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第一章
第5話
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アイテムボックスからペンダントを取り出す。
金色に輝くペンダントの真ん中には赤紫の透き通った宝石。中では紫の光が動いている。
この世界で記憶が戻った日、ポケットに入っていたペンダント。これがなんなのか、元師匠であるゲインに見せても「知らん、でも高く売れそうだから持ってろ」としか言われなかった。
それ以降1日1回ペンダントを人知れず確認することが日課になっていた。
ペンダントが無事であったことを確認してアイテムボックスに戻す。
そして後ろの方を歩いている王女のリンシアと護衛メイドであるメルに声をかけた。
「遅いぞお前ら! もっと早く歩けないのかぁ!」
「全くもって、無礼ね」
メルが砕けた口調で俺に言った。敬語はやめてくれと俺が言ったからだ。
「早く大浴場に入りたいんだ。凄く入りたいんだ!」
語彙力の欠片もない主張をしてみる。
「そんなに大浴場好きなのですか?」
リンシアはまだ丁寧な言葉を使っている。
さすが王族だと俺は思った。
「俺は特別、大浴場……つまり温泉が好きなんだ!」
笑顔で主張して温泉が好きなことをアピールする。
「なんだか知りませんが大浴場に凄い熱意を感じますね……」
スラム街であるジルムンクでの水はかなり希少だった。身体を洗うために使う余裕など無い。ましてや湯船に浸かるぐらいの水など用意できるものはいないのだ。
身体を綺麗にする生活魔法である【クリーン】を使っていた俺だが、こちらで目覚めてから10年、1度も天然の湯に使ったことがないのだ。
天然と言えば……。
「そういえば気になったんだが、王城の大浴場は天然なのか?」
「天然とはどういうことですか?」
「ただ水を温めただけではなく、地下から出てきている天然物なのかという意味だ」
天然かどうかは俺にとってかなり大切な要素である。ただの温めた湯なら自分でも作れそうだからだ。
「そういう意味でしたら天然ですよ。城を建設する当時に掘り起こされたらしいです。美容にも良く、当時は奇跡の湯と呼ばれていたらしいですよ」
「ますます楽しみだな」
俺は唇を綻ばせた。
天然なのであれば文句はない、早く入りたいものだ。
「徒歩だと、王都まであと1日もかかるのか?」
「先程申し上げた通り、私たちのような、か弱い女性の足では1日はかかる」
メルは笑顔で「か弱い」という部分を主張してきた。
「か弱いねぇ……メルは相当出来ると思うんだけどね」
王族の護衛メイドなだけあってなかなかに強いと感じた。ジルムンクで俺に集団リンチを仕掛けた男達のリーダー格程度なら軽く倒せるレベルである。
「メルが騎士になればいいんじゃない?」
これまでの道中で俺を騎士にしたい理由の説明をリンシアの口から一通り受けていた。だからこそ素朴な疑問を投げかけてみた。
どうにも王族の事情というのはめんどくさいことこの上ないし、関わるつもりはないと思わせられた。
「メルも強いですが、王国の騎士達はもっと強いです。それに女性で騎士になるためには爵位を持った者でしかならないという決まりがあるのです」
リンシアの言葉を聞いたメルの表情は暗い。
メルの事情は聞いていないが、なにか訳ありなのだろう。
「事情がおありで、まぁ俺は身分証と大浴場さえ入れればいいんだけどね」
「それよりもさっきアイテムボックスを使ってませんでしたか?」
さっき使ったところを後ろから見ていたのだろう。
「あぁ使ったよ。次元属性魔法ぐらい誰だって使えるだろう?」
「次元属性魔法……この国でも使えるものは3人しかいない、かなりレアな属性だぞ」
俺の答えにメルが驚きの表情で答える。リンシアも驚いたがすぐ笑顔になった。
次元属性魔法、そんなにレアだったのか。俺の師であるゲインも使っていたし、めずらしいぐらいにしか思ってなかった。
「とりあえず早く進もうぜ!」
あれこれ詮索させるのも嫌だったので、話題を変えてにこやかに2人へ声をかけた。
今のところ王族の争いに巻き込まれるつもりもないので適当な理由で騎士は辞退しようと考えている。
こんな平凡的な会話を繰り返しながら大浴場に向かっていた。ついでに王都に。
金色に輝くペンダントの真ん中には赤紫の透き通った宝石。中では紫の光が動いている。
この世界で記憶が戻った日、ポケットに入っていたペンダント。これがなんなのか、元師匠であるゲインに見せても「知らん、でも高く売れそうだから持ってろ」としか言われなかった。
それ以降1日1回ペンダントを人知れず確認することが日課になっていた。
ペンダントが無事であったことを確認してアイテムボックスに戻す。
そして後ろの方を歩いている王女のリンシアと護衛メイドであるメルに声をかけた。
「遅いぞお前ら! もっと早く歩けないのかぁ!」
「全くもって、無礼ね」
メルが砕けた口調で俺に言った。敬語はやめてくれと俺が言ったからだ。
「早く大浴場に入りたいんだ。凄く入りたいんだ!」
語彙力の欠片もない主張をしてみる。
「そんなに大浴場好きなのですか?」
リンシアはまだ丁寧な言葉を使っている。
さすが王族だと俺は思った。
「俺は特別、大浴場……つまり温泉が好きなんだ!」
笑顔で主張して温泉が好きなことをアピールする。
「なんだか知りませんが大浴場に凄い熱意を感じますね……」
スラム街であるジルムンクでの水はかなり希少だった。身体を洗うために使う余裕など無い。ましてや湯船に浸かるぐらいの水など用意できるものはいないのだ。
身体を綺麗にする生活魔法である【クリーン】を使っていた俺だが、こちらで目覚めてから10年、1度も天然の湯に使ったことがないのだ。
天然と言えば……。
「そういえば気になったんだが、王城の大浴場は天然なのか?」
「天然とはどういうことですか?」
「ただ水を温めただけではなく、地下から出てきている天然物なのかという意味だ」
天然かどうかは俺にとってかなり大切な要素である。ただの温めた湯なら自分でも作れそうだからだ。
「そういう意味でしたら天然ですよ。城を建設する当時に掘り起こされたらしいです。美容にも良く、当時は奇跡の湯と呼ばれていたらしいですよ」
「ますます楽しみだな」
俺は唇を綻ばせた。
天然なのであれば文句はない、早く入りたいものだ。
「徒歩だと、王都まであと1日もかかるのか?」
「先程申し上げた通り、私たちのような、か弱い女性の足では1日はかかる」
メルは笑顔で「か弱い」という部分を主張してきた。
「か弱いねぇ……メルは相当出来ると思うんだけどね」
王族の護衛メイドなだけあってなかなかに強いと感じた。ジルムンクで俺に集団リンチを仕掛けた男達のリーダー格程度なら軽く倒せるレベルである。
「メルが騎士になればいいんじゃない?」
これまでの道中で俺を騎士にしたい理由の説明をリンシアの口から一通り受けていた。だからこそ素朴な疑問を投げかけてみた。
どうにも王族の事情というのはめんどくさいことこの上ないし、関わるつもりはないと思わせられた。
「メルも強いですが、王国の騎士達はもっと強いです。それに女性で騎士になるためには爵位を持った者でしかならないという決まりがあるのです」
リンシアの言葉を聞いたメルの表情は暗い。
メルの事情は聞いていないが、なにか訳ありなのだろう。
「事情がおありで、まぁ俺は身分証と大浴場さえ入れればいいんだけどね」
「それよりもさっきアイテムボックスを使ってませんでしたか?」
さっき使ったところを後ろから見ていたのだろう。
「あぁ使ったよ。次元属性魔法ぐらい誰だって使えるだろう?」
「次元属性魔法……この国でも使えるものは3人しかいない、かなりレアな属性だぞ」
俺の答えにメルが驚きの表情で答える。リンシアも驚いたがすぐ笑顔になった。
次元属性魔法、そんなにレアだったのか。俺の師であるゲインも使っていたし、めずらしいぐらいにしか思ってなかった。
「とりあえず早く進もうぜ!」
あれこれ詮索させるのも嫌だったので、話題を変えてにこやかに2人へ声をかけた。
今のところ王族の争いに巻き込まれるつもりもないので適当な理由で騎士は辞退しようと考えている。
こんな平凡的な会話を繰り返しながら大浴場に向かっていた。ついでに王都に。
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