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第1章 乙女ゲーの世界に転生しました
19 ベリーブルーベリー
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私は裏ダンジョンで入手した稀少な鉱物や宝石を売り払ったことで大金を手にしている。シスカさんの借金を完済するのは簡単だが、私にそこまでする義理はないし、例え私が借金を肩代わりすると言っても断られるだろう。
働き口。つまりお金を稼ぐ手段があればいいのだ。大怪我の危険がある炭鉱や病気のリスクがある娼館などではなく、もっと安全で定期的に稼げる仕事。一つ思い付いた私は席を立った。
「シスカさん。ここに裏庭はあかしら?」
「えっ? あるにはあるけど……」
「案内していただけませんか? 私に良い考えがありますの」
「別に良いけど、何をするつもりなの?」
「見ればわかりますわ」
私とシスカさんは裏庭へ移動した。そこそこの広さだが、日当たりは悪く、ほとんど使っていないのだろう。雑草が生い茂っていた。
「弟がいた頃は手入れしてたんだけど、私と子供たちだけになってからはこんなになっちゃって……」
「いいえ。これで十分ですわ。エナジードレイン」
私は闇魔法で雑草を一瞬で枯らした。
「い、今のって闇魔法だよね? 闇属性の人なんて初めて見た」
「女神様の信徒としては見過ごせませんか?」
「別にそういうわけじゃないよ。確かに闇属性は魔族に発現することが多いけど、人間にもいるしね。珍しいけど」
女神ティアナを信仰するティアナ教の教義は、リディアの記憶でも聞きかじり程度しか知らない。魔王の記憶に至ってはまるで興味なしだ。ともあれ、闇属性は時代によって差別的な扱いを受けるけど現代はそうでもないようだ。私にとってはありがたい。
「あとは、アンチグラビディからのヘルフレイムですわ」
私は反重力魔法で雑草を浮かせ、獄炎で灰に変えた。シスカさんはぽかんとした顔で私の行いを眺めている。
「ま、町中で許可なく魔法を使うのは違法なんだけどなー……」
「バレなければやっていないのと同じですわ」
「そ、そっか……さっきからリディアが使ってる魔法はどれも高位魔法のはずだけど……す、すごいね」
「これくらい普通ですわ」
「普通、かなぁ……?」
「普通ですわ」
これでもかなり威力を抑えている。このまま普通と言い張ろう。
「お次は、グラビティコントロール」
私は空中にばら撒いた種を重力操作で念動力さながらに操り、等間隔に地面へと植え付けた。
「仕上げにこれを撒いて、ですわね」
私は飲むと経験値が貰えるEXPウォーターを振り撒いた。するとみるみる内に植物が成長し、一面ブルーベリー畑となった。
「り、リディア? この植物は一体何なの? さっきから何が起きてるの?」
「ベリーブルーベリーですわ。あらゆる環境でも育つ品種で一年中収穫できて売り物としての価値があります。これをここの名産にして売れば収益になりますわ」
「べ、ベリーブルーベリーってあの高級品の!? それをこんな一瞬で栽培できるまで育てるとか一体何をしたの!?」
へー。旅立つ前に何かの役に立つと思って実家の果樹園から種だけ貰ってきたんだけど高級品だったんだ。リディアも魔王も常識に疎いところがあるからそんな知識はなかった。
「余り物ですけど、収穫が終わったあとにこれをかければまたすぐに育ちますわ」
「え、えっと、その水は何てお水なのかな……?」
「EXPウォーターですわ」
「EXPウォーター!? 冒険者が喉から手が出るくらい欲しがるレアアイテムよ!?」
「そうでしたの? 私には不要ですので、好きに使ってもらって構いませんわ」
「いやいやいや! どっちも私たち庶民じゃ手が出ないレアアイテムよ!? それを当たり前みたいに持ってるあなたは一体何者なの!?」
「通りすがりの冒険者ですわ」
「それで押し通せる話じゃないから!」
シスカさんは叫んだあとで息を荒げた。エレオノール様のときもそうだったけど、私はこの世界の価値基準をまるでわかっていないようだ。また騒ぎを起こさないように勉強していかなければ。
「これでお金の問題は解決しましたわね」
「……わからないよ。何で見ず知らずの私たちのためにそこまでしてくれるの?」
当然の疑問だ。今日会ったばかりの他人から突然援助を受けたのだから。純粋な善行は信じられない。それはティアナ教のシスターであっても変わらないようだ。
「助けを必要としている人が救いの手を差し伸べられたらどんな気持ちになるのか、私は知っています。人を助けることで間接的に自分を救いたい。それが善行に勤しむ私の動機なのかもしれませんわね」
前世の私に希望なんてなかった。過去の後悔と未来への不安で毎日押し潰されそうだった。
あのとき、誰かが私を助けてくれていたら……結局そんな淡い期待が叶うことはなかったけど、今の私には力がある。誰かに利用されるのは嫌だけど、私が私の意思でしたいと思ったことはすべて叶えていきたい。それが前世の私への手向けになる。
口に出して初めて自分の本心がわかったような気がした。と言ってもこれは私自身の話であって、シスカさんが納得してくれるかは別だ。
「納得がいかないのであれば、そうですわね……売上の一割を私の取り分にするのはどうかしら?」
「い、一割って。たったそれだけでいいの?」
「私お金には困っていませんもの」
「……ベリーブルーベリーとEXPウォーターをぽんと出すくらいだからそうなんだろうけど……本当にそれだけでいいの?」
「ええ、構いませんわ。これで一件落着でよろしいかしら?」
「うん。ベリーブルーベリーの収益があれば今まで滞納していた借金とこれからの利息分も払えそうだよ」
利息か。借金だからあって当たり前か。だとしたら完全に解決したわけではなさそうだ。ここまでして半端は嫌だし、やるならとことんやろう。
「借金は全部でおいくらですの?」
「えっと、金貨200枚だったかな」
「200枚は嵩張りますわね。これなら2枚で済みますわ」
私は収納魔法の中から取り出した硬貨をシスカに手渡した。
「こ、これって白金貨!? 本物なんて初めて見たんだけど!?」
「あれこれ考えるのは疲れるから止めですわ。さっさと借金を帳消しにしてしまいましょう。ついでにこの孤児院も買い取りますわ。あと3枚あれば十分かしら?」
「えええええ!?」
シスカさんの絶叫が周囲に響き渡った。裏ダンジョンで手に入れたアイテムの一部を売っておいてよかった。お金は使えるときに使っておかないとね。
働き口。つまりお金を稼ぐ手段があればいいのだ。大怪我の危険がある炭鉱や病気のリスクがある娼館などではなく、もっと安全で定期的に稼げる仕事。一つ思い付いた私は席を立った。
「シスカさん。ここに裏庭はあかしら?」
「えっ? あるにはあるけど……」
「案内していただけませんか? 私に良い考えがありますの」
「別に良いけど、何をするつもりなの?」
「見ればわかりますわ」
私とシスカさんは裏庭へ移動した。そこそこの広さだが、日当たりは悪く、ほとんど使っていないのだろう。雑草が生い茂っていた。
「弟がいた頃は手入れしてたんだけど、私と子供たちだけになってからはこんなになっちゃって……」
「いいえ。これで十分ですわ。エナジードレイン」
私は闇魔法で雑草を一瞬で枯らした。
「い、今のって闇魔法だよね? 闇属性の人なんて初めて見た」
「女神様の信徒としては見過ごせませんか?」
「別にそういうわけじゃないよ。確かに闇属性は魔族に発現することが多いけど、人間にもいるしね。珍しいけど」
女神ティアナを信仰するティアナ教の教義は、リディアの記憶でも聞きかじり程度しか知らない。魔王の記憶に至ってはまるで興味なしだ。ともあれ、闇属性は時代によって差別的な扱いを受けるけど現代はそうでもないようだ。私にとってはありがたい。
「あとは、アンチグラビディからのヘルフレイムですわ」
私は反重力魔法で雑草を浮かせ、獄炎で灰に変えた。シスカさんはぽかんとした顔で私の行いを眺めている。
「ま、町中で許可なく魔法を使うのは違法なんだけどなー……」
「バレなければやっていないのと同じですわ」
「そ、そっか……さっきからリディアが使ってる魔法はどれも高位魔法のはずだけど……す、すごいね」
「これくらい普通ですわ」
「普通、かなぁ……?」
「普通ですわ」
これでもかなり威力を抑えている。このまま普通と言い張ろう。
「お次は、グラビティコントロール」
私は空中にばら撒いた種を重力操作で念動力さながらに操り、等間隔に地面へと植え付けた。
「仕上げにこれを撒いて、ですわね」
私は飲むと経験値が貰えるEXPウォーターを振り撒いた。するとみるみる内に植物が成長し、一面ブルーベリー畑となった。
「り、リディア? この植物は一体何なの? さっきから何が起きてるの?」
「ベリーブルーベリーですわ。あらゆる環境でも育つ品種で一年中収穫できて売り物としての価値があります。これをここの名産にして売れば収益になりますわ」
「べ、ベリーブルーベリーってあの高級品の!? それをこんな一瞬で栽培できるまで育てるとか一体何をしたの!?」
へー。旅立つ前に何かの役に立つと思って実家の果樹園から種だけ貰ってきたんだけど高級品だったんだ。リディアも魔王も常識に疎いところがあるからそんな知識はなかった。
「余り物ですけど、収穫が終わったあとにこれをかければまたすぐに育ちますわ」
「え、えっと、その水は何てお水なのかな……?」
「EXPウォーターですわ」
「EXPウォーター!? 冒険者が喉から手が出るくらい欲しがるレアアイテムよ!?」
「そうでしたの? 私には不要ですので、好きに使ってもらって構いませんわ」
「いやいやいや! どっちも私たち庶民じゃ手が出ないレアアイテムよ!? それを当たり前みたいに持ってるあなたは一体何者なの!?」
「通りすがりの冒険者ですわ」
「それで押し通せる話じゃないから!」
シスカさんは叫んだあとで息を荒げた。エレオノール様のときもそうだったけど、私はこの世界の価値基準をまるでわかっていないようだ。また騒ぎを起こさないように勉強していかなければ。
「これでお金の問題は解決しましたわね」
「……わからないよ。何で見ず知らずの私たちのためにそこまでしてくれるの?」
当然の疑問だ。今日会ったばかりの他人から突然援助を受けたのだから。純粋な善行は信じられない。それはティアナ教のシスターであっても変わらないようだ。
「助けを必要としている人が救いの手を差し伸べられたらどんな気持ちになるのか、私は知っています。人を助けることで間接的に自分を救いたい。それが善行に勤しむ私の動機なのかもしれませんわね」
前世の私に希望なんてなかった。過去の後悔と未来への不安で毎日押し潰されそうだった。
あのとき、誰かが私を助けてくれていたら……結局そんな淡い期待が叶うことはなかったけど、今の私には力がある。誰かに利用されるのは嫌だけど、私が私の意思でしたいと思ったことはすべて叶えていきたい。それが前世の私への手向けになる。
口に出して初めて自分の本心がわかったような気がした。と言ってもこれは私自身の話であって、シスカさんが納得してくれるかは別だ。
「納得がいかないのであれば、そうですわね……売上の一割を私の取り分にするのはどうかしら?」
「い、一割って。たったそれだけでいいの?」
「私お金には困っていませんもの」
「……ベリーブルーベリーとEXPウォーターをぽんと出すくらいだからそうなんだろうけど……本当にそれだけでいいの?」
「ええ、構いませんわ。これで一件落着でよろしいかしら?」
「うん。ベリーブルーベリーの収益があれば今まで滞納していた借金とこれからの利息分も払えそうだよ」
利息か。借金だからあって当たり前か。だとしたら完全に解決したわけではなさそうだ。ここまでして半端は嫌だし、やるならとことんやろう。
「借金は全部でおいくらですの?」
「えっと、金貨200枚だったかな」
「200枚は嵩張りますわね。これなら2枚で済みますわ」
私は収納魔法の中から取り出した硬貨をシスカに手渡した。
「こ、これって白金貨!? 本物なんて初めて見たんだけど!?」
「あれこれ考えるのは疲れるから止めですわ。さっさと借金を帳消しにしてしまいましょう。ついでにこの孤児院も買い取りますわ。あと3枚あれば十分かしら?」
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