姫の血縁

姫宮瑠璃

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汚れ⑥

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テルニア城に行くのは、姫小路裕美、康人、マークライドと、ヴィンセント、キーランに康人の護衛騎士ソーンの6名になった。
クロッシェントは、姫小路裕美と康人にあともう1人くらいの最少人数を考えていた。
しかし、『聖女の血縁』の召喚者2人に護衛1人では、何かあった時に困るだろうし、何より敵国だ。
たとえ国王が親密な関係を望んでいたとしても、国王1人の独断だけで、国が動いている訳ではない。
それに、いつどういった状況変化で、手を返されないとも分からない。
クロッシェントは、不承不承受け入れたが、これで隠れた行動が取りづらい状態になってしまった。
テルニア城の王の寝室の横にある隠し部屋に、姫小路裕美と康人、護衛騎士、それに神官の4人を匿いながら解呪を進めるつもりだったが、この人数は隠しきれない。
何か他の手を考えなければと思案しながら、小1時間前にエンダールの客人達と分かれた地下室へと向かっていると、廊下から騒ぐ声が聞こえてきた。

「だから!自分は男だから、そんな事出来ないって!」
「観念するのだ、ヤスヒト。
今回は仕方ない事だ。他にやれる人がいないのだから。」
「兄としては納得出来かねますが、仕方ありません。
ヒロミの為です。目を瞑りましょう。」
「いや、その裕美だって、後で知ったら恥ずかしさに死にたくなりますよ。」

マークライドとアランが、部屋から出ようとしている康人を、部屋に引き込もうとしていた。
必死に康人が抵抗するのを、ソーンがニヤついて、他の騎士は無表情で見ていた。
廊下に歩哨で立っている兵達も、苦笑していた。

「何か問題でも?何をそんなに嫌がっているのだ?」

クロッシェントが声をかけると、掴まえられていた手の力が緩んだのか、康人が2人の手を払って、クロッシェントの方へ逃げてきた。
クロッシェントの後ろにいた護衛兵が、康人から守ろうとするが、康人はクロッシェントより、その護衛兵達の後ろに隠れるように、護衛兵に縋り付いた。

「助けて下さい!」

兵士に縋り付く康人を見て、クロッシェントは首を傾げた。
追いかけて来たマークライドが、康人の首根っこを掴むようにして、引っ張る。

「人助けなのだ。別に、ヒロミ嬢を嫌いではなかろう?」
「嫌いとか、そういう問題じゃないでしょう。
お祖父様、離して!」
「ダメだ。
気になるのならば、責任を取るつもりでやれば良い。」

康人が、猫の様に掴まれて、引きずられていく。

「どういう事だ?」

クロッシェントは、アランを掴まえた。
アランは何故か、不機嫌そうだ。

「妹は、3日間寝ていた訳じゃないですか。
その間、誰も世話していなかった。」
「ああ。そうだが?」

「だから何だ?」と、クロッシェントは首を捻る。

「つまり、着替えもロクにしてないわけです。」
「まあ、そうだな。で?」
「あの神官は、、ヒロミの衛生状態を管理していたんです。
!」
「はあ。?」
「今、康人しかヒロミの世話を出来る者はいないのだから、それを康人がしなければなりません。
!」

クロッシェントは、話の内容が見えず、首を傾げるばかりだ。

「さっぱり、分からないのだが。
結局、何を、ロードリン宮中伯令息にさせようとして、嫌がられているのだね?」

ソーンはまだニヤついているし、他の騎士も無表情。
歩哨の兵達は、何故か顔を背けている。
アランは、頰を膨らませるようにしていた。

「ヒロミの・・・。」
「『薔薇姫』の?」
「ヒロミの、オムツの確認と、身体の汗を拭く事と、着替えを。
康人にやらせるなんて、
なのに康人は、何度も何度も嫌がって。
まるで、ヒロミは魅力的じゃないと言わんばかりじゃないか!」

拳を作って、アランが力説する。

「え?・・・それは、知り合いだし、女性だから、恥ずかしいんじゃないか?」
「じゃあ、テルニア王が、同じ立場ならどうですか?」
「まあ、・・・役得だと多少なりとも思うと思うが。」
「でしょう!」

アランは、握り拳に、更に力を入れた。

「ヒロミの身体を男に触らせるなんて、兄として、
あそこまで、嫌がる事はないじゃありませんか!」
「まあ、そうかもしれないけども。」
「まして、もう、あの神官に見られたり、触られちゃったり、しちゃっている訳ですよ。
そんなヒロミを、今度は汚れたまま、放置するなんて、出来ますか?出来ませんよね?」
「ん?・・・また、分からなくなってきたのだが?」

クロッシェントには、康人が下の世話をしなければならない話と、今まで世話をしてきた神官の事が、どう結びつくのか分からなかった。

「赤の他人の男に、触れられていたんですよ?
消毒したいですよね?」
「あ。ああ、イノウエに誑かされた兵士の事か。
まあ、そう思ってもおかしくはないな。」

アランは、額がくっつくかと思われる程、顔をクロッシェントに近づけ、睨むように、

「違います。あのです。」

そう、言った。

「男の?」
「そうです!あの男です!
なんで、ヒロミの世話係が、男なんですか!」

アランは、クロッシェントを睨みつけていた。
クロッシェントは、目を大きく開けて、キョトンとした顔になり、すぐさま、大笑いを始めた。

「何を笑うのです!」

アランは、憤慨のあまり、顔が真っ赤になっていた。

「いやいや。すまん。
確かに、男に見えるなアイツは。
だが、あの神官は、女だ。」
「は?」
「いくら、『黒』とはいえ、令嬢の世話に男は付けまい?」



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