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第5章"青春の恋"

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 文化祭当日。今日から2日間、俺の学校で文化祭が行われた。俺らのクラス、1年4組はお化け屋敷風のカフェをした。従業員、受付、全員好きなお化けのコスプレをした。だが、俺だけは選択権は無くて、陽子姉と同じコスプレをするよう言われた。血まみれのメイド服だった。そのせいで、同級生や先輩、一般人に嫌というほど嘲笑われた。
 後夜祭。2日目の夕方から後夜祭が始まった。コントやダンス、演奏などを行う。そして、この後夜祭のメインイベントは『ミス・ミスター』だ。この全校生徒の中で、誰が一番可愛いか、かっこいいかを決める。ミスは女子のみ、ミスターは男子のみと決められている。今のジェンダーの時代では、差別に近い気もするが。そして、見事ミスに選ばれたのは1年生の堕悪結希だあくゆいだった。俺の通っていた中学校で3年間同じクラスだった。
 後夜祭終了後。陽子姉はすぐに帰ってしまった。すると、堕悪が
「明くん! ちょっとこっち来て!」
小声で、俺を呼ぶ。堕悪に連れて来られたのは、校舎のピロティだった。堕悪は俺に真剣な眼差しを向け
「明くん……これ、受け取ってください!」
と。ハートのシールが付いた封筒を俺に差し出す。俺は受け取った。
「返事、待っているから……」
堕悪はそう言い残すと、去っていった。俺は盛り上がる生徒たちを横目に、帰宅した。
 神楽谷家。家に帰ると、陽子姉はシャワーを浴びていた。俺は居間に腰を下ろして、机の上で堕悪から受け取った手紙を開く。
《To明くん
 明くん? 覚えているかな? 中学生の時ずっと同じクラスだった堕悪結希だよ! 今回手紙を書いたのは、僕の気持ちを伝えようと思い書きました。でも、口では言いにくいので、手紙で伝えようと思います。明くん、良ければ僕と付き合ってください!
お返事、待っています
From堕悪結希》
告白の手紙だった。
「初めて、告白された……いや、ハートのシールで大体予想してたけど……」
俺はいろんな感情が入り混じり、何を言えばいいのか分かんなかった。便箋の右下角に何か書いてあった。
《僕と付き合うからには、陽子に近づからないこと!》
と。堕悪は俺と陽子姉が姉弟だってことを知らないみたいだ。すると、次の瞬間後ろに気配を感じる。そして、人差し指で頬を突っつかれた。誰か分かる。陽子姉だ。
「なぁに、見てるのー?」
俺らの家族は風呂でのぼせてしまうと泥酔状態になってしまう。寝れば治るけど。
「ふぇ、ふぇつににゃにも……」
俺は陽子姉に、人差し指で頬を押されグリグリ押し込めているせいでうまく発音できない。俺は、ラブレターをジャージのポケットにしまう。
「さっき、ポケットに隠したもの見せてよー」
陽子姉に、両肩掴まれた。
「別に、見せなくてもいいだろ?」
俺は見世物になるほどのものではない。ラブレターなど。すると、陽子姉は俺を床に叩きつけ、覆い被さる。逃げられない。
「これで、姉ちゃんから逃げられないよー」
陽子姉は、何か良からぬ事を考えているかのように、不気味な微笑みを浮かべる。俺は姉弟ならではの、回避方法を言う。
「陽子姉、俺から退いてくれ……じゃないとおっぱい触るぞ?」
俺は陽子姉に、言う。俺と陽子姉は血の繋がった姉弟。体の触り合いなんて、してもいいんだ。今、陽子姉はバスタオル姿だ。
「触りたいなら、いくらでも触らせてあげる!」
陽子姉は、巻いていたバスタオルを取る。俺は端からそんな気はないので、人並みはずれた腕力で陽子姉の頬を一発叩いた。陽子姉は吹っ飛ばされ、仰向け状態で気を失っている。俺は、陽子姉にさっきまで使っていたバスタオルを被せ、ジャージを置いて、2階へ行った。
ーー俺は、陽子姉の裸なんて見ていない。DからEぐらいあるおっぱいとか、パイパンのまんことか。見ていない!いいな!
俺は、自分に言い聞かせる。なんで、こんな鮮明に覚えているのか分からない。
 夏休み中、ファーストフード店。俺は陽子姉に
「俺、好きな人から告白されたからデートの練習がしたい! つきあってくれない?」
と。お願いした。陽子姉は
「いいよ、姉弟のお出かけもはじめてかも!」
と。話していた。陽子姉は薄い白の袖なしワンピースと、麦わら帽子をか被っている。
「陽子姉、実際のデートでどんなことを話せばいいかな?」
俺は陽子姉に話す。
「普段通りの会話で大丈夫だよ。でも、もし何か質問があったら教えてね」
陽子姉は教えてくれる。
「そうだね、でも、なんか特別なことを話した方がいいんじゃないかって思ってさ……」
俺は恋人なんだから、特別なことを話した方が良いんじゃないかと思った。
「特別なこと? 何か考えてることがあるの?」
陽子姉が問いかける。なぜか、その仕草が俺は可愛く思える。
「いや、特に……ただ、陽子といると、なんか普通じゃないんだよね」
俺は照れくさそうに言った。それと、言ってることが自分でも分かんなかった。何を言ってるんだ?俺は。
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