怪異退治はアクマでゴリ押し

染西 乱

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「ほんとに早都子ねぇさまって美人で優しくて気が利いて! 理想のお嫁さんですよね! こんな素敵な奥さんがいるなんて旦那さんが羨ましいな~」

ドーナツを手に持ってひとかじりしたサイリは、早都子の右手に光る指輪を見る。
その堅実なデザインから婚約指輪ではなく、結婚指輪だと確信していたサイリは、心の底からこんな素敵な人と結婚出来た旦那のことを羨んだ。
幼馴染とかかな? こんなに美人なんだ、引くて数多だろうしさぞかしモテたことだろう。
その中で早都子ねぇさまらに選ばれた旦那はいかほどのものなのか多少の興味があった。

早都子は薄く微笑みをたたえたままで、サイリを見つめる。

「なんだ、入野、教えてなかったのか」

コヨミ様は、フォークを使い手を汚さずにドーナツを食べ切りコーヒーで口を潤していた。
ごくりとコヨミ様が飲み込んだコーヒーの音が聞こえる。

「いえ……特につたえるべきことでもないので……」

早都子ねぇさまは、長いまつ毛のついた目を伏せてしまっている。

「? なんの話ですか?」

旦那さんがいることは、触れてはいけない話だったのだろうか。いきなり重たくなった空気の不安さにサイリは慌てる。

「すいませんっ、結婚なんて個人的なことなのに……」

世の中の結婚全てが幸せに直結するものではないことを、さすがのサイリも知っている。なんだろ、借金のかたに結婚させられたとかかな、それとも無理やり脅されて結婚するしかなかったとか?
なんにせよ、早都子ねぇさまが不快な気持ちになるのであれば、この話は早々に打ち切ってしまって今後は口に上らせないようにしなければ。

慌てふためいて、早都子に謝ったサイリを見て早都子はゆるゆると首を振った。その大きな瞳には悲しみが満ちている。

「いえ、いいのよ。別に秘密にしているわけでもないんだけれど……私の旦那様はもうこの世にはいないの」

「へ?」

サイリはとっさに間抜けな声しか出せなかった。

こんなに素敵な女性なのだからさぞかし幸せな夫婦生活を営んでいるんだろう、という考えが音を立てて崩れていく。
だって、早都子ねぇさまは……サイリが今まだ会ってきた中で1番完璧で、素敵な女性だ。
素敵な旦那様と結婚して、他人も羨むラブラブで幸せな家庭を築いているはず……なのに。

「え、と……あのすいません……私知らなくて……」

サイリは言うべき言葉がわからずに、目を泳がせた。
まだまだ人生経験の浅い小娘が、どんなことばをかけるべきかまったくわからない。

《ご愁傷様でした》なんてもってのほかだ。

「悪魔から私を庇ってくれて……とってもすてきな人だったわ」

早都子ねぇさまの憂いを浴びた瞳が美しいのに、口の中に入れた甘いはずのドーナツの味が全くしない。
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