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5話
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書庫での夜は、沈黙とザイドの熱い視線に満ちていた。
「……夜遅くに申し訳ありませんでした」
ザイドが部屋を去った後、遥希は自分の寝台に戻り、胸を撫で下ろした。
(話すだけ、と言っても……あれはほとんど、尋問だ)
ザイドの指が触れた首筋が、未だじんじんと熱い。まるで火傷を負ったかのような錯覚に陥る。
しかし、同時に遥希の心は、ザイドという存在への好奇心で満たされていた。
(彼は、何を知っているんだろう。あの膨大な書物の中には、僕が探し求めている答えがあるのかもしれない)
考古学者としての探求心が、ザイドへの恐怖心を少しずつ上回り始めていた。
翌日、遥希は宮殿の使用人から、ザイドから遺跡調査の許可が下りたことを知らされた。
「本当ですか!?」
「はい、ザイド様より『この地の者は、学者の望みを叶えよ』とのお達しがございました」
使用人の言葉に、遥希は喜びで胸がいっぱいになった。
これで、長年の夢だった未踏の遺跡を調査できる。
すぐにでも現地に向かいたい気持ちでいっぱいだったが、ふと、ザイドの言葉を思い出した。
『お前が俺の機嫌を損ねず、俺の問いに正しく答えるなら、あの場所をどうしようとお前の勝手だ』
(……彼との『契約』を、果たさなくては)
夕食後、再び書庫へと向かう。
ザイドは昨日と同じソファに座り、遥希が来るのを待っていたかのように、静かに目を閉じていた。
「ザイド様、今夜も……」
遥希が声をかけると、ザイドはゆっくりと瞼を開いた。
その金色の瞳が、遥希を真っ直ぐに捉える。
「来たか、遥希。待っていたぞ」
ザイドは遥希の隣を叩き、座るよう促した。
昨夜よりも少しだけ距離が縮まった場所に座り、遥希は今日の出来事を報告する。
「今日、使用人の方から遺跡調査の許可が下りたことを聞きました。ありがとうございます」
「ふん、当然のことだ。お前は俺の元にいる。俺の女が望むことならば、この地のすべてを与えても構わない」
「……僕は、女では」
「言葉の綾だ。気にすることはない」
ザイドは一蹴すると、遥希の頬に触れた。
その指先は、砂漠の熱を吸い込んだかのように熱い。
「……だが、褒美は必要だな」
次の瞬間、ザイドの顔が急速に近づいた。
遥希が息を呑む間もなく、熱い唇が遥希のそれに重なる。
「んっ……!」
不意打ちの口づけに、遥希の脳裏が真っ白になる。
ザイドの唇は柔らかく、同時に荒々しい。
まるで遥希のすべてを飲み込もうとするかのように、熱い舌が遥希の唇をなぞる。
逃げようと身体を捻ったが、ザイドの腕が遥希の腰をしっかりと抱き寄せ、逃げ場を塞いだ。
「ふ……は……」
息苦しさに抗いながら、遥希はザイドの肩を掴んだ。
ザイドはゆっくりと唇を離すと、満足げな表情で遥希の潤んだ瞳を見つめた。
「契約は成立したな。遥希。お前の遺跡調査の間、俺がお前を離すことはない」
ザイドの言葉は、砂漠に刻まれた誓いのように、遥希の心に深く焼き付いた。
「……夜遅くに申し訳ありませんでした」
ザイドが部屋を去った後、遥希は自分の寝台に戻り、胸を撫で下ろした。
(話すだけ、と言っても……あれはほとんど、尋問だ)
ザイドの指が触れた首筋が、未だじんじんと熱い。まるで火傷を負ったかのような錯覚に陥る。
しかし、同時に遥希の心は、ザイドという存在への好奇心で満たされていた。
(彼は、何を知っているんだろう。あの膨大な書物の中には、僕が探し求めている答えがあるのかもしれない)
考古学者としての探求心が、ザイドへの恐怖心を少しずつ上回り始めていた。
翌日、遥希は宮殿の使用人から、ザイドから遺跡調査の許可が下りたことを知らされた。
「本当ですか!?」
「はい、ザイド様より『この地の者は、学者の望みを叶えよ』とのお達しがございました」
使用人の言葉に、遥希は喜びで胸がいっぱいになった。
これで、長年の夢だった未踏の遺跡を調査できる。
すぐにでも現地に向かいたい気持ちでいっぱいだったが、ふと、ザイドの言葉を思い出した。
『お前が俺の機嫌を損ねず、俺の問いに正しく答えるなら、あの場所をどうしようとお前の勝手だ』
(……彼との『契約』を、果たさなくては)
夕食後、再び書庫へと向かう。
ザイドは昨日と同じソファに座り、遥希が来るのを待っていたかのように、静かに目を閉じていた。
「ザイド様、今夜も……」
遥希が声をかけると、ザイドはゆっくりと瞼を開いた。
その金色の瞳が、遥希を真っ直ぐに捉える。
「来たか、遥希。待っていたぞ」
ザイドは遥希の隣を叩き、座るよう促した。
昨夜よりも少しだけ距離が縮まった場所に座り、遥希は今日の出来事を報告する。
「今日、使用人の方から遺跡調査の許可が下りたことを聞きました。ありがとうございます」
「ふん、当然のことだ。お前は俺の元にいる。俺の女が望むことならば、この地のすべてを与えても構わない」
「……僕は、女では」
「言葉の綾だ。気にすることはない」
ザイドは一蹴すると、遥希の頬に触れた。
その指先は、砂漠の熱を吸い込んだかのように熱い。
「……だが、褒美は必要だな」
次の瞬間、ザイドの顔が急速に近づいた。
遥希が息を呑む間もなく、熱い唇が遥希のそれに重なる。
「んっ……!」
不意打ちの口づけに、遥希の脳裏が真っ白になる。
ザイドの唇は柔らかく、同時に荒々しい。
まるで遥希のすべてを飲み込もうとするかのように、熱い舌が遥希の唇をなぞる。
逃げようと身体を捻ったが、ザイドの腕が遥希の腰をしっかりと抱き寄せ、逃げ場を塞いだ。
「ふ……は……」
息苦しさに抗いながら、遥希はザイドの肩を掴んだ。
ザイドはゆっくりと唇を離すと、満足げな表情で遥希の潤んだ瞳を見つめた。
「契約は成立したな。遥希。お前の遺跡調査の間、俺がお前を離すことはない」
ザイドの言葉は、砂漠に刻まれた誓いのように、遥希の心に深く焼き付いた。
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