死神代理人

古波蔵くう

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Last Episode

〈7〉死神処刑裁判【天乃side】

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 死神界。我が死神界に戻ると、死神の一人 霊仙駿輔れいせんしゅんすけが拘束する。
「しゅ……駿輔!離してよ!」
我は駿輔に離すよう促すが聞く耳を持たなかった。
「獅子王様、被告神が戻って参りました……」
駿輔が獅子王様を呼ぶ。
「よし!じゃあ始めよう! 獅子王猛ししおうたける式裁判だ!」
獅子王様が裁判を始めると、死神達は歓声をあげる。
「被告神、龍神天乃!前へ」
獅子王が指示する。我は容疑者ならぬ容疑神みたいだ。
「弁護神、駿輔!彼女はどんな罪を犯した?」
獅子王様が勝手に弁護神を付けられた駿輔に罪を聞き出す。
「えー、彼女は死神界の法律第十一万四千五百十四条『死神が代理人を作るのはご法度』を破っております」
駿輔は我が法律違反したと主張。
「そんな法律、聞いたことないんですけど?」
我は裁判神、獅子王様に叫ぶ。
「死神は自分自身で人の命を奪うものだ!その奪う人を死に追い込むようなやつを雇ってはいけない!」
獅子王はその法律を説明する。
「……っ」
我は何も言い返せなかった。
「では、獅子王裁判神……判決を!」
駿輔は元いた位置に戻る。
「判決を下す!被告神、龍神天乃は処刑!」
獅子王様が我を死刑と言い渡した。すると我は足をロープ状な物で巻かれ逆さまに吊り上げられた。
「今から貴様の寿命を吸い取る!」
獅子王様は我の身に着けていたもの全て剥がし、ヘッドドレスを奪う。
「ほぅ、三人分か……新入りの死神としてはよくやったもんだなあ」
獅子王は我のヘッドドレスから一年ずつ寿命を吸い取る。我の寿命が残り一年になる頃、
「ちょーっと待ったー!」
一人の死神が法廷に入ってきた。
「なんだ貴様は!」
獅子王が突然乱入した死神に怒鳴る。
「獅子王様?まだ被告神が残っていますよ?」
死神が獅子王様に伝える。
《あの声……どこかで聞いたような……》
我はこの乱入した死神が誰か分かった。
「被告神なら、今吊り上げられたこいつだ!」
獅子王は我を指さす。すると、死神はケープコートを脱ぐ。
「代理人の裁判が終わってないでしょ?」
その死神の正体は、毒島だった。
「貴様!どんなして入った?」
獅子王様が聞く。
「これ使った」
毒島は我の鎌の刃の一部を盗っていた。
「刃こぼれしてるから」
毒島は刃の一部を獅子王様に見せつける。
「だが、貴様人間が来たところで俺様の気分と判決は変わらない!そうだな、この判決を変えたちゃ……俺様に貴様相応の物を頂かないとな?」
獅子王様が毒島に問いかける。
「ならば、俺の魂を与えます……それで見逃してくれないでしょうか?」
毒島は自分の魂を獅子王様に売ることにした。
「フフッ!良かろう……では貴様の魂と引き換えにこいつを無罪にしてやろう!」
獅子王が我を解放する。
「いえ、無罪だけではなく……彼女を人間界に返してください!」
毒島は我を人間界に返すよう指示する。
「何故だ?こいつは死神だろう?」
獅子王は疑問を浮かべる。
「彼女が人間界に居たら、俺の魂と同化するからです……」
毒島は我を人間界に戻して自分の命と我の命と同化するみたいだ。
「まぁ、それ相応の品を頂くわけだし……少しの希望を聞いてやろう」
獅子王は判決を出す。
「人間界の民により、被告神龍神天乃を無罪及び死神界追放とする!」
我はゲートに投げ込まれた。
 人間界。我は目が覚めると、死神に会う前に戻っていた。我の手には一通の手紙が握られていた。送った人の名は、毒島待雪と書かれていた。手紙の内容は
『天乃……君のことが好きだ』
の一言と、学ランのボタンに紙が貼られていた。そこには
『第二ボタン』
と、書かれていた。
~完~
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