異世界怖い話

メタボ戦士

文字の大きさ
6 / 6

アイテムボックス

しおりを挟む
「フフッ···これで完璧ね」
 
 鏡に映る自分の顔をじっと見つめる。

 醜いオークのような容姿は、魔法で少しだけ修正している。

 それでも、リュートの心を射止めるには程遠いだろう。

 でもこれで十分だ。

 だってリュートの心だけでなく、体を独り占めにするつもりなのだから。

「アイテムボックス····」

 魔法の言葉を呟き、鏡の前に置かれた小さな箱に手を伸ばす。

 ……この箱は私の秘密の宝箱。

 中に閉じ込められたら、二度と外に出ることはできない。

 永遠に私だけのものになる。


 リュートへの想いは、日に日に募っていた。

 優しい彼に振り向いてもらいたい。

 でも他の女達も彼を好きで·····
 
 だったら私が彼を独り占めしてしまえばいいじゃない。
 
 計画はこうだ。 

 パーティーで洞窟を探検する時、皆をアイテムボックスの中に閉じ込めてしまう。

 そしてリュートだけを特別扱いして、永遠に一緒にいよう。


♢♢

「皆、準備はいいか?」
 
 リュートが声をかけ、パーティーメンバーは頷いた。

 私はリュートの後ろにぴったりとくっついて、彼の温もりを感じながら洞窟へと進んでいく。

 洞窟の中は薄暗い。

 懐中電灯の光が石壁に影を落として、不気味な雰囲気を醸し出していた。

「ここら辺で休憩しよう」
 
 リュートがそう言うと、皆は岩陰に腰を下ろした。

 私はリュートの隣に座り、彼の腕にそっと触れた。

 リュートはいつものように優しい笑顔で見てくれる。

「ラミィーナ、今日はいつもより可愛いね」

「ありがとう、嬉しい。」

 リュートの言葉に心が踊った。 
 
 でもすぐに冷静さを取り戻す。

 もうすぐ計画は実行される。

「リュート、ちょっと話があるんだけど····」

 私はリュートを少し離れた場所に呼び出した。

 そして魔法の言葉を唱え、アイテムボックスを開いた。

「リュート、ここに来て」
 
 私はアイテムボックスの中を指さして言った。

 リュートは少し不思議そうにしてたが、言うことを信じてアイテムボックスの中へと足を踏み入れた。

 その瞬間、私は魔法の言葉を唱えてアイテムボックスの蓋を閉じた。

「これであなたは私だけのものよ」

 アイテムボックスに向かって微笑んだ。

 
♢♢

 アイテムボックスの中は、真っ暗だった。

 リュートはパニックになりながら、必死に外に出ようとした。

「ラミィーナ!なんでこんなことをするんだ!」
 
 リュートの叫び声が、アイテムボックスの中で響き渡る。

 でも私は聞く耳を持たない。

「だって、あなたを他の誰かに渡したくなかったから」

 私はアイテムボックスの外から、そう呟いた。
 
「お願いだから、出してくれ!他のメンバーもまだ中に入ってるんだ!」
  
 リュートの言葉に少しだけ心が揺れた。   

 でもすぐにその気持ちは消え去った。

「ごめんね、リュート。でもあなたは私だけのものなの」
 
 アイテムボックスに顔を近づけ、彼の名前を呼んだ。

「········ラミィーナ。」

「永遠に、一緒にいようね」

 私はアイテムボックスにキスをして、その場を離れた。


♢♢

 それからというもの、私は毎日アイテムボックスに話しかけるようになった。

「リュート、今日の夕飯はあなたが好きなスープを作ったのよ」

「················」

「リュート、新しい本を読んだんだけど、面白いからあなたにも聞かせたいわ」

「·················」

 でもリュートからの返事はない。

 私はただ一人、アイテムボックスに向かって話し続けるだけだった。

 私は、リュートを永遠に独り占めした。

 でもその代償は大きすぎた。
  
 私は誰からも必要とされない存在になってしまった。
 
 ある日、私はアイテムボックスの前に座り込んで涙を流した。

「ごめんね、リュート。こんなことになってしまって…」

 アイテムボックスに向かって謝った。

 でも私の心は永遠に満たされることはなかった。
 
 終わり
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...