〜甘い結晶と二人の未来〜

古波蔵くう

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エピローグ:新しい未来

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 季節は巡り、物語から一年後の春。真斗と静香が立ち上げた『想い出キャンディ同好会』は、その活動と実績が認められ、ついに正式な『想い出キャンディ部』へと昇格した。顧問には引き続き三谷先生が就き、部室である家庭科室の調理室は、新入部員たちの明るい声と、甘く香ばしいキャンディの匂いで満ち溢れている。
 俺は部長として、最初は戸惑いながらも、静香と共に新入部員たちにキャンディ作りの基本を丁寧に教えている。俺の手つきは以前にも増して迷いがなく、その瞳には自信と、部への深い愛情が宿っている。
静香は、副部長として俺を支え、持ち前のデザインセンスと細やかな気配りで部を盛り上げている。静香の顔には、過去のいじめによる影はもう一切見られない。新入生たちからの『スイート・シュガー先輩』という呼びかけにも、以前のような戸惑いはなく、はにかみながらも満面の笑みで応えている。教室の机には、もう誰かの悪意のこもった落書きはなく、代わりに部員たちが描いたキャンディのイラストや感謝のメッセージが貼られている。
 ある日の放課後、部活終わりに俺と静香は、二人きりになった部室で窓から夕焼けを眺めていた。俺が静かに、二人で初めて作ったあのハート型のキャンディの小さな欠片を静香の手のひらにそっと乗せる。「あの時、これを君に渡すのが精一杯だった……でも、今は……」
俺が言葉を選びながら言うと、静香は彼の顔を見上げ、優しく微笑む。
「うん……今は、隣にいるのが当たり前だもんね」
静香は、そのキャンディの欠片を握りしめながら、自身の過去を振り返る。あの絶望の淵から救い出してくれた俺の存在、そして共にキャンディを作り、未来を信じて歩んできた日々に感謝の気持ちが溢れる。もう、過去のいじめや傷は、彼女を縛り付けるものではない。それは、俺という光を見つけるための、甘くほろ苦いの一部となっていた。
二人は、これからも部員たちと共に新しいキャンディを作り、たくさんの『想い出』を紡いでいくことを誓い合う。そして、手を取り合い、甘い未来へと歩み出す二人の輝く笑顔になる。
ー完ー
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