[完結]加護持ち令嬢は聞いてはおりません

夏見颯一

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8,やっと本題

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 どこから話が伝わったのか、次の日の話し合いにジョエル神官長と聖騎士ハルト様が立ち会われることになりました。

 私は思わず信頼など底辺に落ちきっている兄を振り返りました。
「今回は私じゃない!」
 前科がありすぎるのですよ、前科が。
「私共はオラージュ公爵から頼まれました。貴方が本物のフルレット侯爵令嬢であることは、我々が保証いたします。ハルト殿は私の護衛と、万が一のためです」
 親だけでなく明らかな権力にも保証して貰うのですか。
 私的には相手から話を聞くだけのつもりでしたが、なかなか大きなことになってきた気がします。

「ヴィンレー伯爵、お久しぶりですね」
 既に応接間で待たせていたヴィンレー伯爵夫妻と私の婚約者と思しき方は、父と私の他に兄とジョエル神官長、聖騎士のハルト様が一緒に入ってきたので、かなり驚いた様子もありながらも立ち上がって、
「はい。フルレット侯爵もお変わりなく……」
 何を話し合うのかは事前にある程度はお聞きになっている筈なのですが、立っているヴィンレー伯爵の目は泳いでますね。
 こちらには別に父以外、威圧感を与えるようなメンバーはおりませんよ?
 一方、婚約者と思しき方は、チラチラ盗み見るように私を見てきますが、とりあえず私はまず父に任せると決めているので無反応で対応します。
 それにしても、婚約者様の顔がいいという話は本当でした。ただ、優秀なのかまではちょっと今のところ分かりません。

 父と私と兄が座って、父はヴィンレー伯爵家の方々にも座ることを促し、
「さて、我々親子は普段から領地に引っ込んでいると知っているだろう? だからどうしても王都での噂話には疎くて、当然王都で多くの人が知っている噂も今の今まで知らなかったんだ」
 指先でトントンと父はテーブルを叩きます。苛々しているときの父の癖で、最近はよく叩いておりますね。
「有名な噂も最近知ってね。それも私の娘、レーニアが既に結婚しているという噂じゃないか。おかしいだろう。うちのレーニアは我々とずっと領地にいるのに、これは一体どういうことだろうか?」

 この話し合いに先だって王城の貴族の戸籍を担当する部署で確認をしましたところ、私は正しくフルレット侯爵家の籍に入っており、未婚のままになっていたので安心いたしました。ただし、婚約に関しては終了して既に結婚した扱いになっていたので、後日父が王城の担当部署に行って経緯を説明し訂正していただくことになっております。
 ええ、実はとても婚約者様達は面倒な事をして下さいました。

 ヴィンレー伯爵夫妻は父と私の顔を交互に見て、婚約者様と思しき方に、
「おいトーラス、どうなっているんだ?」
「貴方、きちんと結婚したのよね?」

 完全に初対面の婚約者様、トーラス様は驚きつつもまじまじと私を見て、
「君は?」
「初めまして。私がフルレット侯爵の娘であるレーニアです。領地にいた私はまだ結婚しておりませんよ」
「そんなわけないだろう! 私はレーニアととっくに結婚している。どう見てもレーニアとは全くの別人じゃないか。お前こそ一体誰なんだ?」
 流れ的にもフルレット侯爵である父横に座っている者が本物の『レーニア』であること明らかなのに、私を別人だと仰いますか。
 ごほんとジョエル神官長が咳払いをしました。
「こちらの女性は正真正銘レーニア・フルレット様です。私、ジョエル神官長、並びに聖騎士ハルトが保証いたします」
 流石に神殿のお二方の名前の力は違いますね。
 事態が呑み込めず怒りだしていたトーラス様も、私の隣にいるお二方の言葉を聞いて段々と魂の抜けた顔になっていきます。怒ったり慌てたり呆然としたりと忙しいことですね。
 父は大げさなくらいのため息をつきました。
「そもそも当主の私は結婚を認める書類など書いていない。それなのに、どうして結婚が成立していると思ったんだ?」
「……私は既に家を出ておりますので、結婚は平民と同じ扱いになる筈です。当主の許可は必要ないでしょう」
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