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第三章 〜再会の森〜①
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南支部に戻ってきた二人は、その翌日の朝早くに執務室に呼び出された。
朝陽が差し込み始めたところで、机を明るく照らしている。
ジンは椅子に座って腕を組み、黒髪にちらつく白髪を無造作に撫でつけていた。
報告書も読まずに、顔だけで二人に問いかけるようにしてじっと見ている。
「ひと段落はしたところだが…勝手に動くのは勘弁なんだが?」
「…」
「まぁ、お前たちの『探しモノ』が見つかったかどうかは聞かないが、とりあえず、お前たちに要請がきてる」
「要請?」
いったいどこの街が自分たちに要請してきたのかと思っていると、ジンはとんでもない一言を言ったのだ。
「要請元は、中央だ」
「!…中央って…中央協会のことか?」
「そうだ。教皇がお前たちに『お戻りいただきたい』んだとさ」
ジンは大げさに肩をすくめ、報告書の束を机に投げ出す。
「勝手に街なかで悪魔とバトルしてきた二人に、褒美でもくれるんじゃないか?もしくは…お小言ってとこか?」
「……」
「……」
教皇のもとへいけば、何を言われるのかの想像は易い。
しかし、エルクは怯むどころか睨みつけるようにしてジンに言い放ったのだ。
「上等じゃねーか、行ってやるよ」
視線が鋭くなるエルクの隣で、フィールは苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、今すぐに出発しろ」
「…今!?」
「アースヘルム行きの汽車は、朝の一本しかない。これを逃せば、明日の朝になる」
「じゃあ明日でいいだろ?」
「そんなわけにいかん。これからあのお嬢さんが支部に泊まることになるから準備が必要でな、お前たちが手伝うというのならいてもいいが……」
ジンがそう言った瞬間、エルクとフィールはすかさず立ち上がり、扉に向かって走っていった。
「切符は必要ないからな、駅にはもう伝えてある」
ジンのその言葉が聞こえるか聞こえないかのところまで行ってしまっていた二人は、そのまま支部を飛び出す勢いで出て行った。
風のような動きに、ジンは吹き出しそうになるのを堪える。
「ま、あいつらなら聞こえてただろう」
そんなジンのつぶやきを他所に、エルクとフィールは駅に向かって走っていた。
街の中心部にある時計台は、汽車の出発時間をさそうとしていたのだ。
しかし、エルクは不思議に思うことがあった。
それは、隣を走るフィールの足が異様に早いことだ。
「エルク!!早くっ!!」
「ちょ…!お前、風の力使ってるだろ!!」
「エルクもロキに頼めばいいじゃんっ!」
「んなことできるかぁっ!」
走る二人はなんとか出発時間に間に合い、乗り込むと同時に汽車は出発。
息を切らせながら、エルクは硬い椅子に倒れこんだ。
「もぅ…無理…」
「運動不足じゃない?大剣振り回してばっかだから」
「…」
「たまには走りなよー?」
フィールの小言を浴びながら、エルクは椅子に座りなおして窓の外を見た。
サウシアの街並みが遠くなっていき、代わりに静かな風景が広がり始める。
しばらくは何も話さずにいた二人は、いつの間にか窓を介して視線を合わせていた。
「俺たち、怒られんのかな」
エルクが窓越しのフィールに問いかける。
「それは…間違いないでしょ」
フィールもまた、窓越しに苦笑する。
「まぁ…怒られたとしても、あの街での出来事はおかしいことだらけだったんだし、聞きたいこと聞こうぜ」
「…そうだね、ラインバーグもルーンも…大変だったんだし…」
汽車が進むにつれて暗くなっていく窓の外。
気がつけば群青色の空は墨色に代わり、夜の帳が辺りを包み込んでいた。
薄っすら映っていた窓越しのフィールの姿がはっきりと見え、エルクはしばし沈黙してしまう。
走り続ける汽車は平等の時間の中を進み、二人をアースヘルムへと運んだのだった。
しかし、このときの二人はまだ知らない。
街でとんでもない出来事に巻き込まれることを―――。
朝陽が差し込み始めたところで、机を明るく照らしている。
ジンは椅子に座って腕を組み、黒髪にちらつく白髪を無造作に撫でつけていた。
報告書も読まずに、顔だけで二人に問いかけるようにしてじっと見ている。
「ひと段落はしたところだが…勝手に動くのは勘弁なんだが?」
「…」
「まぁ、お前たちの『探しモノ』が見つかったかどうかは聞かないが、とりあえず、お前たちに要請がきてる」
「要請?」
いったいどこの街が自分たちに要請してきたのかと思っていると、ジンはとんでもない一言を言ったのだ。
「要請元は、中央だ」
「!…中央って…中央協会のことか?」
「そうだ。教皇がお前たちに『お戻りいただきたい』んだとさ」
ジンは大げさに肩をすくめ、報告書の束を机に投げ出す。
「勝手に街なかで悪魔とバトルしてきた二人に、褒美でもくれるんじゃないか?もしくは…お小言ってとこか?」
「……」
「……」
教皇のもとへいけば、何を言われるのかの想像は易い。
しかし、エルクは怯むどころか睨みつけるようにしてジンに言い放ったのだ。
「上等じゃねーか、行ってやるよ」
視線が鋭くなるエルクの隣で、フィールは苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、今すぐに出発しろ」
「…今!?」
「アースヘルム行きの汽車は、朝の一本しかない。これを逃せば、明日の朝になる」
「じゃあ明日でいいだろ?」
「そんなわけにいかん。これからあのお嬢さんが支部に泊まることになるから準備が必要でな、お前たちが手伝うというのならいてもいいが……」
ジンがそう言った瞬間、エルクとフィールはすかさず立ち上がり、扉に向かって走っていった。
「切符は必要ないからな、駅にはもう伝えてある」
ジンのその言葉が聞こえるか聞こえないかのところまで行ってしまっていた二人は、そのまま支部を飛び出す勢いで出て行った。
風のような動きに、ジンは吹き出しそうになるのを堪える。
「ま、あいつらなら聞こえてただろう」
そんなジンのつぶやきを他所に、エルクとフィールは駅に向かって走っていた。
街の中心部にある時計台は、汽車の出発時間をさそうとしていたのだ。
しかし、エルクは不思議に思うことがあった。
それは、隣を走るフィールの足が異様に早いことだ。
「エルク!!早くっ!!」
「ちょ…!お前、風の力使ってるだろ!!」
「エルクもロキに頼めばいいじゃんっ!」
「んなことできるかぁっ!」
走る二人はなんとか出発時間に間に合い、乗り込むと同時に汽車は出発。
息を切らせながら、エルクは硬い椅子に倒れこんだ。
「もぅ…無理…」
「運動不足じゃない?大剣振り回してばっかだから」
「…」
「たまには走りなよー?」
フィールの小言を浴びながら、エルクは椅子に座りなおして窓の外を見た。
サウシアの街並みが遠くなっていき、代わりに静かな風景が広がり始める。
しばらくは何も話さずにいた二人は、いつの間にか窓を介して視線を合わせていた。
「俺たち、怒られんのかな」
エルクが窓越しのフィールに問いかける。
「それは…間違いないでしょ」
フィールもまた、窓越しに苦笑する。
「まぁ…怒られたとしても、あの街での出来事はおかしいことだらけだったんだし、聞きたいこと聞こうぜ」
「…そうだね、ラインバーグもルーンも…大変だったんだし…」
汽車が進むにつれて暗くなっていく窓の外。
気がつけば群青色の空は墨色に代わり、夜の帳が辺りを包み込んでいた。
薄っすら映っていた窓越しのフィールの姿がはっきりと見え、エルクはしばし沈黙してしまう。
走り続ける汽車は平等の時間の中を進み、二人をアースヘルムへと運んだのだった。
しかし、このときの二人はまだ知らない。
街でとんでもない出来事に巻き込まれることを―――。
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