異世界少女は仮想世界で夢を見る

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閑話7 運営さんは話し合い

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 キィと鳴って開き、パタンと音を立てて閉まる。
 いつもこんな音をしていたかと思うほどに、情けない音を引き連れて部署に戻る。

「ふう」

 自席についたところで自然と溜息がもれる。
 今日の会議は疲れた。とんでもなく疲れた。

 会議には二種類ある。
 問題を話し合うための会議と、情報を共有するための会議だ。
 問題を話し合うための会議はまっとうな会議だ。会って議論する。問題点を話し合い、それぞれの役割を決めるものだ。
 情報を共有するための会議は、最近はではメールやファイル共有に変えられることが多い。それでも、資料を読んだだけでは分かり難い専門的な情報は、会議で共有されることがある。会議中、ずっと会議室に拘束されるのが厄介だが、必要なことだ。

 今日の会議は話し合うための会議だった。
 話し合いには情報が必要だ。何が起こって、どういう問題が発生したのか。そこから最善の方法を話し合う。理想と、それに必要な時間、コストから、次善の解決策を選ぶことも少なくない。
 だが、今日の会議では、元となる情報が曖昧すぎて、まともな話し合いにはならなかった。意味不明な言葉を聞くために、時間を無駄にした気分だ。

「班長~。会議どうでした?」
「よくわからん」

 だから、部下からの質問にも、おざなりな答えになってしまう。

「なんすか、それ」

 もう一度、聞かれて、今度は少し頭を整理しながら話す。

「本当にな。なんだったんだろうな。……いや、開発チームからな、またリソースが足りないって話が出たんだよ」
「え、リソースって、サーバーは増やしたばっかじゃなかったっすか」
「そうだ。プレイヤーが街を作ったからな。それでリソースが足りなくなるっていうんで、サーバーは増やした。それで、見積もりが甘かったのか、って聞いたらな」
「ええ」
「サーバーの話じゃないって言うんだ」

 なんとなく、会議の資料を開いてみるが、そこに開発チームの資料はない。あの野郎、資料も出さずに口答だけで済ませやがった。

「じゃあなんなんっすか」
「それが、よくわからん。開発チームが足りないのかと聞いても違うというし、開発マシンのスペックが足りないのかと聞いても違うというし、最後にはユーザー数を増やせと言ってきてな」
「なんなんっすか、それ」
「だから、よくわからん。広報チームなんて、増やせと言われて増えるくらいなら誰も苦労はしないと怒ってたぞ」
「そっすよね」

 会議の資料を机の隅に追いやる。
 会議は終わったが、議事録の確認でもう一度みる予定の資料だ。

「開発チームがおかしいのは仕方ないとして、ストーカーの話はどうなったっすか」
「あー、そっちな」

 複数のプレイヤーから、ストーカーだの女性プレイヤーを襲っていただのという通報があった。それだけなら警告して一時凍結、悪質な者はアカウント削除だ。
 だが、調べてみたところ、通報されたのはプレイヤーではなく、開発チームの一人だった。しかも、被害者と目される相手が不正ログインで調査中の相手だった。

 会議では、どこまでの情報をプレイヤーに公開するのか。それとも一切を隠し、アカウント削除をしたように見せかけるのかを決めるはずだった。

「そっちは時間切れだ。次の会議まで調査中にしといてくれ」

 開発チームの意味不明な話だけで、会議の時間が押してしまった。いくつかの議題は次に持ち越しだ。
 会議の時間を延長しようにも、社長と営業チームの班長には次の用事が詰まっていた。

「うへえ。また対応遅いって掲示板に書かれるっすよ」
「仕方ないだろう。遅いんだから」

 開き直りと言わば言え、今日はもう疲れた。
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