様な事は・・・。
兄は、召喚者の方々の能力が興味深いと申しておりましたわ。」
「興味深い・・・ですか?」
「内容はさすがに教えてくれませんけれど・・・皆さん、お強いのでしょう?」

ロレッティーナ様は、期待に満ちた目をギラつかせて、最後の方を口元に手を当てて、小声で言った。
強いとは、体力や魔力量の事だろうか。
魔法はまだ慣れなくて、自在に操るまでに至っていないから、他の人よりも強いとは言えない。

「いえ。まだ、魔法を扱えるようになったというだけで、強いとは言えません。
皆さんの方が、いろんな場面に対応できますでしょう?」
「そうでしょうか。
でも召喚者の方は、能力が高いのでしょう?
きっとお強いですわ。」

私は、愛想笑いをした。
ロレッティーナ様は、いったい何を期待しているのだろうか?
魔法騎士団長と兄妹だとか、「強いのか?」と聞いてくる辺りからすると、試合でもしてみたい様な感じがするが、まさか、公爵令嬢が戦いたいなどと思うだろうか。
とすると、恋愛面だろうか。
きっと、私から、真也と康人に繋がりを持とうという事なのだろう。

「ロレッティーナ様、他の召喚者に紹介致しましょうか?」
「まぁ!宜しいの?
紹介して頂けたら、嬉しいですわ!」
「でしたら、まだ式まで時間があるようですし、紹介させて頂きます。」

私は、ロレッティーナ様を連れて、先程見かけた真也の所に向かった。
真也は腕を組み、瞑想しているのか、それとも寝ているのか、目を閉じていた。

「真也、ちょっと良いかしら?」

ゆっくりと目を開けた真也は、私を見上げると、渋々と立ち上がった。

「何だ?
あまりウロチョロせずに、座って待っていたらどうだ?」
「うん。ごめんねー、眠かった?」
「・・・隣の奴がやたらと絡んでくるから、話しかけられないように、目を瞑っていただけだ。」

少し私の方に身体を寄せるようにして、真也は小声で話した後、目線を隣の席にいる人の方へ流した。
その隣の人をチラリと伺うと、にこやかにこちらを見ている。
私は、気を取り直すように、軽く咳をした。

「あなたに紹介しようと思って。
モルドヴァ公爵令嬢様、こちら私の友人のギャボット侯爵令息です。
真也、こちらはモルドヴァ公爵令嬢様よ。ユーエン様の妹君でいらっしゃるの。」

私が2人を引き合わせると、お互い名前を教えあった。

「そうですか。ユーエン様の妹君でらっしゃいますか。
失礼ですが、何歳でらっしゃるんですか?」
「15ですわ。あなた方の1つ年上ですね。」

ロレッティーナ様は、まるで舐めるかの様に真也を観察している。

「康人はどこかしら。
まだ来ていないのかしら。」

私は、康人を探して、辺りを見回した。

「康人なら、お前の兄とどこかに行ったよ。
たぶん、王子の所だろう。」

そういえば、お兄様だけでなく、2人も従者候補だった。
ロレッティーナ様には、康人は今度紹介しよう。
私はロレッティーナ様の方に向き直った。

「もう1人、ロードリン伯爵令息も召喚者なのですが、今居ない様です。
今度、紹介しますね。」
「ええ。お願いしますわ。」

ロレッティーナ様は、私にそう言うと、真也にずいっと近づいた。

「ギャボット侯爵令息様は、何か身体を鍛えていらっしゃる様ですが、どういう事をしていらっしゃるの?」

急に近寄られて戸惑った真也は、後ろに少し下がったが、椅子が足に当たってあまり下がれない。

「え。
少し剣術を習ってるけど。
向こうの世界でも、剣道を少しやってたし。」

裕美や周りに、自分の事を認めて欲しくて始めた剣道だったが、真也にとってもストレス発散になっていた。
大会であまり良い成績は取っていなかったが、他の塾や習い事よりは、身を入れて鍛錬をしていたつもりだ。

「やはり。」

ロレッティーナ様は、真也を上から下まで、もう一度眺めると、真也の瞳をキッと睨む様に見た。

「ギャボット侯爵令息様!
私と1対1の勝負をして下さいませっ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...