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第4話:距離が近すぎて魔物が寄りつきません
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ギルド登録を終えた翌日。
リリィは、初任務の掲示板の前で、そわそわしていた。
木の板に貼られた依頼書がずらり。
字が多い。
単語が難しい。
「えっと……これ……森の調査……? 魔物……?」
「それだ」
背後から即答が来た。
――今日も近い。
そして今日も、当然のようにリリィの肩の少し後ろに立っている。
リリィは掲示板の紙を指でなぞりながら読んだ。
『王都近郊の森にて魔物の目撃報告。
討伐ではなく、現状把握と安全確認。
採取可能なら薬草も回収』
「調査なら……私にもできそう!」
リリィがにこっとすると、近くにいた冒険者たちがちらっとこちらを見た。
「新人、あれか」
「精霊騎士の……」
「守護距離が近い子……」
あ、また噂。
リリィは恥ずかしくなって、そっと依頼書を剥がした。
「よしっ。これにします!」
「決まりだ」
エヴァンが淡々と言う。
淡々なのに、どこか“満足そう”な空気がするのが腹立つ。
(なんでそんなに堂々としてるの……)
リリィは頬をふくらませながら、受付へ向かった。
♢
依頼の森は、王都から馬車で半日ほどの距離だった。
担当のギルド職員がつけてくれた“同行冒険者”は二人。
槍使いの青年、ジード。
弓使いの女性、ミーナ。
ふたりとも気さくで、リリィに優しかった。
「リリィちゃん、初任務?緊張してる?」
「う、うん……でも頑張る……!」
「大丈夫大丈夫。調査だし。
……っていうか隣の人の方が怖い」
ミーナが小声で囁く。
リリィは慌てて首を振った。
「怖くないよ!エヴァン、すごく親切だよ!」
その瞬間、ジードが目を見開いた。
「え、今の“親切”判定、どこで出た?」
「転びそうな時に支えてくれるし……」
「うん」
「危ない時に抱えるし……」
「うん?」
「手も繋いでくれるし……」
「うんうん?」
ジードとミーナは、顔を見合わせた。
そして、同時に言った。
「……親切っていうか、溺愛じゃない?」
「違うよ!守護だよ!」
リリィが即否定すると、ふたりは半笑いで肩をすくめた。
「守護ねぇ……」
「守護って便利な言葉だねぇ……」
リリィは頬を赤くして、前を向いた。
その背後で、エヴァンがいつも通り静かに立っていた。
距離は近い。
会話には入ってこない。
でも――聞いている。
リリィはなぜか、それがちょっと恥ずかしかった。
♢
森の入口に着くと、空気が変わった。
木々の影が濃くなり、鳥の声が減る。
草の匂いが湿っていて、音が小さくなる。
リリィは自然と息をひそめた。
「ここ……ちょっと怖い……」
ぽつりと言った瞬間。
背後のエヴァンが、さらに一歩近づいた。
――ぴた。
背中に、体温。
リリィは目をぱちぱちさせた。
「え、近……」
「警戒しろ」
「う、うん……」
警戒してるのは私じゃなくて、あなたの距離だけど。
心の中でツッコミながらも、
リリィはその温かさに安心してしまう。
ジードが槍を握り直し、先頭を歩いた。
「よし、調査開始だ。
魔物がいたら――」
「倒すの?」とリリィが聞く前に、ミーナが言った。
「倒すのは最後の手段。
基本は“何がいるか”見るだけ。
でも危なかったらすぐ撤退。わかった?」
「はいっ!」
リリィは元気よく頷いた。
初任務。がんばる。
がんばる――と思ったのだが。
♢
森の奥へ進んで十分。
ミーナが小声で言った。
「……あれ?」
「どうした?」ジードが足を止める。
「気配が……ない」
リリィはきょとんとした。
「気配……?」
「魔物の、気配。
報告ではここらへんに出るって話だったんだけど」
ジードが眉をひそめる。
ミーナが弓を構えたまま耳を澄ませる。
リリィも真似して静かにしてみた。
……しーん。
鳥も鳴かない。
虫も鳴かない。
森が、静かすぎる。
「……えっと」
リリィは言った。
「森が……眠ってるみたい……」
その言葉に、ミーナがリリィを見る。
「……それ、やばい時の静けさだよ」
「えっ」
リリィが固まった瞬間。
右の木陰が、動いた。
――黒い影。
鋭い爪。
長い牙。
ぎらりと光る目。
「出た!」
ジードが槍を構えた。
ミーナが弓を引く。
影は、魔物だ。
狼みたいな形なのに、毛が黒く、目が赤い。
――でも。
魔物は、リリィたちを見た瞬間。
ぴた、と止まった。
赤い目が、じっとこちらを見る。
そして。
目が、エヴァンを捉えた瞬間。
――ぞわっ。
魔物の毛が逆立った。
「……?」
ジードが首を傾げた。
魔物は一歩後退した。
いや、二歩、三歩。
そして――
「ギャゥ……」
怯えた声を漏らして、森の奥へ逃げた。
逃げた。
「……え?」
リリィが間抜けな声を出した。
ジードもミーナも固まっている。
数秒後、ジードがようやく口を開いた。
「……今の、逃げたよな」
「逃げたね」
ミーナの声も、困惑している。
リリィは目をぱちぱちさせた。
「えっと……魔物って……逃げるんだ……」
そう言った瞬間、背後のエヴァンが言った。
「当然だ」
「当然!?」
リリィが振り向くと、エヴァンはいつも通り真顔だった。
「何が当然なの……?」
「弱いものは、強いものから離れる」
淡々。
理屈は正しい。
でもこの場で言うと変。
ジードが、ゆっくりエヴァンを見た。
「……まさか、お前の圧?」
「圧ではない」
エヴァンは即否定した。
「……威圧じゃないの?」
「守護だ」
ミーナが静かに言った。
「え?守護って……魔物を逃がすの?」
「結果としてそうなる」
結果としてそうなる守護、怖い。
リリィは思った。
でも声には出さなかった。
出したら、守護の距離がさらに縮まりそうだから。
♢
その後。
魔物は、出るたびに逃げた。
木陰から目だけ覗かせて、
エヴァンを見た瞬間、怯えて帰る。
草むらが揺れたと思ったら、
近づく前に引き返す。
しまいには、遠くで鳴き声がするだけで姿すら見せない。
ジードが、槍を肩に担いで言った。
「……討伐する前に、討伐完了してる」
「何それ」
ミーナが笑ってしまう。
リリィは、森の静けさの理由にようやく気づいた。
(みんな……逃げてる……)
静かすぎる森。
眠っているんじゃない。
近づけないのだ。
リリィはそっと、後ろを振り向く。
――エヴァンがいる。
いつも通り、ぴったり。
守護位置。
背中の温度。
リリィは小さく息を吐いた。
(……これ、守護って言うより……)
言葉が見つからない。
でもなんだか、とても頼もしい。
そして――少し、誇らしい。
ジードが歩きながら言った。
「リリィちゃんさ、魔物逃がす力あるの?」
「ないよ!?私、草を元気にするくらいだよ!」
「じゃあ、彼のおかげだ」
ミーナが笑いながら、リリィの頬をつついた。
「愛されてるねぇ」
「ちがっ……!」
リリィが赤くなると、背後のエヴァンが低い声で言った。
「動揺するな」
「動揺するよぉ……!」
なんで、
そんなに平然としてるの。
リリィは心の中で泣いた。
でもーー否定されない。
♢
調査を終えてギルドに戻ると、報告書を書くことになった。
受付嬢が、例のニヤニヤ顔で待っていた。
「おかえりなさ~い。初任務どうでした?」
「えっと……魔物が……逃げました……」
リリィが真面目に言うと、受付嬢は瞬きをした。
「逃げた?」
「はい……」
ジードが横から言った。
「魔物、出てきたけど全部逃げた」
ミーナが続ける。
「怖がってた。精霊騎士さまを見た瞬間に」
受付嬢は、ゆっくりエヴァンを見た。
「精霊騎士さま……」
「守護だ」
エヴァンは即答。
受付嬢は、堪えきれずに肩を震わせた。
「ふっ……ふふっ……」
「えっ、笑ってる……?」
リリィが戸惑うと、受付嬢は笑顔のままペンを取った。
「報告書、こちらでまとめますね。
原因欄は……」
受付嬢はさらさらと書く。
そしてリリィに見せた。
【原因:精霊騎士の守護圧が強すぎるため、魔物が寄りつかなかった】
リリィは、声にならない声を出した。
「守護圧って……なに……!?」
受付嬢がにこにこ言った。
「便利な言葉ですよぉ?」
「便利にしないでぇ……!」
ジードとミーナが腹を抱えて笑う。
「守護圧って最高だな!」
「伝説できたね、リリィちゃん!」
リリィは真っ赤になって、エヴァンを見上げた。
「エヴァン……ほんとに、守護……?」
「そうだ」
即答。
リリィはくたっと肩を落とした。
「……そっかぁ……」
納得したくないのに、
なぜか安心してしまう自分がいる。
そのとき、エヴァンが低い声で言った。
「……次は、もっと危険な任務になる」
「えっ」
リリィがぱっと顔を上げる。
「でも、お前は大丈夫だ」
「どうして?」
エヴァンは、ほんの少しだけ目を細めた。
「私が近いから」
――その言葉で。
リリィの心拍が、また乱れた。
受付嬢が、すかさずメモを取った。
【追記:契約者の心拍が乱れると、守護距離がさらに縮む可能性あり】
「追記しないでぇぇ……!」
リリィの叫びが、ギルドに響いた。
そして噂は、また一段階育った。
『精霊騎士と癒し系の子、
“守護圧”で魔物を消したらしい』
リリィだけが、それを知らない。
リリィは、初任務の掲示板の前で、そわそわしていた。
木の板に貼られた依頼書がずらり。
字が多い。
単語が難しい。
「えっと……これ……森の調査……? 魔物……?」
「それだ」
背後から即答が来た。
――今日も近い。
そして今日も、当然のようにリリィの肩の少し後ろに立っている。
リリィは掲示板の紙を指でなぞりながら読んだ。
『王都近郊の森にて魔物の目撃報告。
討伐ではなく、現状把握と安全確認。
採取可能なら薬草も回収』
「調査なら……私にもできそう!」
リリィがにこっとすると、近くにいた冒険者たちがちらっとこちらを見た。
「新人、あれか」
「精霊騎士の……」
「守護距離が近い子……」
あ、また噂。
リリィは恥ずかしくなって、そっと依頼書を剥がした。
「よしっ。これにします!」
「決まりだ」
エヴァンが淡々と言う。
淡々なのに、どこか“満足そう”な空気がするのが腹立つ。
(なんでそんなに堂々としてるの……)
リリィは頬をふくらませながら、受付へ向かった。
♢
依頼の森は、王都から馬車で半日ほどの距離だった。
担当のギルド職員がつけてくれた“同行冒険者”は二人。
槍使いの青年、ジード。
弓使いの女性、ミーナ。
ふたりとも気さくで、リリィに優しかった。
「リリィちゃん、初任務?緊張してる?」
「う、うん……でも頑張る……!」
「大丈夫大丈夫。調査だし。
……っていうか隣の人の方が怖い」
ミーナが小声で囁く。
リリィは慌てて首を振った。
「怖くないよ!エヴァン、すごく親切だよ!」
その瞬間、ジードが目を見開いた。
「え、今の“親切”判定、どこで出た?」
「転びそうな時に支えてくれるし……」
「うん」
「危ない時に抱えるし……」
「うん?」
「手も繋いでくれるし……」
「うんうん?」
ジードとミーナは、顔を見合わせた。
そして、同時に言った。
「……親切っていうか、溺愛じゃない?」
「違うよ!守護だよ!」
リリィが即否定すると、ふたりは半笑いで肩をすくめた。
「守護ねぇ……」
「守護って便利な言葉だねぇ……」
リリィは頬を赤くして、前を向いた。
その背後で、エヴァンがいつも通り静かに立っていた。
距離は近い。
会話には入ってこない。
でも――聞いている。
リリィはなぜか、それがちょっと恥ずかしかった。
♢
森の入口に着くと、空気が変わった。
木々の影が濃くなり、鳥の声が減る。
草の匂いが湿っていて、音が小さくなる。
リリィは自然と息をひそめた。
「ここ……ちょっと怖い……」
ぽつりと言った瞬間。
背後のエヴァンが、さらに一歩近づいた。
――ぴた。
背中に、体温。
リリィは目をぱちぱちさせた。
「え、近……」
「警戒しろ」
「う、うん……」
警戒してるのは私じゃなくて、あなたの距離だけど。
心の中でツッコミながらも、
リリィはその温かさに安心してしまう。
ジードが槍を握り直し、先頭を歩いた。
「よし、調査開始だ。
魔物がいたら――」
「倒すの?」とリリィが聞く前に、ミーナが言った。
「倒すのは最後の手段。
基本は“何がいるか”見るだけ。
でも危なかったらすぐ撤退。わかった?」
「はいっ!」
リリィは元気よく頷いた。
初任務。がんばる。
がんばる――と思ったのだが。
♢
森の奥へ進んで十分。
ミーナが小声で言った。
「……あれ?」
「どうした?」ジードが足を止める。
「気配が……ない」
リリィはきょとんとした。
「気配……?」
「魔物の、気配。
報告ではここらへんに出るって話だったんだけど」
ジードが眉をひそめる。
ミーナが弓を構えたまま耳を澄ませる。
リリィも真似して静かにしてみた。
……しーん。
鳥も鳴かない。
虫も鳴かない。
森が、静かすぎる。
「……えっと」
リリィは言った。
「森が……眠ってるみたい……」
その言葉に、ミーナがリリィを見る。
「……それ、やばい時の静けさだよ」
「えっ」
リリィが固まった瞬間。
右の木陰が、動いた。
――黒い影。
鋭い爪。
長い牙。
ぎらりと光る目。
「出た!」
ジードが槍を構えた。
ミーナが弓を引く。
影は、魔物だ。
狼みたいな形なのに、毛が黒く、目が赤い。
――でも。
魔物は、リリィたちを見た瞬間。
ぴた、と止まった。
赤い目が、じっとこちらを見る。
そして。
目が、エヴァンを捉えた瞬間。
――ぞわっ。
魔物の毛が逆立った。
「……?」
ジードが首を傾げた。
魔物は一歩後退した。
いや、二歩、三歩。
そして――
「ギャゥ……」
怯えた声を漏らして、森の奥へ逃げた。
逃げた。
「……え?」
リリィが間抜けな声を出した。
ジードもミーナも固まっている。
数秒後、ジードがようやく口を開いた。
「……今の、逃げたよな」
「逃げたね」
ミーナの声も、困惑している。
リリィは目をぱちぱちさせた。
「えっと……魔物って……逃げるんだ……」
そう言った瞬間、背後のエヴァンが言った。
「当然だ」
「当然!?」
リリィが振り向くと、エヴァンはいつも通り真顔だった。
「何が当然なの……?」
「弱いものは、強いものから離れる」
淡々。
理屈は正しい。
でもこの場で言うと変。
ジードが、ゆっくりエヴァンを見た。
「……まさか、お前の圧?」
「圧ではない」
エヴァンは即否定した。
「……威圧じゃないの?」
「守護だ」
ミーナが静かに言った。
「え?守護って……魔物を逃がすの?」
「結果としてそうなる」
結果としてそうなる守護、怖い。
リリィは思った。
でも声には出さなかった。
出したら、守護の距離がさらに縮まりそうだから。
♢
その後。
魔物は、出るたびに逃げた。
木陰から目だけ覗かせて、
エヴァンを見た瞬間、怯えて帰る。
草むらが揺れたと思ったら、
近づく前に引き返す。
しまいには、遠くで鳴き声がするだけで姿すら見せない。
ジードが、槍を肩に担いで言った。
「……討伐する前に、討伐完了してる」
「何それ」
ミーナが笑ってしまう。
リリィは、森の静けさの理由にようやく気づいた。
(みんな……逃げてる……)
静かすぎる森。
眠っているんじゃない。
近づけないのだ。
リリィはそっと、後ろを振り向く。
――エヴァンがいる。
いつも通り、ぴったり。
守護位置。
背中の温度。
リリィは小さく息を吐いた。
(……これ、守護って言うより……)
言葉が見つからない。
でもなんだか、とても頼もしい。
そして――少し、誇らしい。
ジードが歩きながら言った。
「リリィちゃんさ、魔物逃がす力あるの?」
「ないよ!?私、草を元気にするくらいだよ!」
「じゃあ、彼のおかげだ」
ミーナが笑いながら、リリィの頬をつついた。
「愛されてるねぇ」
「ちがっ……!」
リリィが赤くなると、背後のエヴァンが低い声で言った。
「動揺するな」
「動揺するよぉ……!」
なんで、
そんなに平然としてるの。
リリィは心の中で泣いた。
でもーー否定されない。
♢
調査を終えてギルドに戻ると、報告書を書くことになった。
受付嬢が、例のニヤニヤ顔で待っていた。
「おかえりなさ~い。初任務どうでした?」
「えっと……魔物が……逃げました……」
リリィが真面目に言うと、受付嬢は瞬きをした。
「逃げた?」
「はい……」
ジードが横から言った。
「魔物、出てきたけど全部逃げた」
ミーナが続ける。
「怖がってた。精霊騎士さまを見た瞬間に」
受付嬢は、ゆっくりエヴァンを見た。
「精霊騎士さま……」
「守護だ」
エヴァンは即答。
受付嬢は、堪えきれずに肩を震わせた。
「ふっ……ふふっ……」
「えっ、笑ってる……?」
リリィが戸惑うと、受付嬢は笑顔のままペンを取った。
「報告書、こちらでまとめますね。
原因欄は……」
受付嬢はさらさらと書く。
そしてリリィに見せた。
【原因:精霊騎士の守護圧が強すぎるため、魔物が寄りつかなかった】
リリィは、声にならない声を出した。
「守護圧って……なに……!?」
受付嬢がにこにこ言った。
「便利な言葉ですよぉ?」
「便利にしないでぇ……!」
ジードとミーナが腹を抱えて笑う。
「守護圧って最高だな!」
「伝説できたね、リリィちゃん!」
リリィは真っ赤になって、エヴァンを見上げた。
「エヴァン……ほんとに、守護……?」
「そうだ」
即答。
リリィはくたっと肩を落とした。
「……そっかぁ……」
納得したくないのに、
なぜか安心してしまう自分がいる。
そのとき、エヴァンが低い声で言った。
「……次は、もっと危険な任務になる」
「えっ」
リリィがぱっと顔を上げる。
「でも、お前は大丈夫だ」
「どうして?」
エヴァンは、ほんの少しだけ目を細めた。
「私が近いから」
――その言葉で。
リリィの心拍が、また乱れた。
受付嬢が、すかさずメモを取った。
【追記:契約者の心拍が乱れると、守護距離がさらに縮む可能性あり】
「追記しないでぇぇ……!」
リリィの叫びが、ギルドに響いた。
そして噂は、また一段階育った。
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