親友と一緒に異世界転生したら俺だけ神獣だった件 ~伝説の召喚術師になったあいつの溺愛が物理的に重すぎます~

たら昆布

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8話

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 恭介が作ってくれた魔法の箱庭――通称『もふもふパラダイス』での生活は、控えめに言って最高だった。
 銀色の苔に寝そべり、浮島から流れる水の音を聞いていると、自分がかつて満員電車に揺られていた社畜だったことなど、前世の記憶か何かのように思えてくる。

 だが、そんな平和な時間は、思わぬ珍客によって破られた。

「き……ききっ、きゅいー!」

(……ん? なんだ、今の鳴き声)

 昼寝を邪魔された俺が片目を開けると、箱庭の端っこ、ちょうど乾燥肉のなる木の根元に、小さな「動く塊」が見えた。
 それは、手のひらに乗りそうなほど小さな、青い羽根を持つ小鳥だった。いや、よく見ると頭には小さな角が生えている。

「ききっ! きゅい!」

 小鳥は俺の姿を見るなり、短い羽を必死にバタつかせて威嚇(?)してきた。どうやら、開いたままの窓から迷い込んできたらしい。

(おいおい、ここは俺の特等席だぞ。……っていうか、お前、震えてるじゃねーか)

 俺は「よっこいしょ」と重い腰を上げ、小鳥の方へペタペタと歩み寄った。
 神獣としての本能か、俺が近づくだけで周囲の空気がわずかに震える。小鳥は恐怖で固まり、その場にぺたんと座り込んでしまった。

「きゅう(安心しろ、食いやしないよ)」

 俺は優しく鼻先を寄せ、小鳥の背中をチョンとつついた。
 中身が26歳の俺だ。弱い者いじめをする趣味はない。むしろ、慣れない場所で心細そうにしている姿は、この異世界に放り出された当初の自分と重なって見えた。

「――おや、先客がいたか」

 いつの間にか、部屋の入り口に恭介が立っていた。
 彼は俺たちの様子を見て、面白そうに目を細めている。

「陽太、そいつは『風切小鳥(ウィンドチッパー)』の幼体だな。低位の魔獣だが、この王宮の森に住んでいるやつだ。お前の魔力に惹かれて迷い込んだんだろう」

「きゅう、きゅう(恭介、こいつ腹減ってるみたいだぞ)」

 俺が小鳥を気遣うように鳴くと、恭介は歩み寄り、俺の頭をひと撫でしてから小鳥を観察した。

「ふむ。陽太が世話をしたいって言うなら、少しだけここに置いてやってもいいぞ。……お前、意外と面倒見がいいんだな」

 恭介はそう言うと、手近な魔法で小さな水飲み場を作ってやった。
 小鳥は恐る恐る水を飲み始め、やがて俺の白い毛の中に、安心したように潜り込んできた。

(おい待て。そこは俺のプライベートスペース……あー、まぁいいか。あったかいだろ?)

 俺が小鳥を毛の中に収納して、再び丸くなっていると、恭介がその横にどっかと座り込んだ。
 そして、俺と小鳥をまとめて包み込むように、大きな掌を置いてくる。

「……陽太。お前がそうやって他の生き物に優しくしているのを見ると、なんだか、俺だけが特別じゃないみたいで、ちょっとだけ寂しいな」

「きゅん?(何言ってんだ。お前は俺の召喚主だろ)」

「召喚主、か。……いや、親友、だったな。……それとも」

 恭介の言葉が途切れる。
 彼は俺の背中の毛を、指先でゆっくりと円を描くように撫でた。
 それはいつも通りのブラッシングの延長のはずなのに、今日の指先からは、ほんの少しだけ切ないような、熱を帯びた感情が伝わってくる気がした。

「もし、お前がいつか人間の姿に戻って、誰か他の奴のところへ行くなんて言い出したら……俺、どうしちゃうんだろうな」

(行かねーよ。どこにそんな要素があるんだよ)

 俺は心の中で毒づきながら、恭介の手に自分の頭をこすりつけた。
 こいつは時々、こういう「重め」な発言をさらっと落としていく。だが、その瞳に執着のドロドロとした色はない。ただ、大切すぎて壊してしまいそうなものを扱うような、臆病なまでの慈愛。

 小鳥の温もりと、恭介の掌。
 二つの温かさに挟まれて、俺は再び微睡みの中に落ちていく。

 恭介の無自覚な独占欲が、少しずつ「親友」という枠組みを押し広げようとしていることに、鈍感な俺が気づくのは、もう少し先の話になりそうだった。
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