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何度目かの失恋

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【三月一日】


別れは何の前触れもなくやってきた


幸せだった日々は、そう長くは続かない

神様は意地悪なの



「別れよ」



貴方のそのたった一言で、私たち他人になるの



「………え?」



私は頭が真っ白になった

思わず作業する手が止まる



「…………なんで?」



心臓がうるさい

指先が冷たい

目頭が熱い



「ねぇ……なんで…?」



私は思わず彼の方を振り向いた

混乱する私とは裏腹に、彼は驚くほどに冷静だった



「………めんどくさいんだよ、お前」



その一言にズキっと胸が痛む

息が出来なくなりそうになる


嘘だ、そんなの嘘だ

だって、私たち、約束したじゃん



「…結婚したいねって…」

「…一生愛してるよって、言って、くれたじゃん…」



私は涙をぐっと堪えて彼に近づいた

震える声で、縋るように彼の目を見る



「はぁ……お前のそういうとこがめんどくさいんだよ」

「…」



私は何も言えなかった

引き止めることさえも出来なかった

ただ下を向いて、彼が部屋から去る音を聞いていた



「………嘘つき」



出来もしない口約束

思ってもない綺麗事


私はその言葉を信じて傍にいた

いつか結婚できるかな、なんて淡い夢を描いてた


散々期待させておいたくせに

散々優しくしてくれたくせに

散々惚れさせておいたくせに

貴方はこんなにも簡単に私を捨てるのね



「……嘘つき…っ…」



ずっと一緒だよって、言ってくれたのに

ずっと好きだよって、言ってくれたのに

君だけだよって

特別だよって

愛してるよって

結婚しようって



「そう…言ってくれたのに……」



あの言葉は全部全部全部…



「嘘…だったの…?」
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