姫の血縁

姫宮瑠璃

文字の大きさ
74 / 150

特異⑥

しおりを挟む
3人は寮に急いで帰り、私とお兄様は中庭に居たマーガレット様達に聞いて、学園長室の隣にある応接間に向かった。
中庭で、ライト先生を捕まえて一緒に。

コンコンコン。

「失礼します。」

3秒程待ち、ドアを開ける。
この時間さえも、もどかしい。
中には、ゆったりとお茶を飲み、談笑するお父様と王太后様がソファーに座って休んでいた。

「王太后様、シンヤ様の『拘束』を解いて頂けないでしょうか。」

部屋に入るとすぐに、お兄様は王太后様に願い出た。

「なんじゃ。やはり逃げたのか?」

王太后様はカップをテーブルに置くと、お兄様の方を向いた。

「いきなり部屋に入って来られたら、誰でも怖くなって逃げ出します。
お願いですから、早く解いてあげて下さい!」
「ふむ。捕らえよと伝えたのじゃが、認識の違いがあったかの?」

王太后様がお父様に目配せすると、お父様が一礼して立ち上がった。
ポケットからペンとメモ帳の様な物を出し、何かをスラスラと書いた。
窓を開けて、その紙に息を吹きかけ、外に放り投げると、紙が鳥の形をして飛んで行った。

「ありがとうございます!」

お兄様は、勢いよく頭を下げると、部屋を飛び出して行った。
真也を確認しに行ったのだろう。
いつもの、落ち着いた感じのお兄様の行動とは思えない。

「私も、怪我が無いか、診て参ります。」

ライト先生が、お兄様を追うように出て行き、私がポツンと残された。
王太后様が、私を手招きする。

「ヒロミ、お座りなさい。」
「はい。」

私が、王太后様の向かいのソファーに座ると、お父様は私の隣に座った。

「ヒロミも、シンヤの事で来たのかい?」

お父様と王太后様が、私の方を見た。

「はい。でも、それだけじゃなくて・・・。お父様に報告したい事があって。」

ーーー《お願い、薔薇のミニタオルのプチギフトを2つ出して》

私が思い願うと、ポンと、薔薇の形にタオルハンカチを巻いたプチギフトが目の前に出てきた。
私は手を出して、受け取った。
王太后様が目を見開く。

「なんと!ヒロミ、何をしたのじゃ⁈」

私は、プチギフトを2人に渡しながら、王太后様に倉庫?の話をした。
王太后様は、時々驚いたりしながら、目を煌めかせて聞いている。
お父様は、時折補足しながら、プチギフトを眺めていた。

「それで、これがその中に入っていた物なのじゃな?」
「はい。
茎の部分は金平糖、花は小さいタオルで出来ています。」
「なるほどのぉ。上手いこと作るものじゃ。」

2人は、上下に左右にとプチギフトを動かしながら、眺めている。

「それで、これをクラスメイトに、挨拶がわりに差し上げたらと思ったのですが、ハリエットがお父様に聞いてからにした方が良いというので・・・。」

お父様は、一目私に視線を向け、またプチギフトを眺めてから、私の方を向いた。

「これは、向こうの世界では、このように装飾して売っている物なんだよね?」
「普通に袋や箱に入って個別で売っていますけれど、これは結婚式とかパーティーで配る用などに、このようにラッピングして見栄え良くしてあります。」
「ふむ。」

お父様は、しばらくプチギフトを見つめたまま、考えている。
私は、何を言われるのかと、唾を飲み込んだ。

「これは、売り物になる・・・。1つ1つは得別な物ではないが、それに付加価値を付けているのは、こちらに無い考え方だ。」
「はい・・・。」
「これと同じ物は幾つくらいあるんだい?」
「えーと、30個くらいでしょうか。」
「ふむ。」

お父様は、包装を外し、ゆっくり確認するようにバラしていく。
そして、もう一度直して元どおりにした。

「思ったよりかなり簡単なつくりだ。
茎の部分をどうにかすれば、すぐにでも商品化出来るだろう。」
「・・・。」
「ヒロミ。」
「はい。」
「これをあげる時には、『今度売り出す試作品なんですが』と言って渡しなさい。」
「え?」
「いいですね?分かりましたね?」
「は、はい。」
「2週間以内には、うちの商会から売り出します。」

お父様は、ボールペンの時の様に、どこにタオルを発注するかなどと、商品化についての考えに没頭し始めた。
他にも入浴剤について話したかったが、こちらに今までなかった物は、大きな商機になる。
話をするなら、他の方が居ない時の方が良いだろう。
不意にコツコツと窓を叩く音がした。
窓を見ると、白い鳥が窓ガラスを叩いている。
部屋にいたメイドが窓を開けると、鳥はスッと中に入ってきて、王太后様の前で紙に変わった。
私は、目を見開いた。
なるほど、お父様はああやって先程手紙を送ったのか。
紙の内容を眺めた王太后様が、私に微笑んだ。

「シンヤの『拘束』は解かれましたよ。
失神していたようで、怪我も擦り傷程度で、ほとんど覚えていないそうです。」
「失神ですか・・・。」

いったい、どんな感じだったのだろう。
康人は今頃、平謝りしているかもしれない。

「大会には、ちゃんと出場できそうで、良かったわね。」
「え。こんな事があった後にですか⁈」
「だって、シンヤの剣技がメインなんでしょう?」

私は、絶句した。
王太后様も、容赦ない。

「ヒロミも、一緒に見に行きましょうね。」

私は唖然としながら、頷いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...