【朗報?】処刑回避のために逃げ回っていたら最強王子の「エロすぎる本音」に捕まりました。~心の声が全部ダダ漏れで困ってます~

たら昆布

文字の大きさ
18 / 28

18話

しおりを挟む
ユストス騎士の反乱未遂から一週間。
王城の扉は修復され、表面上は平穏が戻ったように見えた。
だが、ユストスは「反省」という名の謹慎処分(実際は、ディルク殿下の目の届く場所での監視)となり、以前にも増して僕への執着を、心の声で垂れ流すようになっていた。

そんな中、僕の知らないところで、ある奇妙な噂が王都中に広がっていた。

「レアン様、知っていますか? 今、街ではあなたのことが『エトワールの聖女』と呼ばれているんですよ」

朝の着替えを手伝いながら、ベアトリスが興奮気味に教えてくれた。
彼女の脳内は、今日も絶好調に『実況モード』だ。

(……ふふふ。レアン様が殿下の魔力を鎮めるために、夜な夜な『聖なる儀式(笑)』を行っているという噂を流したのは私だけど、まさかここまで公式設定として定着するなんて! 国民たちは皆、レアン様が殿下の暴走を止める唯一の存在だと信じて疑わないわ! 頑張れ殿下、もっとレアン様を聖女(受け)に仕立て上げるのよ!)

(……ベアトリス、君だったのか。噂の出所は……)

「聖女だなんて、僕は男だよ。それに、殿下の魔力を鎮めているんじゃなくて、僕の方が魔力に酔わされているだけなのに……」

「いいんです、結果オーライですわ。そのおかげで、かつての悪役令息としての悪評は消え去りました。今や、あなたは隣国からの侵略を跳ね除け、王子の狂気を愛で包む、王国の象徴なんです!」

ベアトリスが窓を開けると、城下から「レアン様! ディルク殿下とお幸せに!」という国民たちの歓声が聞こえてくる。
どうやら、国民の多くが「二人の溺愛」をエンターテインメントとして消費し始めているらしい。

だが、当の本人であるディルク殿下は、この「聖女」という呼び名が気に入らないようだった。

「聖女……? 冗談ではない。レアンは私だけの、もっと秘められた、淫らな存在であるべきだ」

公務から戻ったディルク殿下は、不機嫌そうに僕を抱き寄せ、首筋に顔を埋めた。

『……聖女だと? 笑わせるな。……レアンがどれほど私の腕の中で乱れ、可愛い声で鳴くか。……そんな姿を国民たちが勝手に想像していると思うだけで、反吐が出る。……レアンは、私だけが知っていればいい。……ああ、君の純粋な祈りが魔力を鎮めるのではなく、私の愛欲が君の魔力を暴走させているのだということを、城のバルコニーで分からせてやろうか……』

(……殿下、本音が国民への宣戦布告になってる!)

「殿下、落ち着いてください。国民の皆さんは、僕たちのことを祝福してくれているんです」

「……祝福? 私への恐怖の裏返しだろう。……まあいい。レアン、国民への挨拶だ。バルコニーへ出よう」

殿下に導かれ、僕は城の広大なバルコニーに立った。
眼下には、色とりどりの旗を振る国民たちが埋め尽くされている。

「「「「レアン様ーーー!! ディルク殿下ーーー!!」」」」

その瞬間、数万人の心の声が、一斉に僕の脳内に流れ込んできた。

((((尊い……! 二人が並んでいるだけで、この国のGDPが上がる……! レアン様のあの儚げな笑顔、ディルク殿下が昨日何をなさったか丸わかりじゃない! もっとやって! もっと見せつけて!!))))

(……国民の皆さんの心の声が、ベアトリスと同じ方向を向いている……っ!)

僕は眩暈を感じてよろめいた。
すかさずディルク殿下が僕の腰を抱き寄せ、耳元で「愛しているよ」と囁く。
その完璧な『演技』に、広場からは割れんばかりの歓声が上がった。

だが、その歓声の渦の中に、一つだけ、氷のように冷たく、毒々しい本音が混ざっているのを、僕は聞き逃さなかった。

『……ふふ、盛り上がっているね。……いい気なものだ。……聖女の愛で王子を救う、か。……ならば、その愛が『裏切り』に変わった時、この国はどんな悲鳴を上げるだろうね。……楽しみだよ、レアン。……君の心に、消えない不信の毒を植え付けてあげる』

(……セレス王子!? 近くにいるの……!?)

僕は恐怖に周囲を見渡したが、銀髪の影は見当たらない。
平和を謳歌する国民たちの熱狂の裏で、隣国の魔手が、より陰湿な形で僕たちの絆を壊そうと忍び寄っていた。
処刑回避後の「甘い生活」は、再び暗雲に覆われようとしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

堕とされた悪役令息

SEKISUI
BL
 転生したら恋い焦がれたあの人がいるゲームの世界だった  王子ルートのシナリオを成立させてあの人を確実手に入れる  それまであの人との関係を楽しむ主人公  

【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』

バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。  そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。   最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

処理中です...