親友と一緒に異世界転生したら俺だけ神獣だった件 ~伝説の召喚術師になったあいつの溺愛が物理的に重すぎます~

たら昆布

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18話

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 夕食を終え、月が天高く昇る頃。俺たちの間には、ある「切実な問題」が浮上していた。
 恭介が、小難しそうな顔をして術式のメモを見つめながら呟く。

「……陽太。やはり、この人間形態を維持するには、俺からの魔力供給が不可欠みたいだ。特に、寝ている間は魔力が霧散しやすい」

「魔力供給? さっきも飯の時に触ってたろ。それで足りないのか?」

「瞬間的な接触じゃダメなんだ。一定時間、肌が触れ合っていないと、夜中に突然もふもふに戻って、骨格の変化で寝違える可能性がある」

(……絶対嘘だろ、それ)

 俺はジト目で恭介を見た。だが、こいつは「伝説の召喚術師」としての真面目な顔をしていて、嘘をついているようには見えない。いや、見えないだけで、きっと半分くらいは自分の希望が混じっている。
 
 結局、俺たちは昨夜に引き続き、大きなベッドに二人で並んで横たわることになった。

「……おい、恭介。枕の境界線からこっちに来るなよ」

「わかってる。……でも、手が触れてないと魔力が送れないんだ」

 恭介はそう言って、布団の中で俺の手をそっと握り込んできた。
 暗闇の中、視覚が制限される分、触れている手のひらの熱が、驚くほど鮮明に伝わってくる。

「……陽太、起きてるか?」

「……起きてるよ。こんな状況で寝れるか」

「はは、そうだよな。……俺さ、元の世界にいた時から、こうしてお前とゆっくり話す時間が一番好きだったんだ」

 恭介の声は、いつもより少しだけ低く、耳の奥に心地よく響く。
 もふもふの姿だった時は、こいつの言葉を「きゅう」としか返せなかった。今は、どんなに拙くても、自分の言葉で答えられる。

「……俺も、嫌いじゃなかったよ。お前が勝手に俺の部屋に来て、ビール飲んで、愚痴をこぼす時間」

「お前、あの時いつも『早く帰れ』って言ってたのに」

「それは、お前がいつまでも帰らないからだろ」

 ふふっ、と暗闇で二人の笑い声が重なった。
 ただの親友だった頃の記憶。それが、今のこの異世界のベッドの上でも、変わらずに存在していることが、無性に愛おしく感じられた。

 恭介が、握っていた手に少しだけ力を込める。

「……なあ、陽太。もしずっと人間に戻れなくても、俺の隣にいてくれるか?」

「……当たり前だろ。お前、俺がいないと魔力使いすぎて倒れるんだから」

 俺が少しぶっきらぼうに答えると、恭介は満足そうに「そうだな」と呟き、俺の手に指を絡めてきた。
 指先同士が触れ合い、体温が混ざり合う。
 魔力供給なんて名目、もう二人とも半分くらい忘れていたけれど、その繋がれた手の心地よさに、俺の尻尾が布団の中でパタパタと小さく動いた。

「……お、陽太。尻尾、俺の足に当たってるぞ」

「……うるさい。副作用だ。……黙って寝ろ」

 俺は顔を赤くして、恭介から背を向けるように丸くなった。
 繋がれた手はそのままで。
 
 夜の静寂の中、二人の心臓の音が、まるで一つのリズムを刻むように重なっていく。
 恋と呼ぶにはまだ幼く、友情と呼ぶにはあまりに熱い。
 そんな「名もなき時間」が、ゆっくりと過ぎていった。
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