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24話
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ディルク殿下の黄金の剣が空を切り裂き、ユストスの放つ闇の波動が床を抉る。
二人の魔力の激突は、地下宮殿という密閉された空間で増幅され、凄まじい衝撃波となって僕の体に叩きつけられた。
「あ……っ、ぐあああああっ!!」
胸の刻印が、二人の暴力的なまでの魔力供給に耐えきれず、白熱するほどの熱を帯びる。
その瞬間、僕の脳内で「何かが弾ける音」がした。
セレスの呪いと、ディルク殿下の無意識の暗示によって封印されていた記憶の扉が、外圧によって無理やりこじ開けられたのだ。
「……ああ、そうだ。僕は……僕はレアン・ド・ヴァリエールだ。そして……」
激痛と共に視界が真っ白に染まり、濁流のような光景が意識を塗り替えていく。
日本の冷えた部屋で、乙女ゲーム『エトワール・ファンタジア』をプレイしていた記憶。
「悪役令息レアン」として転生し、破滅フラグを折るために奔走した日々。
そして――セレス王子の呪いによって、僕の「心の声を聞く能力」が暴走し、絶望の中で記憶を失ったあのバルコニーの情景。
(全部、思い出した……!)
記憶が戻ったことで、僕の『本音を聞く能力』はかつてないほどの鋭敏さを手に入れた。
戦っている二人の男の感情はもちろん、この地下宮殿の隅々に潜む、微かな「悪意」の残滓までもが克明に視覚化されていく。
「……ディルク殿下、ユストス様……やめてください!」
僕の声に、激闘を繰り広げていた二人が、示し合わせたように動きを止めた。
二人の瞳が驚愕に揺れ、僕を凝視する。
「レアン……。その呼び方……記憶が、戻ったのかい?」
『……嘘だ、戻ってしまったのか。……せっかく、私の都合の良い記憶だけを植え付けて、完璧な私の人形に仕立て上げようとしていたのに。……ああ、だが、今のレアンのその拒絶を孕んだ瞳……。それもまた、ゾクゾクするほど美しい。……もう一度、記憶ごと、その心を破壊してしまおうか……?』
「レアン様! 思い出したのなら、なおさら私と共に来てください! 殿下があなたに何をしていたか、分かっているはずだ!」
『……ああ、そうだ。殿下への不信感を利用すれば、レアン様を私の懐に引き込める。……その後で、ゆっくりと私の色に染めればいい。……殿下も、記憶が戻ったレアン様も、まとめて私の闇で縛り上げてやる……!』
(二人とも、結局僕を「物」としてしか見ていない……!)
だが、今の僕には、彼らの暴走を止める「知識」があった。
ゲームの裏設定。レアンが持つ「真の魔力」は、他者の魔力を吸収し、それを「浄化」の力に変換する、究極のバフ・アビリティだ。
「……セレス王子。影の中で見ていないで、出てきたらどうですか?」
僕が部屋の隅を指差すと、そこから蛇が這い出すような不気味な声が響いた。
「くくく……。やはり、レアン。君だけは、私の期待を裏切らないね」
影の中から、銀髪を揺らしたセレスが優雅に姿を現した。
彼の手には、ユストスに渡した短剣と対になる、巨大な魔導書が握られている。
『……最高の舞台だ。ディルクとユストスが、共依存の愛でレアンをボロボロにする。……そこを私が、美味しいところだけを頂戴する。……レアン、君のその浄化の光……。私がその魔力をすべて吸い尽くし、絶望に染め変えたとき、君は本当の意味で、私という神の奴隷になるのさ……』
「……させるわけないでしょう。……殿下、ユストス様。……僕を、信じてください」
僕は立ち上がり、二人の間に割って入った。
記憶を取り戻した今、僕はもう、ただ震えるだけの小鳥ではない。
彼らの歪んだ執着を、この世界の理を、自分の手で書き換える決意を固めた。
二人の魔力の激突は、地下宮殿という密閉された空間で増幅され、凄まじい衝撃波となって僕の体に叩きつけられた。
「あ……っ、ぐあああああっ!!」
胸の刻印が、二人の暴力的なまでの魔力供給に耐えきれず、白熱するほどの熱を帯びる。
その瞬間、僕の脳内で「何かが弾ける音」がした。
セレスの呪いと、ディルク殿下の無意識の暗示によって封印されていた記憶の扉が、外圧によって無理やりこじ開けられたのだ。
「……ああ、そうだ。僕は……僕はレアン・ド・ヴァリエールだ。そして……」
激痛と共に視界が真っ白に染まり、濁流のような光景が意識を塗り替えていく。
日本の冷えた部屋で、乙女ゲーム『エトワール・ファンタジア』をプレイしていた記憶。
「悪役令息レアン」として転生し、破滅フラグを折るために奔走した日々。
そして――セレス王子の呪いによって、僕の「心の声を聞く能力」が暴走し、絶望の中で記憶を失ったあのバルコニーの情景。
(全部、思い出した……!)
記憶が戻ったことで、僕の『本音を聞く能力』はかつてないほどの鋭敏さを手に入れた。
戦っている二人の男の感情はもちろん、この地下宮殿の隅々に潜む、微かな「悪意」の残滓までもが克明に視覚化されていく。
「……ディルク殿下、ユストス様……やめてください!」
僕の声に、激闘を繰り広げていた二人が、示し合わせたように動きを止めた。
二人の瞳が驚愕に揺れ、僕を凝視する。
「レアン……。その呼び方……記憶が、戻ったのかい?」
『……嘘だ、戻ってしまったのか。……せっかく、私の都合の良い記憶だけを植え付けて、完璧な私の人形に仕立て上げようとしていたのに。……ああ、だが、今のレアンのその拒絶を孕んだ瞳……。それもまた、ゾクゾクするほど美しい。……もう一度、記憶ごと、その心を破壊してしまおうか……?』
「レアン様! 思い出したのなら、なおさら私と共に来てください! 殿下があなたに何をしていたか、分かっているはずだ!」
『……ああ、そうだ。殿下への不信感を利用すれば、レアン様を私の懐に引き込める。……その後で、ゆっくりと私の色に染めればいい。……殿下も、記憶が戻ったレアン様も、まとめて私の闇で縛り上げてやる……!』
(二人とも、結局僕を「物」としてしか見ていない……!)
だが、今の僕には、彼らの暴走を止める「知識」があった。
ゲームの裏設定。レアンが持つ「真の魔力」は、他者の魔力を吸収し、それを「浄化」の力に変換する、究極のバフ・アビリティだ。
「……セレス王子。影の中で見ていないで、出てきたらどうですか?」
僕が部屋の隅を指差すと、そこから蛇が這い出すような不気味な声が響いた。
「くくく……。やはり、レアン。君だけは、私の期待を裏切らないね」
影の中から、銀髪を揺らしたセレスが優雅に姿を現した。
彼の手には、ユストスに渡した短剣と対になる、巨大な魔導書が握られている。
『……最高の舞台だ。ディルクとユストスが、共依存の愛でレアンをボロボロにする。……そこを私が、美味しいところだけを頂戴する。……レアン、君のその浄化の光……。私がその魔力をすべて吸い尽くし、絶望に染め変えたとき、君は本当の意味で、私という神の奴隷になるのさ……』
「……させるわけないでしょう。……殿下、ユストス様。……僕を、信じてください」
僕は立ち上がり、二人の間に割って入った。
記憶を取り戻した今、僕はもう、ただ震えるだけの小鳥ではない。
彼らの歪んだ執着を、この世界の理を、自分の手で書き換える決意を固めた。
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