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16話
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王城へ帰還してから数日が過ぎた。
ヴァリエール侯爵家の解体は、貴族社会に大きな衝撃を与えたが、ディルク殿下の圧倒的な権力と、僕への異常なまでの寵愛を前に、異議を唱える者は誰一人としていなかった。
僕の生活は、まさに「籠の中の鳥」そのものだった。
豪華な寝室、最高の食事、そして何より、公務以外の時間のすべてを僕に捧げるディルク殿下。
しかし、ここ数日、僕の体に奇妙な異変が起き始めていた。
「……あ、う……っ」
朝、鏡の前に立った僕は、自分の姿を見て絶句した。
プラチナブロンドの髪は、以前よりも一層輝きを増し、肌はまるで内側から発光しているかのように透き通り、滑らかになっている。
そして何より、琥珀色の瞳の奥に、ディルク殿下と同じ「金色の星」のような紋章が微かに浮かび上がっていたのだ。
(……これ、昨夜の『魂の刻印』の影響!? 魔力共鳴が止まらない……!)
さらに、僕の感覚は異常なほど鋭敏になっていた。
遠くの騎士たちの話し声や、城の下層で働く使用人たちの心の声までが、まるで隣で囁かれているかのように鮮明に聞こえてくるのだ。
(……困ったな。情報の供給量が多すぎて、頭が割れそう……っ)
ふらつきながらベッドに腰掛けると、背後の扉が開いた。
入ってきたのは、僕の世話を担当しているベアトリスだ。
「レアン様! おはよう……って、あらぁ!? ちょっと、レアン様! また一段と美しくなっていらっしゃいません!? 何そのフェロモン! 空気中の酸素が甘くなってる気がするんですけど!」
(うわあああ! レアン様から溢れ出すディルク殿下の残り香! そしてこの色気! もう公式が最大手すぎて、二次創作の必要がないわ! 拝む、マジで拝む……!)
「……ベアトリス、声が大きいよ。……あと、心の声で拝むのはやめて……」
「あら、ごめんなさい。でも、今のレアン様を見たら、城中の男たちが理性を失って襲いかかってきますわよ? ……あ、もちろん、その前にディルク殿下が皆殺しにするでしょうけど」
ベアトリスは冗談めかして言うが、僕にはそれが冗談に聞こえなかった。
なぜなら、廊下に控えているユストス騎士の心の声が、今にも扉を蹴破ってきそうなほど「暴走」していたからだ。
『……ああ、部屋の中からレアン様の甘い香りが漏れてくる。……殿下の魔力と混ざり合い、熟成されたような、狂おしい香りだ。……騎士としての理性が、もう、限界だ。……いっそ、殿下が会議に出席している今、この部屋に押し入って、彼を私のマントで包み込み……』
(……ユストス様、お願いだから入ってこないで!)
僕は恐怖を感じ、自分の体にブランケットを巻きつけた。
魔力の共鳴によって、僕の体は「ディルク殿下の魔力」を常に欲する体質に変化してしまったらしい。
殿下がそばにいないだけで、胸の刻印が熱く疼き、渇きを訴えるのだ。
その時、廊下から怒鳴り声が聞こえた。
「――どけ、ユストス。レアンの様子がおかしいと、魔力の繋がりで感じたんだ」
「ディルク殿下! ですが、今は着替えの最中で……!」
「……関係ない。私のレアンに異変があるのなら、一刻の猶予もない」
バタン! と扉が開き、ディルク殿下が血相を変えて飛び込んできた。
僕の姿を見るなり、殿下の瞳が黄金色に燃え上がる。
『………………っ!! レアン……! なんて、なんて愛らしい姿だ……。……魔力が溢れ出している。私の魔力を求めて、君の体が熱を帯びているのが分かる。……ああ、もうダメだ。会議なんてどうでもいい。……今すぐ、君を私の愛で満たして、その疼きを鎮めてやりたい……!』
「レアン……。苦しいのかい? 大丈夫だ、私が今すぐ、楽にしてあげるよ」
殿下はベアトリスを視線だけで追い出し、再び僕をベッドへと押し倒した。
魂が繋がってしまった僕たちは、もはや触れ合わずにはいられない、共依存の螺旋へと堕ちていく。
ヴァリエール侯爵家の解体は、貴族社会に大きな衝撃を与えたが、ディルク殿下の圧倒的な権力と、僕への異常なまでの寵愛を前に、異議を唱える者は誰一人としていなかった。
僕の生活は、まさに「籠の中の鳥」そのものだった。
豪華な寝室、最高の食事、そして何より、公務以外の時間のすべてを僕に捧げるディルク殿下。
しかし、ここ数日、僕の体に奇妙な異変が起き始めていた。
「……あ、う……っ」
朝、鏡の前に立った僕は、自分の姿を見て絶句した。
プラチナブロンドの髪は、以前よりも一層輝きを増し、肌はまるで内側から発光しているかのように透き通り、滑らかになっている。
そして何より、琥珀色の瞳の奥に、ディルク殿下と同じ「金色の星」のような紋章が微かに浮かび上がっていたのだ。
(……これ、昨夜の『魂の刻印』の影響!? 魔力共鳴が止まらない……!)
さらに、僕の感覚は異常なほど鋭敏になっていた。
遠くの騎士たちの話し声や、城の下層で働く使用人たちの心の声までが、まるで隣で囁かれているかのように鮮明に聞こえてくるのだ。
(……困ったな。情報の供給量が多すぎて、頭が割れそう……っ)
ふらつきながらベッドに腰掛けると、背後の扉が開いた。
入ってきたのは、僕の世話を担当しているベアトリスだ。
「レアン様! おはよう……って、あらぁ!? ちょっと、レアン様! また一段と美しくなっていらっしゃいません!? 何そのフェロモン! 空気中の酸素が甘くなってる気がするんですけど!」
(うわあああ! レアン様から溢れ出すディルク殿下の残り香! そしてこの色気! もう公式が最大手すぎて、二次創作の必要がないわ! 拝む、マジで拝む……!)
「……ベアトリス、声が大きいよ。……あと、心の声で拝むのはやめて……」
「あら、ごめんなさい。でも、今のレアン様を見たら、城中の男たちが理性を失って襲いかかってきますわよ? ……あ、もちろん、その前にディルク殿下が皆殺しにするでしょうけど」
ベアトリスは冗談めかして言うが、僕にはそれが冗談に聞こえなかった。
なぜなら、廊下に控えているユストス騎士の心の声が、今にも扉を蹴破ってきそうなほど「暴走」していたからだ。
『……ああ、部屋の中からレアン様の甘い香りが漏れてくる。……殿下の魔力と混ざり合い、熟成されたような、狂おしい香りだ。……騎士としての理性が、もう、限界だ。……いっそ、殿下が会議に出席している今、この部屋に押し入って、彼を私のマントで包み込み……』
(……ユストス様、お願いだから入ってこないで!)
僕は恐怖を感じ、自分の体にブランケットを巻きつけた。
魔力の共鳴によって、僕の体は「ディルク殿下の魔力」を常に欲する体質に変化してしまったらしい。
殿下がそばにいないだけで、胸の刻印が熱く疼き、渇きを訴えるのだ。
その時、廊下から怒鳴り声が聞こえた。
「――どけ、ユストス。レアンの様子がおかしいと、魔力の繋がりで感じたんだ」
「ディルク殿下! ですが、今は着替えの最中で……!」
「……関係ない。私のレアンに異変があるのなら、一刻の猶予もない」
バタン! と扉が開き、ディルク殿下が血相を変えて飛び込んできた。
僕の姿を見るなり、殿下の瞳が黄金色に燃え上がる。
『………………っ!! レアン……! なんて、なんて愛らしい姿だ……。……魔力が溢れ出している。私の魔力を求めて、君の体が熱を帯びているのが分かる。……ああ、もうダメだ。会議なんてどうでもいい。……今すぐ、君を私の愛で満たして、その疼きを鎮めてやりたい……!』
「レアン……。苦しいのかい? 大丈夫だ、私が今すぐ、楽にしてあげるよ」
殿下はベアトリスを視線だけで追い出し、再び僕をベッドへと押し倒した。
魂が繋がってしまった僕たちは、もはや触れ合わずにはいられない、共依存の螺旋へと堕ちていく。
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