姫の血縁

姫宮瑠璃

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武器①

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真也の拘束が解かれたのは、鉄の箱に入れられてから15分程の事だった。
本人は縛られたところから、解放されるまで、意識が無かったので、知らないようだが、見ていた周りの生徒達の焦燥ぶりは凄かったそうだ。
雷の魔法で失神させられたそうで、顔や首、手の甲から指に、蔦のような文様が浮かび上がっていた。
電気が通り抜けたところが焼けてそのままミミズ腫れになっているそうで、腕や脚、胸にも同じ模様があるそうだ。
ライト先生の治癒魔法で痛みは無く、跡も薄くなっているそうなのだが、特徴的な火傷跡なので、それでも目立つ。

「私が治そうか?」
「いや、今はいい。
どうせ、大会終了時には裕美が治癒魔法をかけるんだろう?」

先に帰ってしまう人は個別で受けてもらうが、鍛錬場に残っている人達には、私が全体魔法で治癒する事になっている。

「それに、跡があった方が、罪悪感を掻き立てられるだろ?」

真也が、康人の方を向いて、そう言った。
視線の先には、真也の荷物持ちをさせられている康人がいた。
腕には防具が、背中には日本刀らしき物を背負っている。

「本当に、ごめん。
あんな事になるなんて思っても見なかったんだ。
改めて、違う世界にいるんだと実感したよ。」

私は見ていないが、鉄の箱と、その中でミイラの様にされた真也を見て、康人は絶句したらしい。

「あんな事があった後だから、大会に出るの、断っても良かったんじゃない?」
「それであの女が納得するか?
王太后だって、逃がさないように近衛騎士を差し向けて来るくらいだぞ。」

『あの女』とは、ロレッティーナ様の事だ。
大会に出ないなら、個人的に闘ってくれと言ってくるだろう。

「それに、オリヴァーのヤツもうるさいだろうしな。」

視線の先に、防具を身につけているオリヴァー様がいた。
どことなく、緊張感が漂っている。

「もう、2人とも戻れ、2階のテラスから観戦するんだろ?
早くしないと1回戦が始まっちゃうぜ。」
「頑張ってね。」
「怪我しないように、気をつけろよ!」
「おう。」

康人が、真也の侍従に防具と武器を渡すと、私達は急いで2階に上がり、テラスに向かった。
鍛錬場を2面使って同時に2試合行われるので、真ん中の渡り廊下になっている2階の廊下は、すごく混雑していた。
やっとの事で通り抜け、お父様と王太后様のいるテラスへ向かうと、もうすでに始まっているところだった。
大会の参加者は、9人。
当初、もっと集まるかもと思われたのだが、男子寮での出来事を見聞きした方達は、気持ちが削がれた様で、申し込む方は少なかった。
ジルベルト殿下や、お兄様の同級生も、出場を辞退したそうだ。
真也の事から始まった事と、寮での出来事を踏まえて、人数的にも1人あぶれるので、真也はシード枠だ。
9人の参加者の中には、女性が3人いるそうで、その1人がなんと、アンナだった。
今までの記憶が無いアンナが闘うのは、不安だが、本人に参加の意思があるのだから、しょうがない。
あと2人のうち、1人はロレッティーナ様だろうと思っていたのだが、ロレッティーナ様は王太后様とお話をされていた。
シンプルなデザインのロングのフィッシュテイルドレスだったので、さすがにその姿では闘わないだろう。
私と康人が、お父様と王太后様の近くに行くと、ロレッティーナ様が気付いて席を立った。

「ヒロミ様、ヤスヒト様、ご機嫌よう。
今、『』について、王太后様にお話していたところですわ。」

真也の事があって、頭から吹っ飛んでいたが、そういえばそんな話があった。

「恥ずかしいので、やめてもらえませんか?」
「今、王太后様と宰相閣下に了承を得たところです。
学園内に部屋をもらえる様、学園長に話して下さるそうですわ。」

相変わらず、人の話を聞かない方だ。

「とはいえ、人数がやたらに増えて、主旨が疎かになっては困りますから、公式ではありますが、あくまで非公式の会というスタンスで行います。
ヤスヒト様は、それをご承知下さいませ。」
「分かりました。秘密組織ですね。」

康人は、心得たとばかりにウインクをする。

「秘密組織・・・、心踊る響きですわ!」

ロレッティーナ様は、手を胸の前で組んで、目を煌めかせた。

「いや、やめて下さい。よく分からない組織を作るのは。」

私は溜め息を吐き、無駄だと分かりながら抗議した。

「それより、今は武術大会でしょう。
ロレッティーナ様は、武術を見るのがお好きなんでしょう?」

私は、話を切り上げようと、話題を変えた。

「ヒロミ様。少し私の事を勘違いしてらっしゃいますわ。」

ロレッティーナ様が急に、姿勢を正して私を見据えた。

「私は、武術を見るのはあまり好きではありませんよ。」
「え。好きではないのですか?」

私は、ロレッティーナ様の意外な発言に驚いた。

「私は、好きなのです。
特に、自分がやるのがね。」
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