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狂嵐襲来編
ヘタレクシス
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森の中を進む一行の足音が、枯れ葉を踏みしめる音とともに響く。
朝靄がまだ薄く漂う林の中、冷たい空気が肌を刺す。
鳥のさえずりが遠くから聞こえてくるが、それすらもどこか霞んでいるように感じた。
そんな静寂を破ったのは、陽気な声だった。
「なぁ、サーディス。ずいぶんと"殿下"と仲がいいんだな?」
何気ない調子。
だが、その声音には明らかに面白がるような響きが含まれている。
言葉の主――エルヴァンは、軽やかな足取りのまま、サーディスへと視線を向けた。
その口元には、からかうような笑みが浮かんでいる。
サーディスは、一瞬だけ足を止めかけた。
だが、すぐに何事もなかったかのように歩を進め、視線を前に戻す。
「……どういう意味でしょう?」
努めて平静に、淡々とした口調で問い返す。
しかし――
エルヴァンの笑みは消えない。
むしろ、彼の目がさらに興味深げに細められた。
「いやいや、さっきも聞いてたけどさ。"シス様"なんて親しげな呼び方するんだな、って話さ」
その言葉に、サーディスの手が、無意識のうちに剣の柄へと伸びる。
――別に、怒っているわけではない。
ただ、この話題が続くことを、心のどこかで避けたかった。
沈黙。
どう言い返そうか――そう考えていた時、別の声がそれを遮った。
「その呼び方は、私の身元が広まらないようにするための策だ」
落ち着いた声。
だが、その言葉には、確かな確信が滲んでいた。
エルヴァンは肩をすくめる。
「へぇ、身元隠しねぇ。でも、それにしては随分馴染んでる気がするぜ?」
その軽口を受け、王子は少し考え――そして、穏やかに微笑んだ。
「……まぁ、いろいろと危ないところを助けてもらったからな」
それは、遠回しに"仲の良さ自体は否定しない"という言葉だった。
サーディスは、その一言に一瞬だけ、胸の奥がざわつくのを感じる。
だが――その感情を、すぐに押し殺した。
(これはただの演技だ。身元を隠すため、それだけ……)
そう、自分に言い聞かせる。
エルヴァンは、そんなサーディスの様子を見て、さらに口元を歪めると、王子へと視線を向けた。
「そりゃ、こりゃあいいね。相棒がいる王子様ってのは、なかなか絵になるぜ?」
その軽口に、王子はわずかに苦笑を浮かべる。
サーディスは、それ以上何も言わず、黙って歩を進めるだけだった。
「そういうことなら、俺たちも当面の間は"殿下"じゃなく"シス様"って呼んだ方がいいか?」
それを聞いて、王子はため息混じりに肩をすくめた。
「やめてくれ。お前に"様"付けされると、むず痒くて仕方がない」
エルヴァンは愉快そうに笑った。
「へぇ? 意外と謙虚だな、シス"様"?」
「わざとやっているな?」
「気のせいじゃないかなぁ?」
軽口を叩き合う二人を横目に、サーディスは小さく息を吐いた。
エルヴァンの軽妙な言葉に、王子がそれに応じる形で淡く微笑む。
二人の間に流れる雰囲気は、戦場を潜り抜けてきたとは思えないほど、軽やかだった。
サーディスは何も言わず、ただ前を向いて歩く。
それが彼女の選択だった。
(……これでいい)
周囲に余計な詮索をされるよりも、適当に流されていく方が楽だ。
エルヴァンのような人間は、好奇心の赴くままに踏み込んでくる。
それに真面目に応じていたら、際限がなくなるだけだ。
だから、深入りさせない。
王子がどう思っていようと、エルヴァンがどう受け取ろうと関係ない。
彼女の立場は明確で、それを崩すつもりはない。
それなのに――。
王子がふと漏らした一言。
その言葉が耳に入った瞬間、サーディスの足がほんの一瞬だけ、止まりそうになった。
それは、何気ない一言だった。
ただ、それだけのことなのに――。
ほんの少しだけ、胸の奥が温かくなるのを感じた。
心のどこかに、小さな火が灯ったような感覚。
まるで、今までずっと冷たい風にさらされていた場所に、
わずかな陽だまりが生まれたような。
(……何を考えている)
サーディスは、内心で自分にそう言い聞かせる。
王子の言葉に、特別な意味があるわけではない。
ただの事実の確認に過ぎない。
それなのに――。
その一言を聞いた瞬間に、自分が何を思ったのか。
自分の中に生まれた微かな感情が何なのか。
それを認めるつもりはなかった。
だから、何も言わず、ただ歩き続ける。
口を開けば、余計なことを考えてしまいそうだったから。
エルヴァンが、まだ何か言おうとしているのを感じた。
王子が、それに穏やかに応じるのも分かった。
だが――。
サーディスはただ、足を止めることなく進んだ。
まるで、自分の中に生まれたものを振り払うかのように。
森を進んでいた一行の中で、ゲオルグがふと足を止めた。
「エルヴァン、気を抜きすぎるなよ」
低く、警戒を促すような声。
エルヴァンは肩をすくめ、軽く笑った。
「気は抜いてませんよ、団長。ただ、懐かしくてな」
そう言うと、彼は王子の方へ視線を向けた。
「しかしなぁ、"あのヘタレクシス"が、こんな立派になっちまうとはな……」
一瞬、静寂が落ちた。
「……ヘタレクシス?」
ゲオルグが怪訝そうな声を上げる。
「さすがに不敬すぎるだろ、お前」
その場にいた者たちが、微妙な空気を感じ取る中、サーディスだけが一瞬、固まった。
(……ヘタレクシス……?)
心臓が跳ねる。
しかし、すぐに表情を変えないように必死で抑え込んだ。
「いやいや、俺がつけたわけじゃないですよ」
エルヴァンが慌てて手を振る。
「ねぇ、殿――じゃなかった、"シス"?」
王子は苦笑いを浮かべながら、静かに口を開いた。
「……昔、一度も勝てなかった年下の女の子につけられたあだ名だよ」
サーディスの指先がわずかに震えた。
声を震わせないようにするので精一杯だった。
「ず、ずいぶんと……不敬な、少女ですね……」
なんとか平静を装い、そう言葉を紡ぐ。
ゲオルグは呆れたように笑った。
「ちがいねぇ。とんだ命知らずだな」
エルヴァンも笑いながら続ける。
「まったくな。王子に向かってそんな呼び方する奴がいるとは思わなかったぜ」
しかし、王子は彼らの笑いに混ざることなく、どこか遠くを見るように目を細めた。
「……忘れられない記憶だ」
その静かな言葉に、一瞬だけ空気が変わる。
エルヴァンが気まずそうに頭をかく。
「あー……悪かった。気軽にしていい話じゃなかったな」
王子はふっと笑い、首を横に振った。
「気にするな。もう十年も昔の話だ」
十年も昔。
(……私は、何をやっているんだ)
サーディスは、内心で己を呪った。
"ヘタレクシス"と呼んでいたのは、自分だった。
負けず嫌いな王子が何度挑んでも、勝てなかったあの頃。
悔しそうにしながら、それでも剣を握り直す彼に、からかうようにそう言ったのは――"ミレクシア"だった。
(まさかこんな形で自分の過去が掘り返されるとは……!)
彼の記憶に残るようなことなど、しなければよかったのに――。
「でもまあ、どんな恐れ知らずの少女だったんでしょうねぇ」
エルヴァンがニヤニヤしながら、妙に芝居がかった声で言う。
「王子に"ヘタレ"なんてつけるなんて、大胆不敵にもほどがある!」
「そ、そうですね……!」
サーディスは、全力で同意しながら、内心で叫んだ。
(お前だよ! それを言ったのは十年前のお前だよ!!!)
しかし、それを言えるはずもなく、ただひたすらに無表情を貫いた。
だが、王子はふとサーディスをじっと見つめ――首を傾げた。
「……サーディス」
「な、なんですか?」
「今、一瞬妙に動揺したように見え――」
「気のせいです」
サーディスは、完璧な鉄仮面を装い、即答した。
(気のせいで押し通すしかない!!!)
ゲオルグが苦笑いしながら、肩をすくめる。
「まぁ、いいじゃねぇか。過去の話だろ?」
「ですね! 過去の話です!!!」
サーディスは全力で肯定し、足を速めた。
(これ以上この話題を続けられてはまずい……!)
エルヴァンがクスクス笑いながら、王子に耳打ちする。
「シス、もしかしてサーディスもその少女だったり?」
王子はふっと笑った。
「まさか」
(……まさか、で済んでくれ……!!!)
サーディスは、この場で転がって逃げ出したい衝動を押さえつつ、ひたすら前を向いて歩き続けた。
<あとがき>
ここまで見てくれてありがとうございます!
今回は少しコメディチックでしたがいかかでしたでしょうか?
気に入っていただけたら、お気に入り登録をよろしくお願いします!
朝靄がまだ薄く漂う林の中、冷たい空気が肌を刺す。
鳥のさえずりが遠くから聞こえてくるが、それすらもどこか霞んでいるように感じた。
そんな静寂を破ったのは、陽気な声だった。
「なぁ、サーディス。ずいぶんと"殿下"と仲がいいんだな?」
何気ない調子。
だが、その声音には明らかに面白がるような響きが含まれている。
言葉の主――エルヴァンは、軽やかな足取りのまま、サーディスへと視線を向けた。
その口元には、からかうような笑みが浮かんでいる。
サーディスは、一瞬だけ足を止めかけた。
だが、すぐに何事もなかったかのように歩を進め、視線を前に戻す。
「……どういう意味でしょう?」
努めて平静に、淡々とした口調で問い返す。
しかし――
エルヴァンの笑みは消えない。
むしろ、彼の目がさらに興味深げに細められた。
「いやいや、さっきも聞いてたけどさ。"シス様"なんて親しげな呼び方するんだな、って話さ」
その言葉に、サーディスの手が、無意識のうちに剣の柄へと伸びる。
――別に、怒っているわけではない。
ただ、この話題が続くことを、心のどこかで避けたかった。
沈黙。
どう言い返そうか――そう考えていた時、別の声がそれを遮った。
「その呼び方は、私の身元が広まらないようにするための策だ」
落ち着いた声。
だが、その言葉には、確かな確信が滲んでいた。
エルヴァンは肩をすくめる。
「へぇ、身元隠しねぇ。でも、それにしては随分馴染んでる気がするぜ?」
その軽口を受け、王子は少し考え――そして、穏やかに微笑んだ。
「……まぁ、いろいろと危ないところを助けてもらったからな」
それは、遠回しに"仲の良さ自体は否定しない"という言葉だった。
サーディスは、その一言に一瞬だけ、胸の奥がざわつくのを感じる。
だが――その感情を、すぐに押し殺した。
(これはただの演技だ。身元を隠すため、それだけ……)
そう、自分に言い聞かせる。
エルヴァンは、そんなサーディスの様子を見て、さらに口元を歪めると、王子へと視線を向けた。
「そりゃ、こりゃあいいね。相棒がいる王子様ってのは、なかなか絵になるぜ?」
その軽口に、王子はわずかに苦笑を浮かべる。
サーディスは、それ以上何も言わず、黙って歩を進めるだけだった。
「そういうことなら、俺たちも当面の間は"殿下"じゃなく"シス様"って呼んだ方がいいか?」
それを聞いて、王子はため息混じりに肩をすくめた。
「やめてくれ。お前に"様"付けされると、むず痒くて仕方がない」
エルヴァンは愉快そうに笑った。
「へぇ? 意外と謙虚だな、シス"様"?」
「わざとやっているな?」
「気のせいじゃないかなぁ?」
軽口を叩き合う二人を横目に、サーディスは小さく息を吐いた。
エルヴァンの軽妙な言葉に、王子がそれに応じる形で淡く微笑む。
二人の間に流れる雰囲気は、戦場を潜り抜けてきたとは思えないほど、軽やかだった。
サーディスは何も言わず、ただ前を向いて歩く。
それが彼女の選択だった。
(……これでいい)
周囲に余計な詮索をされるよりも、適当に流されていく方が楽だ。
エルヴァンのような人間は、好奇心の赴くままに踏み込んでくる。
それに真面目に応じていたら、際限がなくなるだけだ。
だから、深入りさせない。
王子がどう思っていようと、エルヴァンがどう受け取ろうと関係ない。
彼女の立場は明確で、それを崩すつもりはない。
それなのに――。
王子がふと漏らした一言。
その言葉が耳に入った瞬間、サーディスの足がほんの一瞬だけ、止まりそうになった。
それは、何気ない一言だった。
ただ、それだけのことなのに――。
ほんの少しだけ、胸の奥が温かくなるのを感じた。
心のどこかに、小さな火が灯ったような感覚。
まるで、今までずっと冷たい風にさらされていた場所に、
わずかな陽だまりが生まれたような。
(……何を考えている)
サーディスは、内心で自分にそう言い聞かせる。
王子の言葉に、特別な意味があるわけではない。
ただの事実の確認に過ぎない。
それなのに――。
その一言を聞いた瞬間に、自分が何を思ったのか。
自分の中に生まれた微かな感情が何なのか。
それを認めるつもりはなかった。
だから、何も言わず、ただ歩き続ける。
口を開けば、余計なことを考えてしまいそうだったから。
エルヴァンが、まだ何か言おうとしているのを感じた。
王子が、それに穏やかに応じるのも分かった。
だが――。
サーディスはただ、足を止めることなく進んだ。
まるで、自分の中に生まれたものを振り払うかのように。
森を進んでいた一行の中で、ゲオルグがふと足を止めた。
「エルヴァン、気を抜きすぎるなよ」
低く、警戒を促すような声。
エルヴァンは肩をすくめ、軽く笑った。
「気は抜いてませんよ、団長。ただ、懐かしくてな」
そう言うと、彼は王子の方へ視線を向けた。
「しかしなぁ、"あのヘタレクシス"が、こんな立派になっちまうとはな……」
一瞬、静寂が落ちた。
「……ヘタレクシス?」
ゲオルグが怪訝そうな声を上げる。
「さすがに不敬すぎるだろ、お前」
その場にいた者たちが、微妙な空気を感じ取る中、サーディスだけが一瞬、固まった。
(……ヘタレクシス……?)
心臓が跳ねる。
しかし、すぐに表情を変えないように必死で抑え込んだ。
「いやいや、俺がつけたわけじゃないですよ」
エルヴァンが慌てて手を振る。
「ねぇ、殿――じゃなかった、"シス"?」
王子は苦笑いを浮かべながら、静かに口を開いた。
「……昔、一度も勝てなかった年下の女の子につけられたあだ名だよ」
サーディスの指先がわずかに震えた。
声を震わせないようにするので精一杯だった。
「ず、ずいぶんと……不敬な、少女ですね……」
なんとか平静を装い、そう言葉を紡ぐ。
ゲオルグは呆れたように笑った。
「ちがいねぇ。とんだ命知らずだな」
エルヴァンも笑いながら続ける。
「まったくな。王子に向かってそんな呼び方する奴がいるとは思わなかったぜ」
しかし、王子は彼らの笑いに混ざることなく、どこか遠くを見るように目を細めた。
「……忘れられない記憶だ」
その静かな言葉に、一瞬だけ空気が変わる。
エルヴァンが気まずそうに頭をかく。
「あー……悪かった。気軽にしていい話じゃなかったな」
王子はふっと笑い、首を横に振った。
「気にするな。もう十年も昔の話だ」
十年も昔。
(……私は、何をやっているんだ)
サーディスは、内心で己を呪った。
"ヘタレクシス"と呼んでいたのは、自分だった。
負けず嫌いな王子が何度挑んでも、勝てなかったあの頃。
悔しそうにしながら、それでも剣を握り直す彼に、からかうようにそう言ったのは――"ミレクシア"だった。
(まさかこんな形で自分の過去が掘り返されるとは……!)
彼の記憶に残るようなことなど、しなければよかったのに――。
「でもまあ、どんな恐れ知らずの少女だったんでしょうねぇ」
エルヴァンがニヤニヤしながら、妙に芝居がかった声で言う。
「王子に"ヘタレ"なんてつけるなんて、大胆不敵にもほどがある!」
「そ、そうですね……!」
サーディスは、全力で同意しながら、内心で叫んだ。
(お前だよ! それを言ったのは十年前のお前だよ!!!)
しかし、それを言えるはずもなく、ただひたすらに無表情を貫いた。
だが、王子はふとサーディスをじっと見つめ――首を傾げた。
「……サーディス」
「な、なんですか?」
「今、一瞬妙に動揺したように見え――」
「気のせいです」
サーディスは、完璧な鉄仮面を装い、即答した。
(気のせいで押し通すしかない!!!)
ゲオルグが苦笑いしながら、肩をすくめる。
「まぁ、いいじゃねぇか。過去の話だろ?」
「ですね! 過去の話です!!!」
サーディスは全力で肯定し、足を速めた。
(これ以上この話題を続けられてはまずい……!)
エルヴァンがクスクス笑いながら、王子に耳打ちする。
「シス、もしかしてサーディスもその少女だったり?」
王子はふっと笑った。
「まさか」
(……まさか、で済んでくれ……!!!)
サーディスは、この場で転がって逃げ出したい衝動を押さえつつ、ひたすら前を向いて歩き続けた。
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