青き血潮の果て【完結】

染西 乱

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ハッピーオレンジ

勇者が無事に魔王を倒した。

突然の知らせが国を駆け巡ると、国を挙げての祝福モードに突入した。マックスたちが疲れ果てて土に塗れて戻って来ると、パレードが行われることになった。
勇者が瀕死に陥るまでの適当な扱いをしていた癖にと思わないでもないがその後きちんと対応し、国からの手厚い支援を行っていたので良しとしよう。

町中の店は魔王討伐セールを開催している。
いろんなものがいつもより安く買えると皆ほくほく顔で買い物をしている。
皆の表情が元気で明るくなり笑い声が増え、こころなしか孤児まで少なくなっている気がする。

私はそれほど実感したことがなかったが、民たちは思った以上に魔物や魔王に対して恐怖を感じ、日々を過ごしていたらしかつた。
簡単な魔物ならば退けられる力を持っている私たち家族からすれば驚くべきことだが、ほんの小さな魔物に出会うだけで子供であれば死んでしまうこともあるのだ。おいそれと外で遊ぶこともできなかった子供たちも魔王が討伐され、魔物の数が激減したため外遊びが出来るようになったのだという。
魔物に食べられて恒常的に甚大な被害を受けていた家畜業にも、光が見えたはずだ。

次の魔王が誕生するのが次の日かはたまた何百年後か全く分からないが、それまでは平穏な日が続くはずだ。
よかったな。
街の元気な喧騒を眺めて笑顔になっていたのは私ばかりではないだろう。



しかし、そこからが私の地獄の始まりだった。

毎夜魔王の部下だったという魔族が枕もとにやってきては、「次の魔王様は貴方様です」と言う。
嫌々ながら薄目を開けてたしかめると、コウモリのような見かけをした魔物であった。ふわふわとした体毛を保ちながら、見えている手足はがりがりの皮と骨ばかりで、真っ黒のまんまるの目は暗闇を飛ぶためか真っ黒だった。案外可愛らしい顔を見てしている。
薄い翼の折りたたんで器用にベッドの欄干に立つと、毎夜のように「魔王様、魔王様」と語りかけてくる。

コウモリが来ない日にはカラスや、大きなねずみのようなものたちが枕元に立ち「この方が次の魔王様か、ご挨拶をしなかては」とゴソゴソやった後にまた「魔王様」と話しかけてくる。
私は自分を次の魔王などと認めていないため、いくら話しかけられようと頑なに目を瞑り続け、会話をすることなどない。布団を頭から被り朝が来るのを待って朝方になり太陽が昇る頃合になるとその手の輩は姿を消すため、そこからが私の真の睡眠時間となった。

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