親友と一緒に異世界転生したら俺だけ神獣だった件 ~伝説の召喚術師になったあいつの溺愛が物理的に重すぎます~

たら昆布

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21話

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 王宮の正門を潜り、石畳の続く城下町へと足を踏み出す。
 恭介は今日、動きやすい狩衣のような旅装束を纏い、俺もまた、耳を隠すための深めのフード付きマントを羽織っていた。

「……陽太、足元は大丈夫か? 石畳は少し滑りやすいぞ」

「過保護すぎだって。もうこの身体のバランスには慣れたよ。……それより、見てろよ恭介。あっちの屋台、いい匂いがするぞ」

 俺が指差した先には、串に刺した肉を豪快に焼く煙が立ち上っていた。
 もふもふの姿だった時は、恭介に抱っこされて眺めるだけだった光景。それが今は、自分の足で歩き、自分の財布(中身は恭介の金だが)を持って買いに行ける。

「すみません、これを二本」

 店主に銀貨を差し出すと、焼き立ての串が二本、俺の手に渡された。
 一本を恭介に差し出すと、彼は意外そうな顔をしてそれを受け取った。

「……お前が俺の分まで買ってくれるなんてな。元の世界じゃ、いつも俺が奢ってたのに」

「たまにはいいだろ。……ほら、美味いぞ」

 熱々の肉を頬張ると、スパイスの刺激と肉汁が口いっぱいに広がる。
 二人で並んで歩きながら、行儀悪く買い食いをする。
 ただそれだけのことが、この異世界では最高に贅沢な遊びに感じられた。

「……陽太。フード、少しズレてるぞ」

 恭介が足を止め、俺の頭に手を伸ばした。
 人混みの中で、恭介の大きな掌が俺の顔を覗き込むようにして、マントの形を整える。
 至近距離で見つめ合う形になり、通りすがりの街の人々が「仲の良い兄弟だね」と微笑ましく笑いかけてきた。

「……兄弟、か」

 恭介が、小さく呟いた。
 その声には、少しの苦笑いと、ほんの少しの……定義できない複雑な色が混ざっていた。

「なんだよ、不服か? 俺とお前じゃ、兄弟っていうよりは……腐れ縁の相棒だろ」

「そうだな。……でも、今の俺には相棒以上の……いや、なんでもない。ほら、あっちの店に綺麗な布が売ってるぞ。陽太の新しい服の生地を選びに行こう」

 恭介は強引に話を切り替えると、俺の手首を掴んで歩き出した。
 繋がれた手首から、恭介の少しだけ早まった鼓動が伝わってくる気がして、俺はフードの下で耳を赤く染めた。

 市場の喧騒、色とりどりの果実、遠くで鳴る教会の鐘。
 目に入るすべてが新鮮で、けれど隣にいる恭介の存在だけが、変わらない唯一の拠り所だった。

 特別な事件は何ひとつ起きない、ただの散歩。
 けれど、こうして一歩ずつ歩幅を合わせて歩く時間が、俺たちの関係に新しい名前を付けていくのを、俺は静かに感じていた。
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