媚薬のレシピは古書店で【完結】

染西 乱

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1.本物のレシピに違いないんだわさ

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「おっ媚薬だって~! 」

 怪しい本屋の怪しい古書店に書いてあったものめずらしい見出しを見て、私は隣に立っていた同期の男の腕をつついた。

 人が一人入れるぐらいの隙間を開けて、別の本を読んでいる男は職場の同期の男で、大層な童顔をしている。可愛らしい顔つきは子役のような垢抜けた雰囲気でくりくりとした眼はまさにどんぐり眼。唇は形よく程よい赤色をしている。身長はギリギリ自分よりも高いと思うが、私自身が女子の平均身長ちょうどといったところなので、男にしたら少し物足りないという高さだ。

 もう少し身長が高ければ引く手数多だっただろうに……背の低い男というのは悲しいかな……というのは本人も気にしているので禁句である。からかうのもNGのガチ本気の言っては行けないワードだ。
 真っ黒な髪は艶々テカテカと煌めいていて、どこのシャンプーのCM狙ってんだという完璧なキューティクルが完璧な天使の輪を作っている。
 私の髪はパーマとカラーで痛んで歪な輪っかもどきしかないと言うのにに不平等ではなかろうか。
 別に羨ましくなんてないんだからねっ。
 嘘、めっちゃ羨ましい。
どこのトリートメント使ってんの?え?使ってない?そんなばかな……。なんて会話はもうすでにしたから今更聞くことなどなにもない。
 天然のキューティクルなんだわ。
 雛田は黙っていればまだ学生でも通用する外見をしている。なんならまだ詰襟を着ていても通報されないだろう。

 雛田は生真面目な顔をして別の本を読んでいて、私の方を面倒そうにちらッと見てから「媚薬なんてもん存在するわけないだろ」とあっさりと話をぶったぎる。
 その声は顔に似合わない、低く太めの声だ。慣れていなければ外見とのギャップで顔を二度見したところだ。
 しかしわたしと雛田の同期暦はすでに三年。既にそのアンバランスな声には慣れている。
 服装もラフな服を着ていると学生に間違われてめんどくさいという理由から、いかにも仕事が出来そうなスーツを着ている。
 服に着られている感はまだ若干あるが、そのスーツのおかげでギリギリ社会人には見える。

 それでも新社会人にしか見えないけども。スーツに着られてる感があるんだよなぁ。

 私は休日なりの服を着ている。
 なんか動きやすいシックと言えなくもない膝丈ワンピース。
 こいつがスーツなんか着てくるからおかしいんだよなぁ。なんか新卒をたぶらかしてるおねーさんみたいになってない?大丈夫?

「いや、でも書いてあるから」

 見てみてよ、と開いた本を雛田にちかづける。
 私が差し出した本の開いたページをちら、と一瞥した雛田は馬鹿にしたような表情を浮かべて、へっと吐き出すように笑う。
 雛田のその表情を私は思わず二度見した。
 なんて嫌な表情をどうやったらそこまで悪意を顔の表じゃに練り込めるんだ。
 口の歪め方なんて性格の悪さが滲み出ている。長年の性格の悪さのキャリア感が半端ない。
 正統派の整った顔をしているくせに、こういうところがまったく童顔らしくなくてかわいくない……。せっかくの可愛い顔が台無しだ。もっとこう素直な感じのほうが似合う顔なのに、中身が伴っていないんだよな。ギャップ狙ってるなら絶対にやめた方がいい。
 本人としても可愛いと言われるのは業腹らしいからそれでいいんだろうが……もったいない。

 神の与えた自らの有利性を手放すとは……
 これが人間が知性を得た代償か……

 などと高尚なことを考えていたところ、雛田の言葉が思考に割り込んでくる。

「んなもん嘘に決まってる」

 きっぱりはっきりと決めつけられた。

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