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20話
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侍女のノックでようやくベッドから這い出した俺たちは、慌ただしく身支度を整えた。
今日は、国王陛下と主要な魔導士たちを前に、陽太が「安定して人の姿を維持できるようになった」ことを証明する公式の場だ。
「……陽太、ネクタイが曲がってるぞ」
恭介が、鏡の前で俺の襟元を直してくれる。
彼の指先は昨夜の熱を覚えているのか、時折、俺の首筋に触れるたびに少しだけ震えているように見えた。
「サンキュ。……なあ、恭介。俺、ちゃんと『神獣の化身』っぽく振る舞えてるか?」
「ああ。耳と尻尾はついたままだが、それも含めて神秘的に見える。……あまりに格好いいから、他の奴らに見せるのが惜しくなるくらいだ」
「また適当なことを……。ほら、行くぞ」
俺は照れ隠しに恭介の肩を軽く叩き、部屋を出た。
謁見の間に続く廊下には、多くの騎士や貴族たちが並んでいた。以前、もふもふの姿で通り過ぎた時とは違う、静かな、けれど圧倒的な期待の視線が俺に注がれる。
扉が開き、王の前に進み出る。
恭介は一歩下がり、俺を立てるように控えた。
「国王陛下。神獣・陽太、これより人の姿を以て、改めてこの国に助力することを誓います」
恭介が事前に考えてくれた台詞を、俺は低く、落ち着いた声で口にした。
王は満足そうに深く頷き、隣に座る王妃もまた、慈愛に満ちた目で俺を見守っている。
「見事なものだ。かつての伝説に語られた通り、神獣は主(あるじ)との絆が深まった時、その魂を人の形に結ぶという。キョウ殿、貴殿の功績は大きい」
「恐悦至極に存じます、陛下。ですが、これは陽太自身の強い意志があったからこそ成し遂げられたことです」
恭介が俺を見上げ、誇らしげに目を細めた。
その瞳には、召喚術師としての自慢ではなく、ただ一人の友人として、俺が俺であることを喜ぶ純粋な光が宿っていた。
お披露目が終わり、緊張感から解放された俺たちは、王宮のテラスへと出た。
遠くに見える街並みが、夕日に赤く染まっている。
「……ふぅ。肩が凝ったな」
俺が大きく伸びをすると、背後の尻尾も一緒にピンと跳ねた。
恭介はテラスの欄干に背を預け、そんな俺を愛おしそうに眺めている。
「お疲れ様。……これで、お前が『キョウの契約獣』としてだけでなく、一人の『陽太』としてこの国で認められたわけだ」
「……ああ。なんか、少しだけ自由になれた気がするよ」
「自由、か。……どこへでも行けるようになったんだな」
恭介の声に、ほんの少しだけ寂しさが混ざる。
俺はそんな親友の横に並び、あえて肩をぶつけるようにして寄り添った。
「どこへも行かねーよ。……俺がこの姿でいられるのは、お前が魔力を供給してくれてるからだろ? 責任持てよな、恭介」
「……陽太」
恭介は驚いたように目を見開き、それから吹き出すように笑った。
「そうだな。一生かけて、たっぷり供給してやるよ。覚悟しとけ」
恭介の手が、俺の手に重なる。
今度は「魔力供給」なんて言い訳は必要なかった。
ただ、夕暮れに染まる風の中で、俺たちは自然に指を絡め合い、静かな時間を分かち合った。
特別な言葉はなくても、今の俺たちにはこれで十分だった。
一歩ずつ、ゆっくりと。
異世界での俺たちの物語は、新しい章へと足を踏み出していた。
今日は、国王陛下と主要な魔導士たちを前に、陽太が「安定して人の姿を維持できるようになった」ことを証明する公式の場だ。
「……陽太、ネクタイが曲がってるぞ」
恭介が、鏡の前で俺の襟元を直してくれる。
彼の指先は昨夜の熱を覚えているのか、時折、俺の首筋に触れるたびに少しだけ震えているように見えた。
「サンキュ。……なあ、恭介。俺、ちゃんと『神獣の化身』っぽく振る舞えてるか?」
「ああ。耳と尻尾はついたままだが、それも含めて神秘的に見える。……あまりに格好いいから、他の奴らに見せるのが惜しくなるくらいだ」
「また適当なことを……。ほら、行くぞ」
俺は照れ隠しに恭介の肩を軽く叩き、部屋を出た。
謁見の間に続く廊下には、多くの騎士や貴族たちが並んでいた。以前、もふもふの姿で通り過ぎた時とは違う、静かな、けれど圧倒的な期待の視線が俺に注がれる。
扉が開き、王の前に進み出る。
恭介は一歩下がり、俺を立てるように控えた。
「国王陛下。神獣・陽太、これより人の姿を以て、改めてこの国に助力することを誓います」
恭介が事前に考えてくれた台詞を、俺は低く、落ち着いた声で口にした。
王は満足そうに深く頷き、隣に座る王妃もまた、慈愛に満ちた目で俺を見守っている。
「見事なものだ。かつての伝説に語られた通り、神獣は主(あるじ)との絆が深まった時、その魂を人の形に結ぶという。キョウ殿、貴殿の功績は大きい」
「恐悦至極に存じます、陛下。ですが、これは陽太自身の強い意志があったからこそ成し遂げられたことです」
恭介が俺を見上げ、誇らしげに目を細めた。
その瞳には、召喚術師としての自慢ではなく、ただ一人の友人として、俺が俺であることを喜ぶ純粋な光が宿っていた。
お披露目が終わり、緊張感から解放された俺たちは、王宮のテラスへと出た。
遠くに見える街並みが、夕日に赤く染まっている。
「……ふぅ。肩が凝ったな」
俺が大きく伸びをすると、背後の尻尾も一緒にピンと跳ねた。
恭介はテラスの欄干に背を預け、そんな俺を愛おしそうに眺めている。
「お疲れ様。……これで、お前が『キョウの契約獣』としてだけでなく、一人の『陽太』としてこの国で認められたわけだ」
「……ああ。なんか、少しだけ自由になれた気がするよ」
「自由、か。……どこへでも行けるようになったんだな」
恭介の声に、ほんの少しだけ寂しさが混ざる。
俺はそんな親友の横に並び、あえて肩をぶつけるようにして寄り添った。
「どこへも行かねーよ。……俺がこの姿でいられるのは、お前が魔力を供給してくれてるからだろ? 責任持てよな、恭介」
「……陽太」
恭介は驚いたように目を見開き、それから吹き出すように笑った。
「そうだな。一生かけて、たっぷり供給してやるよ。覚悟しとけ」
恭介の手が、俺の手に重なる。
今度は「魔力供給」なんて言い訳は必要なかった。
ただ、夕暮れに染まる風の中で、俺たちは自然に指を絡め合い、静かな時間を分かち合った。
特別な言葉はなくても、今の俺たちにはこれで十分だった。
一歩ずつ、ゆっくりと。
異世界での俺たちの物語は、新しい章へと足を踏み出していた。
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