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14話
恭介の掌が、俺の頭頂部にそっと置かれた。
もふもふの毛玉だった頃は、その手は俺の全身を包み込むほど巨大に感じられたが、今の俺にとっては、ちょうど頭の形にフィットする、逞しくも温かい「男の手」だ。
「……本当に、いいのか? 陽太」
「……うるさい。お前が『副作用がある』とか言ったんだろ。……身体が、勝手にムズムズするんだよ」
俺は視線を斜め下に落とし、恭介の膝あたりをじっと見つめながら答えた。
人間の姿で、自分から「撫でろ」と要求する。その羞恥心は並大抵のものではなかったが、それ以上に、頭上の耳の付け根が疼いて仕方がなかった。
「……わかった。……じゃあ、失礼するよ」
恭介の指先が、おそるおそる動き出す。
まずは髪を梳くように、それからゆっくりと、パタパタと動く白い耳の裏側へ。
「っ……、ぁ……」
一瞬、背筋に電流が走ったような感覚がした。
神獣の時よりも、感覚が鋭い。
恭介の指の節、爪が微かに触れる感触、そして指の腹の熱。そのすべてが、皮膚を通じて直接脳に流れてくる。
「陽太、ここか? ……耳、熱くなってるぞ」
「……っ、ん。……そこ……」
俺は無意識に、恭介の手の方へと頭を傾けていた。
恭介の指が、耳の付け根を円を描くように優しく揉みほぐす。
その瞬間、俺の喉の奥から「ぐるる……」と、人間ではあり得ない音が漏れそうになった。
(やべ……。喉が鳴る。……これ、人間の姿でやったら完全にアウトだろ)
俺は必死に喉を抑えたが、恭介の手つきはますます手慣れていき、俺の理性をじわじわと削っていく。
恭介は、椅子から立ち上がると、俺の隣に座り直した。
肩と肩が触れ合う距離。
彼はもう片方の手で俺の背中を引き寄せ、自分の肩に俺の頭を預けさせた。
「……無理に堪えるなよ。俺とお前の仲だろ。……誰も見てないし、いいじゃないか」
恭介の声は、どこか自分自身にも言い聞かせているような、深く落ち着いた響きをしていた。
その言葉に甘えるように、俺は恭介の肩に深く顔を埋めた。
彼の服から漂う、いつも通りのインクの香りと、少しだけ早くなっているような気がする鼓動の音。
「……恭介」
「ん?」
「……お前、撫でるの上手すぎ。……ムカつくくらい、気持ちいい……」
「はは。特訓したからな、お前のために」
恭介はそう笑うと、今度は俺の首筋からうなじにかけて、ゆっくりと指を滑らせた。
大きな手が、俺の首の後ろを優しく包み込む。
それはかつての「飼い主」のような支配的なものではなく、壊れやすいものを愛おしむような、ひどく熱を帯びた「親愛」の形だった。
俺は、いつの間にか激しく振っていた尻尾の動きが、ゆっくりと穏やかになっていくのを感じた。
身体のムズムズした痒みは消え、代わりに胸の奥が、ジンわりと熱い何かで満たされていく。
数分、あるいは数十分。
静まり返った部屋の中で、俺たちはただ、お互いの体温を確認し合うように寄り添っていた。
やがて、緊張の糸が切れた俺に、強烈な眠気が襲いかかる。
「……陽太、寝そうか?」
「……うるさい……。お前が……気持ちいいこと……するから……」
呂律が回らなくなり、視界が霞む。
俺は恭介の肩に寄りかかったまま、深い眠りの淵へと落ちていった。
最後に感じたのは、俺の頬をそっと撫でる、恭介の指先の震え。
それが友情ゆえの戸惑いなのか、それとも別の何かなのか。
眠りにつく直前の俺には、もう確かめる術はなかった。
もふもふの毛玉だった頃は、その手は俺の全身を包み込むほど巨大に感じられたが、今の俺にとっては、ちょうど頭の形にフィットする、逞しくも温かい「男の手」だ。
「……本当に、いいのか? 陽太」
「……うるさい。お前が『副作用がある』とか言ったんだろ。……身体が、勝手にムズムズするんだよ」
俺は視線を斜め下に落とし、恭介の膝あたりをじっと見つめながら答えた。
人間の姿で、自分から「撫でろ」と要求する。その羞恥心は並大抵のものではなかったが、それ以上に、頭上の耳の付け根が疼いて仕方がなかった。
「……わかった。……じゃあ、失礼するよ」
恭介の指先が、おそるおそる動き出す。
まずは髪を梳くように、それからゆっくりと、パタパタと動く白い耳の裏側へ。
「っ……、ぁ……」
一瞬、背筋に電流が走ったような感覚がした。
神獣の時よりも、感覚が鋭い。
恭介の指の節、爪が微かに触れる感触、そして指の腹の熱。そのすべてが、皮膚を通じて直接脳に流れてくる。
「陽太、ここか? ……耳、熱くなってるぞ」
「……っ、ん。……そこ……」
俺は無意識に、恭介の手の方へと頭を傾けていた。
恭介の指が、耳の付け根を円を描くように優しく揉みほぐす。
その瞬間、俺の喉の奥から「ぐるる……」と、人間ではあり得ない音が漏れそうになった。
(やべ……。喉が鳴る。……これ、人間の姿でやったら完全にアウトだろ)
俺は必死に喉を抑えたが、恭介の手つきはますます手慣れていき、俺の理性をじわじわと削っていく。
恭介は、椅子から立ち上がると、俺の隣に座り直した。
肩と肩が触れ合う距離。
彼はもう片方の手で俺の背中を引き寄せ、自分の肩に俺の頭を預けさせた。
「……無理に堪えるなよ。俺とお前の仲だろ。……誰も見てないし、いいじゃないか」
恭介の声は、どこか自分自身にも言い聞かせているような、深く落ち着いた響きをしていた。
その言葉に甘えるように、俺は恭介の肩に深く顔を埋めた。
彼の服から漂う、いつも通りのインクの香りと、少しだけ早くなっているような気がする鼓動の音。
「……恭介」
「ん?」
「……お前、撫でるの上手すぎ。……ムカつくくらい、気持ちいい……」
「はは。特訓したからな、お前のために」
恭介はそう笑うと、今度は俺の首筋からうなじにかけて、ゆっくりと指を滑らせた。
大きな手が、俺の首の後ろを優しく包み込む。
それはかつての「飼い主」のような支配的なものではなく、壊れやすいものを愛おしむような、ひどく熱を帯びた「親愛」の形だった。
俺は、いつの間にか激しく振っていた尻尾の動きが、ゆっくりと穏やかになっていくのを感じた。
身体のムズムズした痒みは消え、代わりに胸の奥が、ジンわりと熱い何かで満たされていく。
数分、あるいは数十分。
静まり返った部屋の中で、俺たちはただ、お互いの体温を確認し合うように寄り添っていた。
やがて、緊張の糸が切れた俺に、強烈な眠気が襲いかかる。
「……陽太、寝そうか?」
「……うるさい……。お前が……気持ちいいこと……するから……」
呂律が回らなくなり、視界が霞む。
俺は恭介の肩に寄りかかったまま、深い眠りの淵へと落ちていった。
最後に感じたのは、俺の頬をそっと撫でる、恭介の指先の震え。
それが友情ゆえの戸惑いなのか、それとも別の何かなのか。
眠りにつく直前の俺には、もう確かめる術はなかった。
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