〜眠りの中で見つけた愛〜

古波蔵くう

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第5章:恋心の芽生え

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 医王くんが、私をサポートしていることに気付いた。いつも下校中にコンビニに通ってコピー機に向かって、黒板の写真を私に渡したり、教科ごとにまとめたノートを渡したりしてくれた。
「医王くんは、勉強してるの?」
「俺は大丈夫……」
医王くんの使っているノートなら、ちょっと使うの躊躇うけど、そうじゃないみたいだ。医王くんのサポートはこれだけじゃなかった。
 定期テスト期間中。私は朝から夕方まで寝ていて、学校に行けなかった。定期テストだったのに。すると
「夢見!」
医王くんが私の家に来た。
「どうしたの?」
「これ、今日の試験の問題用紙……ノートに回答書いて提出すればいいって」
医王くんが今日の試験の問題用紙をくれた。
「あ、でもカンニング防止するからね……教科書とか他の教材預かっておくから」
医王くんは、今日の試験の教材を隠した。
「タイマー50分にセットしておく……鳴ったら来るから」
医王くんは、私の部屋を出て行った。今、父も仕事で家にいない。家の郵便受けに合鍵が数個あるけど、それで家に入ったのだろうか。
 50分後。
ーーピピピピ! ピピピピ! ピピピピ!
最初の科目の試験が終わった。かなり疲れた。座学なのにかなり体力を消耗する。頭使うからなのだろうか。
「夢見……終わった?」
「うん……1科目だけだけど……」
「じゃあ、15分後に次の科目ね!」
医王くんが私の試験監督になってくれる。
 定期試験1日目終了後。
「これで今日分は終わりだね……」
「明日も来る?」
「夢見が学校来なかったら来るよ」
医王くんは私が回答を書いたノートを持って帰って行った。後で知るのだが、これは定期試験中に医王くんが担当教師に質問したらしい。承諾をしてくれたことがすごい。
 私は献身的に医王くんがサポートしてくれるおかげで学校生活を送れている。そして、なんだか他の感情が芽生え始めていた。医王くんの声や動きの一つひとつが魅力的というかキラキラのエフェクトで編集されたように見える。そして、胸がロープで締め付けられたり、ときめいたりする。時々、心拍数が急上昇して汗かいてしまうぐらいになることもあるけど。この上手く言葉で説明できない感情ってなんだろう。ちょっとだけ、この感情を医王くんにぶつけてみようかな。
 数日後。いつもサポートしている医王くんは、疲労が溜まっている。私のために献身的にしてくれるのは有り難いけど、時には自分の休む時間が必要だと思う。私は疲労回復の飲み物を登校途中に買ってきた。そのために今日はあえて医王くんと一緒に登校しなかった。午前中寝ていて目が覚めたの午後1時ぐらいだった。私は医王くんの席に飲み物と置き手紙を置いた。医王くんは今、歯を磨きに洗面所に向かったから教室には居ない。
 十数分後。医王くんが戻ってきた。すると机上の飲み物に気づいた。置き手紙を見て1回私の方を見たけど、なにも言わなかった。何も言わずにその飲み物を飲んでくれた。
「なんか、疲れが取れたような気がする……」
医王くんが呟く。
 下校時、公園のベンチ。私は医王くんの将来の夢について聞いてみた。
「医王くんは将来の夢とかあるの?」
と。医王くんは考え込み
「そうだな…….無償で治療するボランティア医師になろうかな?」
と。言った。
「お金貰わなくていいの?」
「今は物価高だし、治療費払えなくて病院に行けない人もいるわけだし……そういう人たちを助けてあげたいんだ」
医王くんは続けて
「別に父が医者を継がなくていいなら、それでもいいかなって」
「何を専門にするの?」
「父と同じ神経内科にするよ……」
と。話してくれた。私は医王くんの肩に頭を乗せる。
「夢見? もうそろそろ帰らないと……」
「もう少しだけ……このままで居させて……」
医王くんは、そろそろ帰ろうとしていたから、食い止めた。少しでも一緒にいる時間を延ばしたかった。私が『もう少しだけ……このままで居させて……』って言うと、黙ってくれた。医王くんの温もりが、睡魔を誘ってくる。
《創馬……くん》
私は心の中で医王くんを下の名前で呼んでみる。
《創馬くん……創馬くん》
私の心の声は医王くんに聞こえているだろうか。
「眠ちゃったか? 担いで家まで送るか……」
医王くんは、私が眠ったのに気付いた。私の頭をゆっくり下ろして、お姫様抱っこで家まで送ってくれた。
《また、疲労が蓄積されちゃったかな?》
私は不安だったけど、拒否せず私のサポートに回ってくれるから、そこはまた医王くんの優しいところ。この気持ちって『恋』ってことなのかな?
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