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第4章:創馬のサポート【創馬side】
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俺の名は、医王創馬。苗字が医王だから、医者家庭の子だと思われるだろう。おおむね間違えていない。俺の父、医王健一は神経内科だし、母はほとんど家にいないけど海外とかで医者として活躍している。よく医者家庭の子に産まれると
「自分の病院を継がせよう!」
って言われるのをよく耳にするが、俺の父は
「別に、俺の後を継ごうと考えなくていい……自分の生きたいように人生を生きろ」
とのこと。つまり、病院を継がなくていいってことだった。医者家庭なんだから、医者になるのが当然だと答える家庭じゃなかった。
俺は高校に入学した。僻地にある高校だった。ちょっと校門までの経路が困難だが、慣れてしまえばこっちのものだ。俺の通う高校は夢見ヶ丘高等学校。高校に入学して数ヶ月経った頃だろうか。1人の女子生徒が転校してきた。夢見夢香っていう名の女の子。俺の席がちょうど空席だったから、俺の隣に座ることになった。俺はその日夢見がミステリアスな感じだった。夢見は、なぜか授業中に何度も寝てしまう。目にクマがあるわけでも無いし、睡魔が襲っている気配もない。あと、中々起きない。そして、俺が話していないことや行ったところのない話までする。けど、俺は夢見が母親の死で苦しんでいるのは、知ってしまう。また暗い顔をさせてはいけない。そう思ってしまう。だから、夢見と話した記憶がない話をまた一からして、行ったところのないところは週末に行くように提案した。そしたら夢見は
「夢なのかもしれない……」
と。呟いていた。俺は午後の授業はその言葉が引っかかっていた。授業を聞いている態度だったが一言一句頭に入らなかった。
夜、医王家。リビング。父は今日も定時で上がりビールを片手にテレビを見ていた。
「お父さん、電話当番でしょ? 酒飲んで大丈夫なの?」
「今日は電話当番は別の人がやってくれてるから!」
父はテレビのリモコンでチャンネルをコロコロ変えている。
「そういや、お父さんに話してないんだけど……俺のクラスに転校生が来たんだよ」
「それで?」
「その転校生……よく寝てしまうんだけど、お父さん知らない?」
俺は父に夢見と今までの話をした。父は俺の話を黙って聞いてくれた。すると
「それってクライネ・レビン症候群じゃないか?」
と。俺は首を傾げる。
「クライネ……なんて?」
「クライネ・レビン症候群……『眠れる森の美女症候群』って言えば分かりやすいか?」
父が真面目な顔でそう言った。眠れる森の美女症候群……なんかイメージできた。
「これはね、脳の、特に『眠り』や『食欲』なんかのスイッチを管理している部分が、一時的に、だけどものすごく大きく狂っちゃう病気なんだ」
「例えるなら、そうだな……いつも使ってるスマホの電源ボタンが、急に壊れて押しっぱなしになったり、逆に全然反応しなくなったりするような感じかな……しかも、それがいつ治るか分からない……ものすごい勢いで電池を食って、ほとんどの時間を眠って過ごす……でも、ただの居眠りとか、疲れてるのとは違うんだ」
「眠ってる間も、夢を見たり、時には目を覚まして少し食事をとったりはできる……でも、またすぐに深い眠りに引き戻されちゃう……まるで夢の世界に囚われているみたいにね」
「だから、本人が怠けてるわけじゃない……むしろ、眠りたくないのに、体が勝手に眠りに入っちゃう……とてもつらい状態なんだよ……食欲もおかしくなったりする人もいるし、起きてる間もぼーっとしたり、いつもと違う言動が出たりすることもある……発作みたいなもので、治まると一時的に元の生活に戻れるんだけど、またいつ眠りの発作が来るかわからない……それが、この病気の難しいところなんだ」
「だから創馬、その転校生が眠っていても、決して彼女が悪いわけじゃない……転校生の体が、今、病気と一生懸命戦ってる証拠なんだよ」
と。教えてくれた。
「治療法はあるの?」
「今のところ、まだ確立されていない……稀な病気だからな……献身的にサポートすることだな」
父が答える。俺は早速行動に移した。
授業中。
「じゃあ、ここテストに出るからな……消すぞ?」
「先生! スマホで写真撮って保存してもいいですか?」
「ああ、いいぞ?」
俺は教室の真ん中に立って写真を撮った。今、夢見は保健室で眠っている。勉強できるようにスマホで写真撮っている。
休み時間。
「川村、ノート見せてくれない?」
「なんで?」
「ノートまとめるの上手いじゃん?」
「まぁ、そうだけどなんで?」
「すぐ返すから、書き写させて!」
「分かった……」
俺は川村からノートを借りて、書き写す。俺はそういう手段をしながら、夢見をサポートして行った。
「自分の病院を継がせよう!」
って言われるのをよく耳にするが、俺の父は
「別に、俺の後を継ごうと考えなくていい……自分の生きたいように人生を生きろ」
とのこと。つまり、病院を継がなくていいってことだった。医者家庭なんだから、医者になるのが当然だと答える家庭じゃなかった。
俺は高校に入学した。僻地にある高校だった。ちょっと校門までの経路が困難だが、慣れてしまえばこっちのものだ。俺の通う高校は夢見ヶ丘高等学校。高校に入学して数ヶ月経った頃だろうか。1人の女子生徒が転校してきた。夢見夢香っていう名の女の子。俺の席がちょうど空席だったから、俺の隣に座ることになった。俺はその日夢見がミステリアスな感じだった。夢見は、なぜか授業中に何度も寝てしまう。目にクマがあるわけでも無いし、睡魔が襲っている気配もない。あと、中々起きない。そして、俺が話していないことや行ったところのない話までする。けど、俺は夢見が母親の死で苦しんでいるのは、知ってしまう。また暗い顔をさせてはいけない。そう思ってしまう。だから、夢見と話した記憶がない話をまた一からして、行ったところのないところは週末に行くように提案した。そしたら夢見は
「夢なのかもしれない……」
と。呟いていた。俺は午後の授業はその言葉が引っかかっていた。授業を聞いている態度だったが一言一句頭に入らなかった。
夜、医王家。リビング。父は今日も定時で上がりビールを片手にテレビを見ていた。
「お父さん、電話当番でしょ? 酒飲んで大丈夫なの?」
「今日は電話当番は別の人がやってくれてるから!」
父はテレビのリモコンでチャンネルをコロコロ変えている。
「そういや、お父さんに話してないんだけど……俺のクラスに転校生が来たんだよ」
「それで?」
「その転校生……よく寝てしまうんだけど、お父さん知らない?」
俺は父に夢見と今までの話をした。父は俺の話を黙って聞いてくれた。すると
「それってクライネ・レビン症候群じゃないか?」
と。俺は首を傾げる。
「クライネ……なんて?」
「クライネ・レビン症候群……『眠れる森の美女症候群』って言えば分かりやすいか?」
父が真面目な顔でそう言った。眠れる森の美女症候群……なんかイメージできた。
「これはね、脳の、特に『眠り』や『食欲』なんかのスイッチを管理している部分が、一時的に、だけどものすごく大きく狂っちゃう病気なんだ」
「例えるなら、そうだな……いつも使ってるスマホの電源ボタンが、急に壊れて押しっぱなしになったり、逆に全然反応しなくなったりするような感じかな……しかも、それがいつ治るか分からない……ものすごい勢いで電池を食って、ほとんどの時間を眠って過ごす……でも、ただの居眠りとか、疲れてるのとは違うんだ」
「眠ってる間も、夢を見たり、時には目を覚まして少し食事をとったりはできる……でも、またすぐに深い眠りに引き戻されちゃう……まるで夢の世界に囚われているみたいにね」
「だから、本人が怠けてるわけじゃない……むしろ、眠りたくないのに、体が勝手に眠りに入っちゃう……とてもつらい状態なんだよ……食欲もおかしくなったりする人もいるし、起きてる間もぼーっとしたり、いつもと違う言動が出たりすることもある……発作みたいなもので、治まると一時的に元の生活に戻れるんだけど、またいつ眠りの発作が来るかわからない……それが、この病気の難しいところなんだ」
「だから創馬、その転校生が眠っていても、決して彼女が悪いわけじゃない……転校生の体が、今、病気と一生懸命戦ってる証拠なんだよ」
と。教えてくれた。
「治療法はあるの?」
「今のところ、まだ確立されていない……稀な病気だからな……献身的にサポートすることだな」
父が答える。俺は早速行動に移した。
授業中。
「じゃあ、ここテストに出るからな……消すぞ?」
「先生! スマホで写真撮って保存してもいいですか?」
「ああ、いいぞ?」
俺は教室の真ん中に立って写真を撮った。今、夢見は保健室で眠っている。勉強できるようにスマホで写真撮っている。
休み時間。
「川村、ノート見せてくれない?」
「なんで?」
「ノートまとめるの上手いじゃん?」
「まぁ、そうだけどなんで?」
「すぐ返すから、書き写させて!」
「分かった……」
俺は川村からノートを借りて、書き写す。俺はそういう手段をしながら、夢見をサポートして行った。
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