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七.初めての恋
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大和が、自分の性的嗜好に気付いたのは、高校三年生の夏だ。
それは、夢にも思わなかった、弟への夢精がきっかけだった。
大和に突然三歳年下の弟ができたのは、大和が中学三年生の時だ。
母親は、まだ大和が中学二年生の時に事故で他界した。その母が亡くなってから、一年後のことだった。突然、母より随分若い継母と、半分血の繋がりがある弟が家にやってきた。
小学六年生だった悠仁は、素直で可愛く、突然できた兄を慕ってくれた。
最初は、大和が幼い頃に外に愛人と子供まで作っていた父親に対して、納得のいかない感情があった。
しかし、一人っ子で弟が欲しいと思っていた大和が、懐いてくる悠仁を可愛いと思うようになるまでそう時間はかからなかった。
今でこそ想像もつかないが、兄さん兄さんと大和の後をついてくる、可愛い弟だったのだ。
勉強を見てやったり、一緒に遊んだり、一緒の布団で寝たり。
他の兄弟というのがどうかは知らないが、大和と悠仁はその年頃の兄弟にしては一緒に過ごすことが多かった。それは、兄弟になって長くないということもあったかもしれない。
夏休みのある日、前日にも寺田と一緒に悠仁を連れて、プールへ行ってきたばかりのことだった。
単純に弟として可愛がっていた悠仁を抱く夢を見て、起きたら夢精していた。
最初は夏の暑さのせいで、おかしな夢を見たのかと思った。だが、夏の暑さが和らいでも、大和が悠仁を抱く夢を見たのは、一度や二度ではなかった。
もともとあまり女性に興味がなかったことについて、許嫁がいるからどこかで壁を作っているせいだと思っていたが、性の対象がそもそも違ったことが理由だと、時間をかけて気付いた。
最初は戸惑った。まさか、自分がゲイだなんて思いもしない。
ただのブラコンだろうと思いつつも不安で、こっそりとゲイについて調べた。男同士でキスやセックスをしている動画を見ても、何の気持ち悪さもないどころか、それは大和を興奮させた。
今まで見知った知識での悠仁を抱く夢だったが、初めて男同士のセックスの動画を見た夜は、その通りに生々しくセックスする夢だった。
自分は男が好きで、しかもよりによって弟を好きになってしまった。
ゲイだという以上に、弟を好きになったことがショックだった。
もしかしたら、“告”の一族ではないただの普通の家庭の兄弟であったならば、万に一つの可能性で悠仁も大和を好きだと言ってくれたら、結ばれる可能性もあったかもしれない。
しかし、“告”の人間である以上、それは決して報われる恋ではない。
その先に未来はない。始まった時点で、すでに終わっているのだ。
好きになる相手が男だろうと、それが“告”と無関係の人間であれば、誰だって構わなかっただろう。
けれど、同じ血を持つ悠仁は、大和がたった一人、好きになってはいけない相手だった。
悠仁を抱く夢を見ては、叶わぬ恋に辛くなる。
大和の初めての恋に、現実は残酷だった―――。
ゲイであることを家族に黙っているべきか、大和は迷った。
しかし、跡継ぎを残すことを考えた時、女性相手にセックスができないことが結婚後に発覚する方が重大な問題だと、大和は家族に話す決意をした。
父は、“告”の血を何より大事に考えているので、許されず勘当されることも覚悟した。
大和にとても懐いてくれている悠仁ならば、ゲイだと伝えてもきっと変わらず接してくれるだろう。恋は叶わないけれど、今まで通り兄として弟を愛していこうと思った。
だが、それも大和の甘い考えに過ぎなかった。
大和に懐いてくれていた悠仁は、少しずつ距離を置き、大和から離れていった。
大和を見つめていた優しい目は、次第に憎まれているのではと感じるほどの冷たい目に変わった。
あんなに、大和のことを親しみを込めて呼んでくれていたのに、聞けなくなった。
話し方も態度も、ゲイという人種を侮蔑しているのか豹変していった。
おかげで、百年の恋も何とやらというように、大和から悠仁への恋慕の気持ちは次第に消えていった。
だから、今はすっかり悠仁への未練はまったく失くなってしまったのだった。
それは、夢にも思わなかった、弟への夢精がきっかけだった。
大和に突然三歳年下の弟ができたのは、大和が中学三年生の時だ。
母親は、まだ大和が中学二年生の時に事故で他界した。その母が亡くなってから、一年後のことだった。突然、母より随分若い継母と、半分血の繋がりがある弟が家にやってきた。
小学六年生だった悠仁は、素直で可愛く、突然できた兄を慕ってくれた。
最初は、大和が幼い頃に外に愛人と子供まで作っていた父親に対して、納得のいかない感情があった。
しかし、一人っ子で弟が欲しいと思っていた大和が、懐いてくる悠仁を可愛いと思うようになるまでそう時間はかからなかった。
今でこそ想像もつかないが、兄さん兄さんと大和の後をついてくる、可愛い弟だったのだ。
勉強を見てやったり、一緒に遊んだり、一緒の布団で寝たり。
他の兄弟というのがどうかは知らないが、大和と悠仁はその年頃の兄弟にしては一緒に過ごすことが多かった。それは、兄弟になって長くないということもあったかもしれない。
夏休みのある日、前日にも寺田と一緒に悠仁を連れて、プールへ行ってきたばかりのことだった。
単純に弟として可愛がっていた悠仁を抱く夢を見て、起きたら夢精していた。
最初は夏の暑さのせいで、おかしな夢を見たのかと思った。だが、夏の暑さが和らいでも、大和が悠仁を抱く夢を見たのは、一度や二度ではなかった。
もともとあまり女性に興味がなかったことについて、許嫁がいるからどこかで壁を作っているせいだと思っていたが、性の対象がそもそも違ったことが理由だと、時間をかけて気付いた。
最初は戸惑った。まさか、自分がゲイだなんて思いもしない。
ただのブラコンだろうと思いつつも不安で、こっそりとゲイについて調べた。男同士でキスやセックスをしている動画を見ても、何の気持ち悪さもないどころか、それは大和を興奮させた。
今まで見知った知識での悠仁を抱く夢だったが、初めて男同士のセックスの動画を見た夜は、その通りに生々しくセックスする夢だった。
自分は男が好きで、しかもよりによって弟を好きになってしまった。
ゲイだという以上に、弟を好きになったことがショックだった。
もしかしたら、“告”の一族ではないただの普通の家庭の兄弟であったならば、万に一つの可能性で悠仁も大和を好きだと言ってくれたら、結ばれる可能性もあったかもしれない。
しかし、“告”の人間である以上、それは決して報われる恋ではない。
その先に未来はない。始まった時点で、すでに終わっているのだ。
好きになる相手が男だろうと、それが“告”と無関係の人間であれば、誰だって構わなかっただろう。
けれど、同じ血を持つ悠仁は、大和がたった一人、好きになってはいけない相手だった。
悠仁を抱く夢を見ては、叶わぬ恋に辛くなる。
大和の初めての恋に、現実は残酷だった―――。
ゲイであることを家族に黙っているべきか、大和は迷った。
しかし、跡継ぎを残すことを考えた時、女性相手にセックスができないことが結婚後に発覚する方が重大な問題だと、大和は家族に話す決意をした。
父は、“告”の血を何より大事に考えているので、許されず勘当されることも覚悟した。
大和にとても懐いてくれている悠仁ならば、ゲイだと伝えてもきっと変わらず接してくれるだろう。恋は叶わないけれど、今まで通り兄として弟を愛していこうと思った。
だが、それも大和の甘い考えに過ぎなかった。
大和に懐いてくれていた悠仁は、少しずつ距離を置き、大和から離れていった。
大和を見つめていた優しい目は、次第に憎まれているのではと感じるほどの冷たい目に変わった。
あんなに、大和のことを親しみを込めて呼んでくれていたのに、聞けなくなった。
話し方も態度も、ゲイという人種を侮蔑しているのか豹変していった。
おかげで、百年の恋も何とやらというように、大和から悠仁への恋慕の気持ちは次第に消えていった。
だから、今はすっかり悠仁への未練はまったく失くなってしまったのだった。
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