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特異⑤
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戻って来たお父様が、急遽、新入生の希望者による武術大会を開催すると宣言した。
魔法はまだ慣れない方もいらっしゃるからと、純粋に武闘による勝ち抜き戦で、武器は刃を落としてある物やゴムで威力を落としてある物を使用し、勝ち負けは審判に従う事、終了後に必ず治癒魔法を受ける事が条件だ。
在校生も参加したい方がいらっしゃるだろうが、今回は新入生の自己紹介を兼ねており、あと急な話のため、観戦のみにしてもらいたいと、学園内と各寮に放送が流れた。
お父様、仕事が早いです・・・。
希望者は、あと30分程で鍛錬場に集合という事で、中庭で開かれたランチ会はお開きになった。
「今年は、6年生と7年生は入学者が1人ずつでしたから、出て来ないかもしれないですけど、5年生はジルベルト殿下を含めて何人かいますからね。強敵ですよ。」
「4年生も3年生も侮れないですよ。
騎士団に所属する家族がいる方も、騎士爵のご子息もいらっしゃいますから。」
「そうですね。オリヴァー様も、お兄様が近衛騎士でしたもんね。」
学園から寮に帰る道すがら、男子3人が話す内容は、やはり武術大会の事だった。
「オリヴァー様は出られるのでしょうが、ギリアム様と康人は出場されるんですか?」
私は、3人に問いかけた。
ギリアム様の事は知らないが、康人はこちらに来てから、剣を習っている筈だ。
「いえ、私は出ません。身体を動かすより、頭を働かす方が性に合っていますから。」
「私も出ないよー。まだ剣を始めて3ヶ月程だしね。
もうちょっと自信を持てないと、大会には出れないかなー。」
康人は、多少なりとも勝てる自信がないと、きっと武道が嫌いになっちゃうから、と続けた。
好きこそ物の上手なれ。
嫌いになってしまったら、上達するのは遅くなる。
「真也は、もしかしたら、行かないんじゃない?
オリヴァー様との1試合が、何故か大会になっちゃったし。」
ロレッティーナ様とオリヴァー様との約束とは、趣旨が変わってしまっているので、出てこない可能性が高い。
「ああ、それなら大丈夫。」
康人が、事もなげに言った。
「今頃、王太后様が連れて来た騎士に、捕獲されていると思う。」
「捕獲⁈」
「うん。万が一出て来ない可能性があるからねー。
王太后様にお願いしといたんだ。」
「いつの間に?」
「宰相閣下が、放送の内容を指示してる時。
だって、この大会って真也の為にやる様なものでしょう?
本人が来なかったら、話にならないじゃん。」
いや、真也の為じゃなく、ロレッティーナ様の為だと思うのだが。
「・・・ロレッティーナ様、参戦して来そうですよねー。」
オリヴァー様が、ボソッと独り言のように洩らした。
「確かに。でも、さすがに男女分けてやるんだろうから、問題なさそうじゃないですか?」
オリヴァー様が腕を組む。
「どうだろう?
そこのところ、ルールの中にそんな話、入っていませんでしたよねー?」
確かに男女別とは、言って無かったけれど。
当然分かれてやるものだと思っていたのだが?
「モルドヴァ公爵令嬢様は、『男女別で』なんて言ったら、怒り出しそうな気がする。」
真也と闘いたかったくらいだから、参加出来るなら、此れ幸いと男子に混じって闘う事だろう。
学園の校舎から出るところで、前方からお兄様が走って来るのが見えた。
私達を見つけると、手を振って走って来た。
「ちょうど良かった。
お父様か王太后様が、何処にいるか知らない?」
お兄様が息を整えながら、私達に聞いて来た。
「今は・・・まだ中庭にいらっしゃるかしら?」
「どうかなぁ?」
「もう移動されていると思う。」
「あ。マーガレット様達なら、まだ中庭にいる筈。どちらに行かれたのか知っているかも。」
マーガレット様達4人は、もう少しお菓子を堪能してから、直接、鍛錬場に行くというので、中庭で別れたばかりだった。
そういえば、私もお父様にお話したい事があったのを思い出した。
「3人は、寮に戻って下さい。特にオリヴァー様は、準備があるでしょうし。
お兄様、私もご一緒します。」
「分かった。
じゃあ、ヤスヒト様はとりあえず、殿下の所に行ってくれるかな?
そこに何故か騎士に『拘束』されたシンヤ様がいるから。」
「はい。分かりました。
あ、ちなみに、真也の拘束は、私が頼んだ事です。」
「ん?ヤスヒト様が?」
少し慌てた感じだったお兄様が、康人の方をギギギと向いて、固まった。
「えーと・・・、シンヤ様は何かしたのかな?」
お兄様が、恐る恐る、問いかける。
「いえ。むしろ、これからしそうだったので。」
「・・・これから?」
「はい。王太后様も宰相閣下も大賛成で、騎士に命令してくれました!」
お兄様が、唸りながら頭を掻く。
「・・・どういう事か、説明してもらえるかな?」
「はい!」
康人はハキハキと、武術大会が真也とオリヴァー様、ロレッティーナ様の入学式前にあった話から始まった事、真也にはヤル気が無かった事、ランチ会で真也が皆に揶揄われて怒ってしまった事を話し、それを踏まえると、『サボる』『逃亡する』という考えに行き着くという説明をした。
聞くにつれて、お兄様の顔に悲壮感が満ちてくる。
「じゃあ、シンヤ様が捕まっているこの状況は、ヤスヒト様は納得していると?」
「はい。捕まっているという事は、やはり逃げたのでしょう?
真也の事から発進したこの大会に、真也が出ない訳にはいかないじゃないですか。」
お兄様がまた、頭を掻く。
「んー。本当にヤスヒト様は分かってるのかな?
友人が『拘束』されてるんだよ⁈」
「ん?だから、逃げたからですよね?」
何だろう?
お兄様の狼狽え方が何かおかしい。
ギリアム様は、相変わらず、無表情なのだが。
「お兄様、真也は、ただ捕まっているだけなのですよね?
何か大変な事にでもなっているのですか?」
私は、少し不安になって、お兄様に問いかけた。
「向こうの世界とこちらでは、『拘束』に違いでもあるのか?
何でそんなに淡々と、友人の事を心配せずにいられるんだ⁈」
『逮捕』と『捕縛』、『拘束』は、すごく違うのだという。
『逮捕』は、捕まえて、手鎖や足枷をつけられて軟禁される事。
『捕縛』は、縄や鎖でぐるぐる巻きにされ、目隠しまでされて、何も動けない状態にされる事。
『拘束』は、捕縛され、重りを付けられて、人1人入れるくらいの鉄の箱に入れられて、隔離される事。なかには、精神錯乱の魔法までかける場合もあるらしい。
私達が思っていた『捕まえる』という行為は、『逮捕』にも当たらない、鬼ごっこ的なものだそうだ。
逃げられないように監視して、連れて来てくれるだけで良かったのだが。
つまり今、真也は。
「・・・鉄の箱に入れられているって事⁈」
「ぐるぐる巻きで⁈」
魔法はまだ慣れない方もいらっしゃるからと、純粋に武闘による勝ち抜き戦で、武器は刃を落としてある物やゴムで威力を落としてある物を使用し、勝ち負けは審判に従う事、終了後に必ず治癒魔法を受ける事が条件だ。
在校生も参加したい方がいらっしゃるだろうが、今回は新入生の自己紹介を兼ねており、あと急な話のため、観戦のみにしてもらいたいと、学園内と各寮に放送が流れた。
お父様、仕事が早いです・・・。
希望者は、あと30分程で鍛錬場に集合という事で、中庭で開かれたランチ会はお開きになった。
「今年は、6年生と7年生は入学者が1人ずつでしたから、出て来ないかもしれないですけど、5年生はジルベルト殿下を含めて何人かいますからね。強敵ですよ。」
「4年生も3年生も侮れないですよ。
騎士団に所属する家族がいる方も、騎士爵のご子息もいらっしゃいますから。」
「そうですね。オリヴァー様も、お兄様が近衛騎士でしたもんね。」
学園から寮に帰る道すがら、男子3人が話す内容は、やはり武術大会の事だった。
「オリヴァー様は出られるのでしょうが、ギリアム様と康人は出場されるんですか?」
私は、3人に問いかけた。
ギリアム様の事は知らないが、康人はこちらに来てから、剣を習っている筈だ。
「いえ、私は出ません。身体を動かすより、頭を働かす方が性に合っていますから。」
「私も出ないよー。まだ剣を始めて3ヶ月程だしね。
もうちょっと自信を持てないと、大会には出れないかなー。」
康人は、多少なりとも勝てる自信がないと、きっと武道が嫌いになっちゃうから、と続けた。
好きこそ物の上手なれ。
嫌いになってしまったら、上達するのは遅くなる。
「真也は、もしかしたら、行かないんじゃない?
オリヴァー様との1試合が、何故か大会になっちゃったし。」
ロレッティーナ様とオリヴァー様との約束とは、趣旨が変わってしまっているので、出てこない可能性が高い。
「ああ、それなら大丈夫。」
康人が、事もなげに言った。
「今頃、王太后様が連れて来た騎士に、捕獲されていると思う。」
「捕獲⁈」
「うん。万が一出て来ない可能性があるからねー。
王太后様にお願いしといたんだ。」
「いつの間に?」
「宰相閣下が、放送の内容を指示してる時。
だって、この大会って真也の為にやる様なものでしょう?
本人が来なかったら、話にならないじゃん。」
いや、真也の為じゃなく、ロレッティーナ様の為だと思うのだが。
「・・・ロレッティーナ様、参戦して来そうですよねー。」
オリヴァー様が、ボソッと独り言のように洩らした。
「確かに。でも、さすがに男女分けてやるんだろうから、問題なさそうじゃないですか?」
オリヴァー様が腕を組む。
「どうだろう?
そこのところ、ルールの中にそんな話、入っていませんでしたよねー?」
確かに男女別とは、言って無かったけれど。
当然分かれてやるものだと思っていたのだが?
「モルドヴァ公爵令嬢様は、『男女別で』なんて言ったら、怒り出しそうな気がする。」
真也と闘いたかったくらいだから、参加出来るなら、此れ幸いと男子に混じって闘う事だろう。
学園の校舎から出るところで、前方からお兄様が走って来るのが見えた。
私達を見つけると、手を振って走って来た。
「ちょうど良かった。
お父様か王太后様が、何処にいるか知らない?」
お兄様が息を整えながら、私達に聞いて来た。
「今は・・・まだ中庭にいらっしゃるかしら?」
「どうかなぁ?」
「もう移動されていると思う。」
「あ。マーガレット様達なら、まだ中庭にいる筈。どちらに行かれたのか知っているかも。」
マーガレット様達4人は、もう少しお菓子を堪能してから、直接、鍛錬場に行くというので、中庭で別れたばかりだった。
そういえば、私もお父様にお話したい事があったのを思い出した。
「3人は、寮に戻って下さい。特にオリヴァー様は、準備があるでしょうし。
お兄様、私もご一緒します。」
「分かった。
じゃあ、ヤスヒト様はとりあえず、殿下の所に行ってくれるかな?
そこに何故か騎士に『拘束』されたシンヤ様がいるから。」
「はい。分かりました。
あ、ちなみに、真也の拘束は、私が頼んだ事です。」
「ん?ヤスヒト様が?」
少し慌てた感じだったお兄様が、康人の方をギギギと向いて、固まった。
「えーと・・・、シンヤ様は何かしたのかな?」
お兄様が、恐る恐る、問いかける。
「いえ。むしろ、これからしそうだったので。」
「・・・これから?」
「はい。王太后様も宰相閣下も大賛成で、騎士に命令してくれました!」
お兄様が、唸りながら頭を掻く。
「・・・どういう事か、説明してもらえるかな?」
「はい!」
康人はハキハキと、武術大会が真也とオリヴァー様、ロレッティーナ様の入学式前にあった話から始まった事、真也にはヤル気が無かった事、ランチ会で真也が皆に揶揄われて怒ってしまった事を話し、それを踏まえると、『サボる』『逃亡する』という考えに行き着くという説明をした。
聞くにつれて、お兄様の顔に悲壮感が満ちてくる。
「じゃあ、シンヤ様が捕まっているこの状況は、ヤスヒト様は納得していると?」
「はい。捕まっているという事は、やはり逃げたのでしょう?
真也の事から発進したこの大会に、真也が出ない訳にはいかないじゃないですか。」
お兄様がまた、頭を掻く。
「んー。本当にヤスヒト様は分かってるのかな?
友人が『拘束』されてるんだよ⁈」
「ん?だから、逃げたからですよね?」
何だろう?
お兄様の狼狽え方が何かおかしい。
ギリアム様は、相変わらず、無表情なのだが。
「お兄様、真也は、ただ捕まっているだけなのですよね?
何か大変な事にでもなっているのですか?」
私は、少し不安になって、お兄様に問いかけた。
「向こうの世界とこちらでは、『拘束』に違いでもあるのか?
何でそんなに淡々と、友人の事を心配せずにいられるんだ⁈」
『逮捕』と『捕縛』、『拘束』は、すごく違うのだという。
『逮捕』は、捕まえて、手鎖や足枷をつけられて軟禁される事。
『捕縛』は、縄や鎖でぐるぐる巻きにされ、目隠しまでされて、何も動けない状態にされる事。
『拘束』は、捕縛され、重りを付けられて、人1人入れるくらいの鉄の箱に入れられて、隔離される事。なかには、精神錯乱の魔法までかける場合もあるらしい。
私達が思っていた『捕まえる』という行為は、『逮捕』にも当たらない、鬼ごっこ的なものだそうだ。
逃げられないように監視して、連れて来てくれるだけで良かったのだが。
つまり今、真也は。
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「ぐるぐる巻きで⁈」
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