〜心の翻译(ファンイー)〜

古波蔵くう

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第12話:それぞれの道、繋がる未来

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 沖縄県那覇市、源家玄関。私はゆっきーの家に行く。
「ユッキーノ親、優シイカナ?」
「優しいよ……」
 そんな会話をしながら、私はゆっきーの家に入り、両親に会う。
「お父さん、あ母さん……こちらが俺が今付き合っているカノジョの李魅凜リー メイリンです」
「李魅凜デス……ユッキーノ オ……オ父サン、オ母サン?」
 私はまだニホンゴをネイティブに話せていない。違和感があるだろうか。
「会釈は?」
 ゆっきーの母が私を睨んでいる。
「李ってことは、中国人か? 良い人に思えないが……」
 ゆっきーが父も私を怖い目つきで見てる。
「お父さん、お母さん……そんな怖い顔しないで! 魅凜は優しい人だから!」
 ゆっきーが真実を言っても
「ニュースとか見ても、悪い人しかいない……信じられん」
 ゆっきーの父は、拒否する。
「中国じゃ会釈もしないの?」
 ゆっきーの母も、私をカノジョと認めてくれない。
「じゃあ、どうしたら認めてくれる⁉︎」
 ゆっきーが、どうしたら私をカノジョとして認めてくれるか聞く。
「料理して……私と夫に毒でも盛らないか味見する」
「料理はなんでも良いんだな?」
「なんでもいい、けど食材や使うものは自分で買ってきて」
 ゆっきーの母は、私に料理をさせて、毒を入れないか試すらしい。私は毒なんて入れない。手に入るわけない。
「じゃあ、武漢の家庭料理にするか……魅凜、いくら持ってる?」
 ゆっきーが家の中にあるビニール袋を手に取る。私の財布には人民元しか入っていない。
「よくこれでバス乗れたね……」
 私はホテル コレクティブから古波蔵高校までバスで通っていた。その時は、ホテルのオーナーが人民元を日元に変えてくれたから乗れた。
「銀行に行って、日本円に変えてこよう」
 ゆっきーは、外に出る。私も後を追う。
 かねひで(沖縄のスーパー)。私はゆっきーとスーパーに入る。どんな家庭料理を振る舞おうか
「魅凜、どんな料理作る?」
「エーット、ジャア排骨藕汤パイグオウタン红烧茄子ホンシャオチエズ豆皮ドウピーニシヨウカナ?」
 私は料理名を答える。
「どんな料理か教えてくれるかな?」
「食材ノ ニホンゴガ分カラナイ」
 私は日常会話は出来るけど、食材の名称などはまだ覚えていない。
「スマホで調べるか……」
 ゆっきーは、スマホで
『パイグオウタン、ホンシャオチエズ、ドウピー』
 とカタカナで検索した。すると
『パイグオウタン……スペアリブと蓮根のスープ
 ホンシャオチエズ……ナスの甘辛炒め
 ドウピー……もち米と具材の湯葉包み』
 と出てきた。
「必要な材料はここで揃いそうだ……買ってこよう」
 ゆっきーは、カートとカゴを持って店内に入る。私も後を追う。
 那覇市、源家調理場。私は買ってきた食材と調理具を持って調理場に行った。以下にそれぞれの料理で使う材料を示す。

一品目:排骨藕汤パイグオウタン
材料(2人分)
豚スペアリグ(アグー豚)200グラム
蓮根(皮剥きの輪切り)100グラム
生姜2枚
クコの実 少々(飾り程度)
紹興酒(料理酒でも代用可能) 小さじ1
塩 小さじ4分の1
水 約800ミリリットル

二品目:红烧茄子ホンシャオチエズ
材料(2人分)
ナス2本(縦切りにして水にさらす)
にんにく・生姜・長ネギ(みじん切り) 少々
しょうゆ 大さじ1弱
砂糖 小さじ1
黒酢 小さじ2分の1
オイスターソース 小さじ1
水 大さじ2
ごま油 少々
サラダ油(揚げ焼き用) 適量

三品目:豆皮ドウピー
材料(2人分)
乾燥湯葉(ライスペーパーや油揚げで代用可能) 2枚(ぬるま湯で戻す)
もち米 2分の1合
豚ひき肉 50グラム
干しエビ 小さじ1(戻して刻む)
椎茸 1枚(みじん切り)
にんじん 8分の1本(みじん切り)
醤油 小さじ1
砂糖 小さじ2分の1
塩・こしょう 少々
油 少量(炒めと焼き目用)

と。それぞれ料理する。
 パイグオウタンは、
鍋に下茹でしたスペアリブ、輪切りの蓮根、生姜、紹興酒を入れ、弱火で1時間煮込む。仕上げに塩を加え、クコの実を浮かべて香りづけ。
澄んだスープに、骨付き肉と蓮根が静かに沈んでいる。
 ホンシャオチエズは、
素揚げしたナスに香味野菜の香りが絡み、甘辛いタレでじゅわっと仕上げる。照りと香りが食欲を誘う一皿。
 ドウピーは、
炒めた具材と蒸したもち米を混ぜ、柔らかな湯葉でひとつずつ丁寧に包む。蒸してから焼き色をつけると、香ばしさが立った。

私は作った武漢の家庭料理をゆっきーの父と母に振る舞う。2人は
「本当に毒入っていないよな?」
「美味しいの?」
と。まだ疑っている。
「大丈夫デス……毒ワ イッサイ入レテイマセン!」
私は認めてもらえないのかと思ってしまう。
「お父さん、お母さん! なんでそこまでカノジョを嫌うんだ!」
ゆっきーが怒鳴る。
「だって、中国人ーー」
「そんなに疑うなら、俺が毒味する! 俺が死にかけてしまったら救急車と魅凜をカノジョと認めなくていい!」
ゆっきーは、お父さんとお母さんに振る舞ったパイグオウタンとホンシャオチエズ、ドウピーを一口食べて咀嚼する。
「普通に美味しい……」
ゆっきーは美味しいと言ってくれた。次はゆっきーの父と母が食べる。
「「美味しい!」」
2人も美味しいと言ってくれた。
「オ口ニ合ッテ良カッタデス!」
私は笑顔になった。
「私、誤解してた」
「魅凜さん、どうぞ息子をよろしくお願いします」
お父さんは頭を下げる。こうして、私とゆっきーの夏休みは終わった。後期になって、王先生(継父)が担当だった中国語のクラスの教員を探すことになった。非常勤の教員も見つからないため、中国語の教員たちは
「魅凜、頼む! 王先生の中国語担当してくれないか?」
「中国語得意だろ?」
と。せがまれた。
「ワ、分カリマシタ……我ガ臨時ノ教員ニナリマス」
私は一時期、継父が担当していた中国語クラスを担当した。ゆっきーはめっちゃ驚いていた。
 ゆっきーは、早く中国語をマスターしてほしいな。
ー終劇ー
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