姫の血縁

姫宮瑠璃

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汚れ⑦

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「・・・女?」
「ああ。」
「え。え?」

アランの視線は、クロッシェントと地下室のドアを行き来している。
歩哨に立っていた兵士達も、クロッシェントの護衛兵達も、エンダールの騎士達も、茫然としている。
中には、あんぐりと口を開けている者さえいた。

「誰も、女だと気付いていなかったのか?
体格で、分かるだろう?」

クロッシェントは、そう言うが、170㎝を超えるスラリとした姿、胸元も膨らんでおらず、服装だって男性神官のものだ。
髪は低い位置でおさげにしていて顔を出しているが、頬骨が見える骨張った男性的な顔をしている。
化粧っ気もなくスッピンで、肌こそ荒れていないが、日頃手入れをしているような肌ではなく、鼻の辺りにそばかすのような黒点がいくつもあった。
男性として見れば不細工ではないが、女性として見れば魅力的ではない。
姫小路裕美の居る部屋から、マークライドが大きな溜め息を吐きながら出てきて、ドアを閉めた。
康人は出て来ないところをみると、観念したのだろうか。

「まったくアイツは。
妹のような、姉のような、上司のような、男友達のようなと言っていたくせに、しっかり意識しているではないか。」

マークライドは、呆れたように鼻を鳴らした。

「ロードリン宮中伯令息は、『薔薇姫』とそんな関係なのか?」
「先程は失礼しました。」

クロッシェントが声をかけると、マークライドは胸に手を当て、軽く会釈した。

「ヤスヒトは、ヒロミ嬢の騎士みたいな者。
宰相殿が言うには、秘書らしいが。」

マークライドはそう言うと、ニタリと笑った。

「しかし、アレは、ヒロミ嬢を好きに違いないでしょうな。」
「ほう?」
「ヒロミ嬢が拐われたと聞いて、飛び出して行ったヤスヒトと、飛び出そうにも周りに止められて、諦めたシンヤ殿。
身内に甘いとはいえ、ヤスヒトの方が優勢でしょう。」

マークライドは、腕を組んで、1人合点している。

「しかし、召喚者は王族が抱え込んでいたようだが?
戦線に出すのは、かなり反対された筈。
その諦めた者も、召喚者なのだろう?
妥当な判断だと思うが?」
「チッチッチッ、違いますね。」

マークライドは、目の前で人差し指を左右に振った。

「いざという時に、動けた者と動けなかった者の差は歴然。
ましてや、シンヤ殿は始め、ヤスヒトを引き止めて飛び出そうともしなかった者です。
自分達には無理だ。役に立たないと言ってね。」
「戦いに向いていない者ならば、そう考えてもおかしくないのでは?」
「いえ。シンヤ殿は、アラン殿やヤスヒトよりも、戦闘向きです。
召喚される前、向こうの世界でも、剣術を習っていたというし。」
「属性や能力がそうでも、根が臆病という事もある。」
「ん~。臆病って感じじゃあ無いんですがねぇ。
まあ、ヤスヒトの方が信義にも優れているって示せたので、私は大満足ですがね。」

孫贔屓のマークライドに、クロッシェントは苦笑いをした。

「ところで、知恵を貸してもらいたいのだが、いいだろうか。」

クロッシェントは、マークライドに素直に助言を乞うことにした。
出来るだけ隠密に、姫小路裕美を運び、解呪までの時間を稼ぎたい。
この砦からの情報規制や、スパイの排除は行い易いが、城に戻れば難しい。
老臣や奸臣、教皇側の人間やスパイから、完全に情報を隠す事は無理だ。

「では、ヤスヒトのヒロミ嬢の世話が終わってから、場所を変えて聞きましょう。
私より、ベルローズ公爵令息殿やヤスヒトな方が、頭を使うのに向いていますから。」
「そうだな。頭数が多い方が、アイデアも浮かび易い。」

クロッシェントは、頷いた。

「ところで、そのベルローズ公爵令息殿は、何故に呆けているのか知ってますか?」

クロッシェントは、アランをチラリと見ると、

「気にしなくても、もうすぐ戻るから、大丈夫だ。」

そう言って、にこやかな笑顔をマークライドに向けた。
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