青き血潮の果て【完結】

染西 乱

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スリープブルー

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これには精神的にまいった。どこから入って来るのかと部屋のドアも窓もガチガチに施錠し、それでも無駄だとわかれば隙間という隙間をテープで塞いだが、悪魔や魔族どもはどこからともなく現れる。しかも内容が内容だけに誰に相談することもできない。悪魔祓いを頼もうにもこいつらが話している内容は「次期魔王は私である」というとんでもないものなのだから、これを悪魔祓いを生業にしている聖職者に聞かれてしまうのは非常にまずい。
嘘でも本当でも査問に問われ、囚われて数年は身体中をモルモットのように切り刻まれて調べられることを覚悟しておいた方がいいだろう。しかも私の体を調べようものならばすぐに私の《血》の色の常人との違いに気づくのだから、最悪だ。家人にぽろりと話でももらそうものならば家人が悪魔祓いを頼んでしまうだろう。それは使用人でも同じことであるし、私はただ黙って、最近寝つきが良くなくて朝方になっても起きられなくなってしまっている、という体にしている。

「うるさい黙れ」とでも返事しようものならば絶対に「私たちの声が聞こえているんですね」と喜びそうで、私は魔族には一言も返事を返していない。それもまたストレスの元であった。向こうは好き放題にこちらに話しかけて来るにもかかわらずこちらはなにも言い返せないのだ……。
魔族はやれ「次の魔王の貴方様ならばきっと前魔王様や成し得なかった偉業をやり遂げることが出来ることでしょう」「勇者なる人間どもに殺されてしまった同族たちの仇討ちを」「目に物見せてやりましょう」「チカラが」「何でも出来る」などいろんなことを好き放題に言っている。

睡眠は人間にとって大事な時間だ。

私のイライラは募った。
私は魔王になどなりたいと思ったことなど一度もない。
勇者の敵になるなど考えられないし、人間と対立したいなどと思ったこともない。

勇者、という言葉を浮かべて私はある妙案を思いついた。

悪魔祓いなどに頼む必要はない。魔王を倒した勇者の力を借りればいい。
魔王という魔族で1番力の強い者を倒した力だ。
末端の魔族などすぐに祓えるに違いない。



善は急げとそのことを思いつき、すぐに私はマックスに会いに行った。
私から彼を訪ねたのは初めてのことだった。
いつもは彼の方が私の教える子供たちの様子を見に来てくれ、その帰りに子供たちと一緒にお茶とお菓子をつまんで少しだけ話をするといった形でしかなかった。
国の英雄になった後もマックスは以前と同じマックスのままで、「こんな美味しい菓子を出してますもらって申し訳ないな」などと言いながら、にこにこと笑顔を浮かべて紅茶には必ずミルクをどばどぼと入れて、角砂糖を三つも入れて飲んでいた。

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