〜比嘉一維の事件簿〜 『宜野湾女児監禁事件編』

序章

事件の概要

　この事件は、『小６女児拉致殺人事件』から、十数年経った後の出来事。脇川月那わきがわるなさん、当時11歳の女の子が、照屋仁一真てるやにいまという男に誘拐され、6年もの間監禁されたんです。彼は当時、ギャンブル依存に陥っていて、生活費をパチンコで溶かしていた。
　宜野湾市にあるパチンコ店。
《７のマークが２つ出た！　後もう１回７が来たら……》
仁一真がパチンコの画面を舐め回すように凝視する。
《あーくそっ！　ココナッツの木かよ！　これで全敗だ》
仁一真は、今月のお金を全てパチンコで擦って無くなった。仁一真は、ある金融から200万借りた。
　１ヶ月後。
ーーピンポーン！
彼の家のインターホンがなる。彼が扉を開けると、黒いスーツにサングラス掛けた怖いお兄さん数人が立っていた。
「借金の取り立てに来た……200万返せ！」
怖いお兄さん数人の内、１人がそう言った。
「もう少し、待ってくれ！」
彼は待って欲しいと言う。
「また来月来る……次は手数料込みで来るからな！」
怖いお兄さん数人は去っていった。そして、その怖いお兄さんたちは、毎月仁一真に手数料込みの取り立てに来て、挙げ句の果てに脅しまで働いた。
「金返せねぇなら、マグロ漁船に乗せてやる」
や
「警察に通報しても無駄だ！　警察と手組んでるから逮捕されるのは……お前だ！」
など、彼は徐々に精神が削られて、すぐにお金を稼げる方法は無いかと、刑務所にいる従兄いとこの日南人ひなとに聞いた。
「ひな兄ニーニー……俺、金が無くて、次金返せなかったら、マグロ漁船に乗せられる……金稼ぐ方法ないか？」
と。聞く。
「来週また来てくれないか？　今書き物が無いからさ……」
日南人はそう言った。
「分かった」
仁一真は面会を終了させる。
　沖縄刑務所、雑居房。雑居房には、日南人の他に、砂川桂史郎すながわけいしろう、城間一蔵しろまいちぞう、仲村明悟なかむらあきごがいた。前回の『小６女児拉致殺人事件』の共犯者だ。
「俺の従弟いとこが金に困っているからさ、１週間の刑務作業のお金を分け与えて欲しい……金はこれに挟め！」
日南人は薄い本を開く。桂史郎、一蔵、明悟は同意した。
　１週間後。仁一真が面会に来た。
「金稼ぐ方法を書いた紙は？」
「これに書いた……」
日南人が紙を差し出そうとすると
「待て！」
面会室にいる警察官が手紙を取り上げて
「怪しいもの書いてないか、チェックする」
警察官は手紙を開け、内容を確認する。
「……特に怪しいものは書いてないな！」
警察は手紙を元に戻し、机に置く。すると、日南人は彼に『耳を貸せ』と合図する。彼は耳を澄ますと
「頭文字を縦読みしたら、分かる」
と言った。すると、面会終了となり、日南人は面会室を出て行った。
「面会人と耳を澄ましていたが、何を語った？」
「従兄弟いとこ間の秘密だから……」
日南人がそう言うと、警察官はそれ以上聞かなかった。
　仁一真家。彼は手紙を開くと、次の内容が書いてあった。
『従弟の仁一真へ
ジョージアの風景を思い出す
字幕を追いながら、君と一緒に旅した日々
を
ユニークで
迂回して
カレーの味を思い出して
異彩を放つ
シートを使って
ろ過する新しい方法を学んだんだ。
　何か面白いことがあったら教えてくれ。シャバの話を聞くのが、ここでの唯一の楽しみなんだ
また手紙を書くよ。
照屋日南人』
と文章の並びは変だが普通だった。そして『頭文字を縦読みしろ』と言われたため、頭文字を縦読みした。すると
『ジョ字をユ迂カ異シろ』
となる。正しい字に直すと
『女児を誘拐しろ』
となる。
《女児を誘拐……日南人兄が前に起こした事件か……金融から借りた金あるし、早速やるか》
彼は、部屋の改築、必要なもの購入、サブスクの会員登録などを揃えた。これが、彼が犯罪に手を染める瞬間である。